防衛六十二回目
投稿が遅れてすいません。
今回も難産でした。
「これが冒険者の作った地図ですか」
「内容は確かなのですか?」
「この場面で嘘を吐く必要性は無いかと・・・」
「危険です!こんな正しいかも分からない物を当てにするなど!」
「なら、あなたは中の様子を探れるのですか?」
「・・・」
「言い争っている場合ではないのです。下手したら明日ウッドロックは地図の上から姿を消すのかもしれませんよ」
メシュリカがバッサリと切り捨てると、さらに、
「我々エルフの秘宝を放出します」
「な、考え直してください!アレを生成するのにどれだけの月日が必要だと思ってるんですか!」
「使わないものをいつまでも持ち続けるのは、文字通り宝の持ち腐れです。それに、こういうときのために使うものでしょう」
みたいなやり取りが昨日行われたらしい。正直秘宝がどういったものなのかは知らないが、作るのに時間がかかるということはそれなりに効果が高いものなのだろう。
高く上った太陽を見ながら、早朝に叩き起こされて聞いた内容を思い出す。
中央広場にはたくさんの冒険者やエルフの警備隊の面々が立っている。
冒険者はどこか気楽な雰囲気を纏っており、そこらで雑談をしている奴らが見受けられる。
反対にエルフの面々は緊張した面持ちをしており、祈るもの、震える手を押さえる者、必要以上に大声で話す者と、それぞれの緊張している様子がよく分かる。
離れたところから、折角手に入れた性能の壊れた装備品が修正されたといった声も聞こえた気もするが、俺には関係ないことなので忘れよう。つい最近聞いたばかりのような気がするけど空耳だ。空耳だからな!!
・・・誰に対して言い訳しているんだ俺は。
冒険者や警備隊の話を聞きながら待機していると、急に静かになっていく。
顔を上げると、1段高くなっている場所にメシュリカが立っていた。
「お集まりありがとうございます。私はメシュリカ、このウッドロックの町の領主を勤めています。今日集まってくださった冒険者の皆様もご存知のとおり、この町は危機に瀕しております。この危機から脱するために、我々に皆さんの力を貸してください」
武器を掲げるもの、大声を上げるもの。冒険者はそれぞれのやり方でメシュリカの言葉に応じた。士気はそれなりに高そうである。
「皆さんには支援物資として、アイテムを支給します。なんとしてでもあの移動要塞を破壊してください。お願いします」
頭を下げるメシュリカに、周囲のエルフ達は慌てているが、それとは反対に冒険者たちのテンションが跳ね上がっている。
しかし、冒険者たちのテンションの上がり方が異常なほど高い。それに気になっているところ、警備隊の1人が駆け寄ってきた。
「あなたは冒険者以外の有志で参加してくださる方ですよね?確認のために名前を教えてください」
「ウェイルズだ」
「ウェイルズっと・・・確認取れました。これが支給品になります。この防衛戦が終わったときに残っていたらお返しください。追加で報酬が出ます」
「ああ、分かった」
なるほど、こうして持ち逃げされないように返還を求めてるのか。ってことは、中に貴重な物でも・・・アレか、メシュリカから聞いた秘宝とやらが入ってるのか。
渡された袋の中を確認すると、各種回復薬に装備品の耐久を回復させる物。携帯食料。最後に袋の底のほうにもう1つ袋が入っている。
その中には、乳白色の小さな玉が3つ入っていた。
【蘇生珠】
死んだものの魂を肉体に戻す。その際肉体の修復もなされる。エルフの秘宝。
これ返還しない冒険者が続出するんじゃないか?できれば安全のために俺はこれを手放したくないとさえ思う。
「これちゃんと返す奴いるのか?」
「領主様の指示で無理やりにでも返還してもらうことになっております」
「あれか。返せば報酬がもらえるって居るのは建て前か?」
「冒険者の方々には内緒でお願いします」
「分かったよ」
安堵した表情をするエルフの警備隊員を見送ると、ウッドロックの町の外へと移動を開始する。
あの移動要塞を壊すのは早ければ早いほどいいに決まっているからな。
と、その前に寄るところがあったな。
町の外へと駆け足で向かう冒険者を尻目に、一度宿屋に立ち寄ってアリシアに会っていく。
「これを持っていてくれ。お守り代わりだ。今はこんなんだが、この騒動が終わったらちゃんとした奴を渡すよ」
「えっと・・・何かあるの?」
「ああ、今度は絶対に町から出るなよ」
「・・・分かったわ。今度は怪我しないでね」
「任せろ」
アリシアに蘇生珠を中に入れた袋を渡すと、ベッドに腰掛けている人物へと視線を移す。
「んで、お前は何でここにいるんだ。ササ」
「何でと言われてもな。昨日ここに着いたからだよ。それより私はお前に聞かなきゃいけないことがあるんだよな~」
ベッドの上で弓に手を加えながらも、恐ろしさを感じさせる目で俺を睨んでくる。なんかあったっけ?
