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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛六十一回目

 外にはすでに夜の帳が下りており、煌々と灯る魔法の光を浴びながら町の門まで行くと、続々と冒険者たちが入ってくるのが分かる。

 中には何度か見たことのある冒険者なんかも居たが、話しかけるほどの中ではない。また、こちらが知らなくても向こうが知っているみたいで、俺の顔を見て、隣に立っている冒険者に何事か話しかけている奴もいる。

 うん。顔見知りはいないな。宿に帰ろう。

 一気にめんどくさく感じた俺はUターンすると宿に帰ろうとするが、どこかで聞いたことのある声が聞こえたので思わず立ち止まってしまった。


「一目ぼれです!!俺と付き合ってください!!」


 声のした方を見ると、どこかで見たことのある噛ませ犬という表現がお似合いの剣士が、青みがかった黒色の髪をハーフアップにしている女性に告白をしているところだった。

 こんなに人が居る場所で告白するとか、勇気があるのか、ただのバカなのか・・・。相手の女性もこんなところで言われたら断りにくく感じるんじゃないのか?

 だが、女性の反応は全く異なっていた。

 戸惑うような表情などは一切無く、迷惑そうな表情をした後、ゴミ虫を射殺さんばかりの目で睨み付け、無造作に噛ませ犬の足を払うと、


「お・こ・と・わ・り・よ!!」


 一言ごとに威力を挙げながら顔を踏みつけ始めた。

 その様子を彼女の仲間であろう奴らが・・・奴らが・・・。

 なんであの赤髪がいるんだよ!!

 声にならない絶叫を上げている間にも、噛ませ犬のダグロがどんどんボロ雑巾になっていく。

 俺に助ける義務はないからさっさと立ち去ろう。そうだ、それがいい。


「ごめんね烏丸君。ちょっとやりすぎちゃった♪」


 先ほどの表情とのギャップにドン引く赤髪達。ていうか、それを見ていた奴ら全員が一歩距離を置いている。

 烏丸と呼ばれた男なんてゆっくりとだが、まだ下がっている。そんな男に周囲の目は同情的だ。うん。俺も同情するもんよ。こんな女だけには愛されたくない。

 アリシアは違うよな?違うよね?


「いきなり告白されて舞い上がるのは分かるけど、これはちょっとやりすぎじゃないの!?」

「一目惚れって何よ。もっとましな理由をもってきなさい。そもそも現実じゃないのに付き合おうという魂胆が気に食わないわ。リアルで正々堂々来なさい。同じように踏んづけて川に流してあげるから」

「・・・フォックスさすいません」

「いや、ダグロもいきなりだったから自業自得って事でいいんじゃないかな」

「あの・・・このままだとこの町の兵士にしょっ引かれるか事情聴取で時間を取られるかと・・・」

「・・・うん。覚悟の上だよ」


 赤髪とフォックスが泣きそうな半笑いでヘラヘラ笑い始めたのを気の毒そうな顔で見ていると、この惨状を見ていた周囲の冒険者達はバラバラと散り始めた。いつの間にかハーフアップの女性はいなくなっており、事情聴取のためにフォックスとヤマトが連行されていくところだった。

