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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛五十九回目

 見た目十二歳にしか見えない整った顔つきをしている耳の尖っている少年が身長よりも長い槍を握り、町を治めている領主の館の門の前で立っている。

 少年は見た目通り、エルフと呼ばれる長寿の種族の中でもまだまだ若い方――――それでも100歳は超えている――――に分類されるが権力者の館の門番をやっているのは別に親のコネとかを使ったわけではない。純粋に少年の実力で勝ち取っただけのこと。

 そんな少年、アシュカの目の前で金髪のガラの悪そうな男が色々と捲くし立ててくるが、果たしてこの得体のしれない人物を通していいものなのか悩んでいる。

 普通だったら絶対に入れようとはせずに門前払いをするのだが、この人物は一応先日出現したトロールの討伐に力を貸してくれたらしく、館の主からもできれば一度会ってみたいとは言われている。

 だが、この人物、ウェイルズの言っていることが信用出来ない。なんだ大きな建造物が動いているって。あれか?僕が見た目子供だから侮ってるのか?

 そう考えてしまい、沸々と怒りが湧いてくるのを何とか理性で抑えていく。


「だから、このままだとこの町が潰れるかもしれないって言ってるだろうが!だから町長と会わせてくれってば」

「そんな確証の無い情報で領主様を惑わそうとしたってそうは行きませんよ。いい加減立ち去らないのならここで捕らえてもいいんですよ」


 そう言って槍を構えるアシュカ。

 目の前のウェイルズはこちらの剣呑な空気を察知しているはずなのに引かずに、むしろ一歩前に出てきた。


「アシュカ、何を騒いでいる。お前は門前で騒ぐために門番になったのか?」

「痛っ」


 スパーン、とアシュカの頭からいい音が響き、つんのめるてしまう。それでも槍を手放さないのを流石と言えばいいのか、不意打ちをした男の技量が高いと判断すればいいのか分からなく、目の前の状態に困った顔をするしかないウェイルズをチラッと見た男は何かに気がついたのか口から、アッ、という声が漏れる。

 ウェイルズは会ったことがあるのかどうか思い出せなく、首を傾げてしまう。


「確かウェイルズさんですよね?」

「あ、そうだが?名乗ったっけ?」

「ほら、先日一緒にトロールと戦わせていただいた者です」

「・・・ああ」


 正直思い出せないウェイルズだが、とりあえず首を縦に振っておく。


「では改めまして。私の名前はライトルという。先日はトロールの討伐の協力感謝いたします。我々の主も一度会ってみたいと仰っておりました。お会いになられますか?」

「ああ、頼むライトル。大至急伝えたいことがあるんだ」

「・・・分かりました。領主様の下へと案内いたします」


 ウェイルズの表情を見て何かを察したのか、真剣な顔になったライトルは、こちらです。とウェイルズの前を歩いて先行する。

 客間にウェイルズを通したライトルは、領主様を呼んできます。と告げると扉から出て行く。客間にはそこそこ高級そうな家具が置いてあり、壁には高そうな絵も飾ってある。

 しばらく待つと、ライトルが年若そうな1人のエルフを連れて来た。


「ライトル。この方が?」

「はい、ウェイルズさんです」

「よくぞ来ました。私はこのウッドロックの町の領主を勤めますメシュリカと申します。種族はハイエルフで、この町の創設時のメンバーの1人よ」



 ん?今メシュリカとか言う奴なんていった?創設時のメンバー?

 メシュリカの見た目は完全に10代前半の背格好でライトグリーンの瞳、ロングの金髪を草の装飾がなされた編み紐で額がでるように纏められる。


「ウェイルズという。至急伝えたいことがある」


 ・・・実年齢何歳?そう聞きたい衝動を抑えて本筋の話を進める。


「至急伝えたいこととは何でしょうか?」

「はい、今から伝えることは冗談でもなんでもなく事実をありのままに言います」


 そう前置きを置くと、見たままのことをそのまま伝え、このままルートが変更されないとウッドロックの町まで来てしまうと言って締めくくった。


「・・・そんなことが」

「にわかには信じがたいのですが・・・ライトル。警備主任に伝えなさい。足の速いものを数人伴い人蜘蛛(アラクネ)の村まで行き、事実確認とその建造物の偵察をして来なさいと、ウェイルズの言っていた銃についても警戒を怠らないようにとも」

「はい、分かりました」


 メシュリカの命を受けたライトルは早足で扉まで行くと一度頭を下げて退出した。


「ウェイルズさん。あなたにはしばらくこの館に留まってもらおうと思っています。あなたの言っていることが正しかったとき、彼らの情報とあなたの持つ情報を刷り合わせて対策を立てていかなければならなくなりますので」