「何でお前はアリシアと2人っきりでこんなところにいるんだ?ええ?」
「別に俺が誰とどこにいようがいいんじゃないのか?なんでお前が怒る」
ベッドから飛び降りたササに首を絞められながら前後に揺さぶられる。
脳が揺れ・・・やめ。
ぐったりとする俺に全く容赦なく揺さぶり続けるササが止まったのは10分も経ってからで、俺はしばらく立ち上がることが出来なかった。
ぐったりと床に横たわっていると、突如扉が開き、数人の冒険者が入ってきた。
「・・こいつ何?なんでこんなところでぐったりしてんの」
「って、ウェイルズさん!?何やってんの」
入ってきた冒険者は、見知らぬ派手な格好の男が一人に、昨日ダグロに告白されていた女。それとヤマトとマドイの4人だった。
「ヤマト、こいつ知り合い?」
「うん。この前パーティを組んだ仲だよ」
「で、その人物がなんでこんなところで転がっているわけ?」
震える手でササを示すと、そのまま力なく床に落ちる。そんな俺にヤマトが駆け寄ってくると、ウェイルズさーんと叫び始める。こいつは一体何をしたいんだろうな。
「また組む?」
ヤマトの奇行に目を白黒させていると、マドイからパーティに申請が届いた。聞く前に申請を出すとは・・・期待に満ちた目で見られても、もう組まないぞ。それに今度の冒険者は防衛中に死んでも復活して戦闘を継続できるって話だから無茶ばっかするに決まってる。全部アリシアに渡した俺は無茶できないんだよ!
「却下だ。俺は1人でやる」
「マドイさんの勧誘を跳ね除けるってどういうことだ手前!」
「そうよ!何烏丸君を怒らせてるのよ!」
誰の誘いだろうが断る気満々だからな。そしてそこの女。お前の論点ズレすぎだろ。見ろ!烏丸と呼ばれた男性冒険者がゆっくりと距離取ってるぞ。
それに気がついたのか、離れるだけ近づいている。そんな二人の様子に手を合わせて合唱するしかんないな。ヤマトとマドイもこれに参加してきた。
「そんじゃ、俺はそろそろ行くわ。アリシア、ササ。また後でな」
「あ、ちょ」
ヤマトが何か言おうとしたみたいだが、それを完全に無視して部屋から立ち去る。これ以上あのヤバイ女がいるときに関わったらいけない気がしたんだからしょうがない。
壁の上に上り、要塞のほうを確認すると、冒険者たちがバラバラに接近しては、銃で蜂の巣にされ、死に戻りをしているのが分かる。中には弾幕を突破して要塞内に侵入できる奴もいるが、入り口に詰めているドワーフ達に斧や大剣で叩き切られていく。
エルフ達は遠距離から魔法でけん制をしているみたいだが、弾幕を一部相殺することには成功しても、要塞自体にダメージが全く入っていない。
エルフの魔法を弾くレベルの対魔防壁って・・・大分入手しにくい素材じゃねえの?それをこんなふんだんに・・・羨ましい限りで。
「おし、お前ら~下がれよ~タンク組は盾を構えて前進な、一番後ろに攻撃を許した奴は今度のオフ会全額奢りな。逃亡したら段々と罪が重くなるからな~」
「ちょ、それは洒落にならねえよ!」
「じゃあ全員後ろに攻撃を通すなよ~そしたら全員の割り勘になるから」
「絶対に後ろに通すなよ!このままだと俺たちの中の誰かが自己破産するハメになっちまうぞ!」
「じゃあ少しは遠慮しろよ」
「「「それは断る」」」
冒険者の中にも組織だって動く連中が出てきたようだ。
大きな盾を持った連中が前で銃弾を防ぎながら前進していき、弓を持つ連中がひたすら銃が突き出される窓めがけて矢を射続けている。しかし、中には急遽弓を持った冒険者もいるようで、あらぬ方向へ飛んでいく矢もある。
「ほれ、弓隊。もっとちゃんと狙おうぜ。こんな風に。こんな風に!!」
