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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛五十八回目

今回はだいぶ少ないです。

 下半身が蜘蛛、上半身が人の形をしたパッと見モンスターにしか見えない集団が一人の青年を半円の形で取り囲んでいる。

 だが、そこには敵対的な空気は漂ってはおらず、友好的な、遠くに友人を送り出すような空気が流れていた。

 彼らは人蜘蛛(アラクネ)という種族で基本的にはプレイヤーに協力的なNPCである。

 そして、囲まれている青年、ウェイルズもNPCである。ただし、両者はこれがゲームの中で自分たち(ウェイルズは除く)がコンピューターのプログラムにしたがって動いているだけの存在だとは知らない。


 閑話休題


 おそらくこの集団のリーダーだろうか、美女と呼んでも差し支えないほど顔が整った女性の人蜘蛛(アラクネ)が前に出ると、やや残念そうな顔で話し始めた。


「むう、本当にもう帰るのか?」

「ああ、ウッドロックによって一緒に来た奴を回収して帰らなきゃいけないし、もしかしたらこうしてる間にも故郷がモンスター共の攻撃に晒されてしまっているかもしれないからな」

「そうか、ならば我々は何も言うことは出来ないな。また来てくれるか?」

「ああ、もちろんだ」


 そういって差し出される手を握ると、相手は穏やかな笑みを浮かべて握り返してきた。

 しかし、そんな俺たちの耳に何かが気をへし折りながら接近してくる、先日トロールと戦ったときに聞いたのと似たような音が聞こえてきた気がした。

 他の面々にも聞こえたみたいで、全員でそちらの方向を見てしまう。

 すると、木々の間から何か巨大な建造物のようなものが接近してくるのが見え、おそらくそれが木をなぎ倒しながら進んでくるのだろう。


「なんだ・・・アレは」


 そう呟いたのは誰だろうか。

 だが、その蚊の鳴くような声量の呟きに答えるものは誰もいなかった。だれもそれの正体を知るものなどいないからだ。


「・・・村長、念のため全員を避難させておいてくれ。俺たちが見てくる」

「頼んだぞビルガ。ただし、連れて行くのは5人までだ。それ以上はバレる可能性が高くなるのと村民の身の危険が大きくなるから許可出来ない」

「分かりました。連れて行く者はこちらで選別します」


 行動方針が決定するとビルガと呼ばれた人蜘蛛(アラクネ)は5人の若いのを選ぶと弓を手にして素早く謎の建造物へと走って行った。

 その間も他の村民は最低限の物を持つと村の広場に集まっていく。


 ふむ、これは俺もあれの調査に行くべきか?幸い木をなぎ倒しながら近づいてきているみたいだから戻ってくるときもあれよりかは早く戻ってこれるはずだ。


「じゃあ、俺もアレの偵察してくるわ」

「助かるのですがそこまでやってもらうわけには・・・」

「気にするな。俺が気になっているから行くだけだ」

「・・・ありがとうございます」


 お礼を背に受けながら俺は森の中に突っ込んで行った。


 鬱蒼と茂る木々の間を結構な速さで進んでいるとは思うが、まだ人蜘蛛(アラクネ)に追いつくような気配は無い。

 流石現地人。しかし、いったいどんな移動の仕方をしているのだろうか。村の危機を救ったからといって一緒に行動をしていたわけではない。そのため、あの巨大な下半身を持つ人蜘蛛(アラクネ)が通るのに苦労しそうなほどの幅しかない木々の隙間を抜けているのかが純粋に気になってしまう。

 アレの様子見が終わって一緒に帰るときに確認してみよう。

 そんなのんきなことを考えていると、目的の移動する建造物が目の前まで迫っていた。

 それの周囲を探るため、一週回ってみると、高さはファルフラムの町の物見櫓を5以上つなげたのとほぼ同じ、横も奥行きもだいぶ大きくウッドロックの町の4分の1がすっぽりと入りそうなほどである。