「いや、できれば知り合いをこの町から逃がしたいんだ。だから確認しに行った奴らが戻るまで待ってる余裕は無い」

「そう・・・残念ね。でもね、こんな不確かな情報を渡すだけ渡して、はい、さようなら。とはいかないものよ」

「ああ、避難させたら戻ってくるさ」

「そんな口約束は信用できないわ。別に拘束しようってわけじゃないのよ。あなたのもたらした情報が正しいと分かるまでこの館に居てくれるだけでいいのよ」


 メシュリカがそう言って手を上げると、扉が荒々しく開けられ、武装したエルフが数人入ってくる。その中には門番をしていたアシュカの姿も見られた。


「これは?」

「あなたを拘束させていただきます。もちろん牢獄に入れようということではありませんよ?偵察隊が戻ってくるまで軟禁させてもらうだけです」

「それを聞き入れろと?」

「安心してください。名前さえ教えてくだされば、あなたが逃がそうとしている方に護衛を付けて故郷の町へと送りましょう」


 そうにっこりと笑うと、ゆっくりと手を下ろそうとする。だが、再び扉を荒々しく開いた。


「失礼します!急遽面会をしたいという方が・・・」


 俺を含め、そこに居た全員がそちらを見ると、息を切らしたライトルが慌てたままの表情で固まってしまっている。


「・・・メシュリカ様何してるんですか?恩人に対する行動じゃないですよね?」

「ええ、建造物の確認が出来るまではこの館に居てもらおうと思ったんですが・・・それはそうと、面会を希望している方とは?」

「・・・はあ、後で父に説教してもらいましょう。面会を希望しているのはドワーフの方で、自分のことを使者と言っています」

「・・・使者?」


 説教というところでブルッと一度震えたメシュリカだが、ドワーフの使者と聞いて真剣な顔になり、考え込み始めた。おそらくだが、ドワーフが使者を出す理由が分からないのだろう。


「分かりました。すぐに伺います。ウェイルズさんも一緒に面会しましょう。ほら、ここに座ってくださいな」


 自分の横を指し占めすメシュリカを半眼で見たウェイルズは、なんとなくだが誘われた理由を察すると、めんどくさそうな顔をしつつも移動すると深々と腰を下ろして警備のエルフたちが出て行くのを眺めて時間を使者とやらが来るまでの時間をつぶす。

 その間メシュリカから色々言われた気がするが、アリシアの事が心配になってきているウェイルズの耳には届かなかった。


「ようこそウッドロックへ。ドワーフの使者と聞きましたが、メタルガドの町に何かあったのですか?」


 微笑を浮かべながらそう尋ねるメシュリカに対して、使者というドワーフは腕を組み上体をややそらして見下したような目で不遜な態度を隠そうともしないで返答をする。


「俺たちの要望はただ一つだ。降伏しろ」

「・・・急に何を言い出すかと思えば、急に降伏しろだなんて。使者としての態度がなってないんじゃないかしら」

「できれば俺たちもこの町を壊さずに手に入れたいんだよ。ほら、住んでる奴らはともかく、ある素材は魅力的だからな」

「メタルガドには少数ですが輸出しているはずですよ。それだけじゃ足らないとでも言うつもりですか」

「ハッ、俺たちはあんな他の、特にお前らエルフと共存することを選んだ奴らとは違う。ただ長生きしているだけのお前らに頭を下げて素材を手に入れるぐらいだったら支配して手に入れてやんよ」

「そんな要望を私が飲むとでも?寝言は寝てから言ってくださいね」

「そんな口の聞き方していいのか~?俺たちはこの町を簡単に壊せるんだぜ」

「あら、できないことは言うものじゃありませんわよ。どんなに大勢で攻めてこようとも、私たちの魔法の前には無力なのに」


 メシュリカが自信たっぷりにそう喋ると、使者のドワーフは鼻で笑い、


「じゃあ試してみるか?」


 ニヤリと見ているものが不愉快になる笑みを浮かべた。


「明日だ、明日から俺たちはこの町に侵攻しよう。それまでは俺たちの拠点に攻めてきてもいいぜ。冒険者を雇うのも有りだ。ま、どう頑張ってもこの町は俺たち『マジフィグ』の植民地にするんだからよ」


 聞いたことの無い組織名を誇らしげに言うと、勝手に立ち上がり部屋から出て行く。

 メシュリカはため息を一つ吐くと、


「メタルガドに真意を問い合わせなければなりませんね」

「た、たたた、大変です!!」


 三度荒々しく開かれた扉から転がり込んでくるエルフ。


「メタルガドの、メタルガドの方角から巨大な何かが迫ってきます!!」

「何ですって!?案内しなさい」


 ガバッと立ち上がったメシュリカは転がり込んできたエルフに付いて行ってしまった。


「・・・ウェイルズさんも行きますか?」

「ああ、俺の情報が合っていたことが証明できるかもしれないからな。しかし、知り合いを逃がす時間がもう無さそうだ」

「ウチの領主様がすいません」

「いや、このタイミングだとどの道間に合わなかったさ。まあ、とりあえず早く見に行こうぜ」


 ライトルに先導される形で、町を囲む壁の上に出ると、メタルガドの方角へと歩いていく。

 そこには、立ち尽くす警備兵とメシュリカが立ち尽くしている。

 視線の先には、周囲の木々が小さく見えるほど高い建造物が、ゆっくりとこちらに接近してきている光景だった。

 現実逃避から帰ってきたのか、その場でふらつくメシュリカを周囲の者が支える。さて、これはどうしようかね。

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