先ほどから指揮を執っている冒険者。先日会議に参加していたギルド長が、ヘラヘラと笑いながら射る矢は、次々と窓の中に飛び込み、ドワーフ達の痛みによる叫び声が戦場の騒音に加わる。
んじゃ、そろそろ俺もあの要塞の中に侵入するとしますか。
門の上から飛び降りると、まっすぐ要塞めがけて移動を開始した。
「魔法使える奴は壁作れ壁。壁が出来たらタンク組みは体力を回復しろよ~おい、ここの壁張った奴誰だ!攻撃するための穴が開いてねえじゃねえか!即効で作り直せ!」
「すいません!」
「ほれほれ、弓隊は矢を射る手を休めるなよ~大丈夫だ。あの移動要塞の中に入ることが出来れば存分に暴れえることが出来るからな~、耐えろ~」
「「「了解しました!」」」
ウェイルズが前線に到達したとき、盾を持った冒険者を下がらせてHPを回復させており、数の少ない魔法を使える者が壁をつくり、盾役が復帰するまで耐えることにしたのだろう。
「MPは使い切ってもいいぞ~、今度はMPが回復するまでタンク組みが耐えるから。てか耐えさせる。今回は1度や2度死んだくらいなら大丈夫だからな~、肉壁として頑張ってくれ」
「俺たちの扱いがひどすぎるだろ!」
「じゃあ今度は俺も肉壁役やってやるよ。お前らとの格の違いをシッカリとその目に焼き付けてやるよ」
ギルド長がそう軽い口調で受け答えをしていると魔法で作られた土壁からドンッと大きな音が聞こえた。
その音源へと回復している盾持ちも、壁を維持している魔法使いも、矢を射っている冒険者たちも皆土壁に視線を向ける。
しかし、全員が視線を向けた場所とは違う位置の壁が突如破壊され、ドワーフの集団が一気になだれ込んで来た。
「エルフに力を貸す愚かな冒険者どもを殲滅しろ!我々の拠点に1歩たりとも踏み込ませるな!殺せ!殺せ!」
大声で叫びながら手当たり次第に冒険者に武器を叩きつけて行く。
「はいはい、少し下がって戦線を立て直せ~、その間耐えてやるよ。変わりにタンク組みはシッカリと盾の使い方を見て吸収しろよ~。お前らがしっかり機能してくれりゃあ、もっと長時間戦えるようになるんだからな~」
そんなことを言いながらゆっくりと前に出たギルド長に殺到するドワーフ達。
タワーシールドを構えたギルド長は先頭のドワーフが振るった戦斧を、余裕そうな表情を一切崩さずに受けきると、手にした短槍で頭と心臓を貫いた。
それなのに、ドワーフ達は怒りの表情を一切見せずに、果敢に襲い掛かってくる。
何で死ぬことを恐れていない?まるで冒険者のように・・・。
・・・とにかく今はアレを止めよう。気になることは後で捕虜にしたドワーフにでも聞けばいい。
混乱する頭を無理やり冷静な状態にすると、ギルド長に群がる連中の下へ駆けて行き、背中から襲い掛からんとしていたドワーフに一太刀入れると、周囲を巻き込むように蹴り転がす。
身長が低く、髭ダルマなドワーフはボールのようによく転がった。
ギルド長がその光景を目撃し、面白そうな顔で口笛を吹く。
「手はあんまり組みたくないんじゃなかったのか?」
「こんな事態になってもそんなことをほざく奴は邪魔になる。むしろ俺のほうから切り殺してやるよ」
「過激なこって。そんじゃ、ウチのメンバーが体勢を立て直すまで力貸してくれや」
余裕ありそうな口調とは裏腹に、ギルド長のHPはすでに半分を切ってしまっている。
「分かったよ」
「サンキューな。こんな時になんだが、この前自己紹介してねえな。俺はモラルだ」
「そうか。ウェイルズだ」
「よし、とりあえずここを乗り切るまではよろしくたのむわ。ウェイルズ」
こんなやり取りをしつつも、様々な武器を構えたドワーフ達を倒し続ける。
防衛戦はまだ始まったばかりだ。