 なんというか・・・災難だなあの二人も。



 夕食を食べ終わり、再び町にぶらりと出て歩いていると、この町の住人のエルフたちの顔色は悪い。明日から起こるドワーフ達の攻撃に対して心配しているのだろうか。

 反対にこの町に来たばかりの冒険者は屋台なんぞを出したりと活気付いている。マジで町の不幸を飯にするゴミ野郎共だな。


「本当なんだって!中まで進入できたプレイヤーに話を聞いたんだから間違いねえよ」

「その進入したって奴の話が嘘の可能性だってあるだろう」

「いやいや、SS撮って来てたんだよ。それで今内部の地図作ってるってよ。変わりに内部を探るために5回は死に戻りしちまったみたいだがな」

「おいおい、死にすぎだろw」

「なんせソロの斥候役をロールプレイしてるみたいだぜ」


 耳を欹てているとそんな話が聞こえたため、その剣士風の格好をした冒険者の肩を思わず掴んでしまう。


「な、何だよ」

「こいつNPCだろ?なんかのイベントのトリガー引いてたんじゃね?」

「そんな話はどうでもいい。お前らの言ってたその斥候の冒険者は誰でどこに居る?」

「なんでお前にそんなことを言わなきゃ」

「いいから教えてくれ」


 俺がそいつの目を見ながら頼むと、一緒にいた冒険者たちと何事か相談すると嫌な笑みを浮かべながら、


「そうだな、教えるのは吝かじゃねえけど、やっぱり俺たちプレイヤーはタダじゃ動かないわけよ。正式なクエストだったら別に構わないけど、こんないきなりのお願いじゃあな~」


 これだ、冒険者は俺たち町民を見下しているのかこういう行動に出てくることが多々ある。

 正直やられる度にぶち殺したくなる。

 しかし、ここはグッと我慢しなければ。


「これで満足か」


 使わなくなった装備を複数出すと奴らは目の色を変えて出した装備品の数々を奪い取るように手にした。


「こ、これ、最上位のドラゴン素材じゃないか!!しかもバランス調整が入る前の!」

「やったぜ!これで俺たちもトッププレイヤーの仲間入りできるかもしれねえ」

「それで、地図を作っている冒険者はどこだ?」

「ちょっと待ってくれ。連絡入れるから。たぶんこの町のどこかに居るはずだからな」


 そういって虚空に手を走らせ、何事かを話し始めた。


「あんたこの装備どこで手に入れたんだ?それともイベント用のNPCか何かなのか?」

「他のやつがどうかは知らんが、俺はNPCと呼ばれるのは大嫌いだ」

「うん?プレイヤーなのか?」

「冒険者じゃねえよ。ただの町を守る自警団員だ」

「おい、すぐ来るってよ」


 その人物が来るまでの間、手に入れた装備品をホクホクとした顔で眺めている冒険者達を横目に、手紙を書いて近くの警備兵に渡す。


「協力してくれるかどうかはまだ分からんが、それなりに有力な情報を見つけた。とりあえず連れて行くかもしれないからこれを領主様に届けてくれないか」

「伝令で十分なのでは・・・」

「伝令だと伝え方しだいでは間違って伝わるかもしれないだろ」

「それは我々を信用していないということですか?」

「生き物の記憶は時間と共に劣化していくからな。こっちの方が正確に伝わる」

「・・・分かりましたよ」


 警備兵が走って行ったのを見送ると、近くの串焼きの屋台から適当に一品買って口にする。

 この肉は・・・蛙のモンスターの肉か。まあ、これはこれで悪くないな。


「何、この自称自警団員って偉い立場の人間なのか?」

「その割にはエルフじゃねえよな」

「・・・何者?運営の人間が中に入ってるとかじゃねえよな」

「いや、わからんぞ。プレイヤーの様子を生で観察していやらしいイベントをするかもしれん」


 俺を見てヒソヒソと内緒話をする冒険者をひと睨みすると、直立不動の姿勢になり、内1人は敬礼までする始末。なんでだ?いや、想像はつくが・・・。


「あ、来ましたよ」

「ガーディン。急に呼び出してなんのようだよ。こっちはようやく完成した地図をニヤニヤしながら眺めてえんだよ。くだらない用事だったら延々とPvPしかけるからな」

「いやいや、運がよければメチャクチャおいしいですよ」

「その根拠は?」

「コレです!」


 黒髪のマントを羽織った盗賊風の冒険者が、ガーディンと呼ばれた冒険者が取り出した先ほど渡した装備品を見るなり、表情を変え、手に取り詳しく観察し始める。少しすると呆れた顔で、