 形は直方体のところどころに窓のようなものが開いており、それが何に使うのかは分からないがいやな予感しかしない。さらに、前面には金属製の破城槌のような物まで付いている。

 もう少し観察してから戻ろうとしたが、いきなり騒がしい音がしてきた。

 音源に近づいていくと、何か争っているみたいだ。

 建造物のなぎ倒した木が転がっている少し開けた場所にでると、目の前で冒険者らしき男の頭に小さな穴が開き、死に戻り特有の光を巻きながら消えていくところであった。


「・・・は?」


 目の前で突然消えていく冒険者の姿に、一瞬だけ思考が止まる。

 その一瞬の間に窓から筒のようなものが突き出されたが、その先は俺には向いてはいない。

 バレないように木の影に戻ると、その筒の向いている先を目で追う。そこには俺と同じように木陰から頭だけ出し、動く建造物を観察している冒険者がいたが、そいつもさっきの冒険者みたいに頭に穴を空けられて死に戻りしていく。

 筒の先からは煙が上がっており、その筒の先で何かが起こったことを示している。

 その様子を見て記憶の片隅に今の条件に該当しそうな武器が浮かぶ。

 確か銃とか言ったかな?鉛弾を筒状の杖のような物の先から飛ばす武器だったはずだ。

 だけど、アレは一発撃つごとに火薬と弾を入れなおさなければいけない物で、次を撃てるようになるまで最速でも30秒以上はかかった筈の集団戦や、接近戦では何の役にも立たない上に発砲音が大きく、周囲のモンスターを呼び寄せてしまういいところの無い武器だったはず。

 しかし、アレからは音が全くしていない。実は銃ではなく魔法でした見たいなオチじゃないよな?

 何事も無かったかのように前進し続ける建造物を観察していると、近づいてくる気配があるので剣を抜いてそちらに視線を向けると、枝をガサガサ揺らしながら人蜘蛛(アラクネ)が目の前に降ってきた。


「ウェイルズさん何してるんですか」

「うお、ビックリした」


 思わず一歩下がったが、それが知り合いのビルガ達警備隊の面々であることが分かり安堵する。

 落ち着いてから警備隊の面々の姿を改めて見ると、村を出たときよりもHPが減っているメンバーが多い。


「どうした?何かあったのか?」

「ああ、冒険者の連中に襲われてな。迎撃するのに時間がかかった。だが、なぜあんなにも血走った目で攻撃をされなければいけないんだか・・・」

「ああ、きっとアレから来てると思われたんだろうよ。さっき冒険者が銃のような物でやられるのを見たぞ」

「・・・銃とは何だ?」

「俺も詳しくは分からないが、鉄の弾を敵に向かって撃ちだす道具だったはずだぞ」

「・・・よく分からないな」


 難しい顔をしたビルガに出来うる限りの説明をしていくが、最終的に当たらなければ問題ないという警備隊メンバーからのやや脳筋的な発言で纏まった。


「そろそろ戻ったほうがいいんじゃないか?」

「そうだな。このまま進行されると避難先も危ないかもしれない」

「ウェイルズさん。俺たちは一回村に戻って避難を手伝ってきます」

「俺も行った方がいいか?」

「いえ、これ以上迷惑をかけるわけには行きません。なのでウェイルズさんはウッドロックの町に戻ってください。へたしたらコレはウッドロックの町を蹂躙しますよ」


 ビルガにそう言われ、頭の中にこの辺の地形を思い浮かべると、確かにこのまま直進しつづけたら1日以内にはウッドロックに到達しそうだ。きっとあの破城槌で壁を壊す気なのだろう。その前に町に戻って対策を立てなくては・・・。アリシアの避難もさせたい。


「じゃあ俺は町に戻る。またな」


 握手をすると全力で走る。

 あ、人蜘蛛(アラクネ)の移動方法を確認するの忘れてた。

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