「お前らコレをどっからパクってきた?ほら、怒らないでおいてやるから正直にいいな」

「いや、違うって。そこの自警団さんに貰ったんだよ!塩砂糖さんに会わせろって言ってきたのもその人だ!」


 塩砂糖?おかしな名前だな。冒険者にはもっと奇妙な名前の奴がいるから、こいつの名前はまだマシな方か?まったくこいつらの親の顔が見てみてえよ。こんな変な名前をきっと遊び感覚で自分の子供に付けてる奴らだ。そうか、だから冒険者の中には性格がアレな奴が一部見られるのか。


「それで、この自警団の人は小刻みに震えてんだ?てか、この町を守ってるのは自警団じゃなくて警備隊だろ?別の町の住人か?」

「さあ?他の町にはほとんど行った事がないから分からないです」

「お前エルフ大好きだもんな」

「こんなところで言うなよ恥ずかしい」

「いーや、もう周囲の奴らにはバレてんだから今さらだろ」

「そうだそうだ。エルフのお姉さんとイチャラブするんだって息巻いてたじゃねえか。それも中央広場で」

「あの後なんか避けられちゃって・・・」

「バカだよなお前」


 思い当たった真実(勘違い)に恐れおののいているうちに、冒険者共はバカな会話を続けていた。



「すまない。それでは本題に入らせてもらいたいんだがいいか?」

「いや、こちらこそ悪かった。本題に入ってくれ」

「分かった。明日ドワーフの作った移動要塞とやらが攻撃を仕掛けてくるのは知ってるよな?そこでお前が作っているという地図のうわさを聞いてな。よければその情報を貰いたいと思っている。もちろんそれ相応の礼は出すし、領主様の方からもきっと何か出されると思う。付いてきてくれるか?」

「・・・」


 こちらの言ったことを頭の中で反芻してよく考えているのか、腕組みをして考え込んでいたが、顔を上げると。


「俺は隅々まで見たわけじゃねえから本当に1部だけだぞ」

「別に構わねえよ。情報が全く無いよりかはいい。初めから手探りで進むのは危険すぎるからな。それで戦力が減って町が壊滅する様は見たくない」

「あんたの言い分は分かった。協力させてもらう」

「ありがとう。付いてきてくれ」


 塩砂糖+αを領主の館に連れて行くと、なんだか俺も一緒に話をすることになってしまった。宿に帰りたい。そしてゆっくりしたい。

 そんなささやかな願望すら叶えられないのか!!


「ウェイルズさんどうかしたんですか?急に机にヘッドバットをして」

「・・・何でもありません」

「ですが、そんなに顔が引きつっているのは体調が悪いからじゃ・・・」

「本当に何でもないから話を進めてくれないか」


 眠気で意識がボーっとするが、自分で連れて来たから寝るわけにもいかん。てか、こんな偉い人の前で寝れねえよ!!


「じゃあ話を始めましょう。あなたはあの移動要塞の地図を作成しているとの事ですが、現物はありますか?」

「ああ、一応完成はしているが・・・3割ぐらいしか埋まってないぞ」

「いえ、それでもありがたいです。我々の斥候は皆侵入まで出来ませんでしたので」

「ああ、死んだら終わりだから慎重になりすぎたのか」

「1人たりとも死なせるわけには行きませんから」

「なるほどな」


 空中から取り出した紙をメシュリカに渡しながら、どこか納得した顔をしている。まあ、内心はどう思ってるかは知らないけどな。


「確かに受け取りました。おかげで何も知らないところから進展出来ました。しかし、こう見ると罠が思っていた以上に厄介な物が多いみたいですね」

「ああ、他にも魔法を使えなくなる空間とかもあったから、魔法主体のエルフの皆さんだとちょっとやばいところとかありますね」

「いろいろと情報をありがとうございます。報酬を渡しますので、冒険者の方々にこの地図を配布してもよろしいでしょうか?」

「別に構わないですよ」

「ありがとうございます。・・・持ってきなさい」


 メシュリカが手を一度上げると、背後に控えていたメイドが下がり、再び現れたときには盆を持ち、その上には金が詰まった袋と、小さな丸い玉が5個、鍵が1本乗っていた。

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