防衛五十二回目
更新が散々遅くなってしまいました。
理由としては、他にやることがあるのとテストラッシュのせいです。
ストレスで禿そうじゃ~。
なんだって姉さんと戦うハメになり、勝ったと思ったら二人っきりで呼び出され、マドイさん器用貧乏と言われた。
ドワーフのおじさんから急に重量のある皮袋を渡されたと思ったら、次に来たドワーフの青年に賠償金として全部持ってかれてしまった。
持ち上げられてからの落とされ方が結構酷いことになってると思うな。
きっと僕は全力で泣いても許されると思うんだよね。よし、泣いちゃうぞ泣くぞ。
「なんでヤマトはそんなに悟りを開いたはずなのにものすごく酷いことが起こって泣きたくなった。見たいな微妙な気分になる顔をしているんだ?」
「・・・的確な表現をありがとう」
「いやいやそんなに褒めんなよ」
「そんなことは、心底どうでもいいから早くこの町の転移石って言ったっけ?登録しちゃいましょ。手を触れるだけでいいんでしょ」
「ん」
どうでもいいとバッサリやられました。はい。
マドイさんが転移石に触れると、淡く光っていた転移石から一筋のレーザーのような光が飛び出し、マドイさんの胸に吸い込まれていった。
それを確認したマドイさんは場所を開け、僕達に譲る。
全員の登録を終えると、昼食を食べるために一旦解散する運びとなった、再集合する時間を決めると、姉さんとケイがいち早くログアウトしていく。姉さんの理由は分からないけど、ケイは早く昼食を終わらせてこの町を散策するみたいだ。いい装備が見つかるといいね。
僕もログアウトしようとすると、マドイさんに手を掴まれてしまった。VRなのにふっくらとしていてそれで暖かいじゃなくて、
「えっと、な、何かな?」
「ご飯食べに行こう」
「え?VR内で?けどここで食べても満足感はあるだろうけど、実際にお腹が膨らむわけじゃないよね」
「ん。だからリアルで」
「あ、やっぱりリアルなんだ・・・へ?」
「私が奢るから」
僕はマドイさんの言った言葉の意味を理解するのに、数10秒の時間を要した。
ログアウトした僕は、速攻で、それこそ40秒で支度できた自身がある。
家を出ると葵さんの家に向かう。
なんせ僕は葵さんに昼食に誘われたんだ。流石に奢ってもらうのには抵抗があったので割り勘ということになった。
葵さんの家に着くと、彼女はすでに家の前にて待機していた。
案内されていった店はラーメン店だった。
もっと別の店のイメージだったんだけど、店に入って店主らしき男の人に、いつもの。って言ったときは驚いたよ
味の方はとてもおいしかったです。
小学生並みの感想だけど、ラーメンに詳しくない僕としてはそんなにたくさんの意見を言えないわけで、しょうがないよね。
再ログインすると、待ち合わせ場所にはすでに僕以外の全員が揃っていた。
みんな早いな。
「僕が1番最後みたいだね」
「時間ピッタリ」
「見ろよヤマト。この装備いいぞ」
喜色満面な顔で僕に短剣を見せてくる。
黒い鉱石で作ってあるみたいで、刃が真っ黒だ。
薄刃の両刃がやや反ったつくりになっていて切る事に特化しているのがわかる。
「これ切れ味はありそうだけど、耐久値が低そうだよ」
「そこは安心しろ、元々この短剣に使われた鉱石は殴打系の武器に使われる物で、特性はひたすら頑丈で重く、熱に耐性があるらしいぞ。それを一人のドワーフが見事鍛え直すことに成功したんだ」
「・・・高かったんじゃないの?」
「そうだな、おかげで俺は装備品と少しの消耗品以外全部売り払っちまったぜ」
「・・・」
僕はもう呆れている。全部売ったって・・・マドイさんの方からも呆れを感じさせる空気が漂ってきている。
「もっと色々必要なものってあったんじゃないの?」
「その辺は大丈夫だ。狩りをすればすぐに貯まるだろ。しかもあのドワーフは投げナイフも1ダース融通してくれたぞ!」
そう言ってもらったという投げナイフを見せびらかしてきた。
おそらく1回使っただけで耐久値がなくなるんじゃないかってぐらい薄く、細く鍛えられている。
まあ、使い捨てだからここまでしても問題はないのかもしれない。
むしろ、これだけの物だったらどんな敵にも投擲で刺さることだろう。
・・・つい先日僕が買わされたのはどうしたんだろうか。
「いや~、ヤマトの買ってくれた装備が無かったら買えなかったぜ」
「・・・売ったの?」
「もちのロンよ」
「・・・今後絶対烏丸には何かを買い与えない。今決めた心の底から誓う」
「おい、待ってくれ。冗談だ。冗談だから!」
半眼で見やると、言い訳をしていたケイはだんだんと静かになり、項垂れてしまった。
「実際は?」
「売りました。はい」
「なんでそんなに項垂れてるの?」
「ああ、僕に無理やり買わせたやつだからね」
「最低」
「そんな烏丸君も素敵ね」
一人的外れで最低な同意をしているが、マドイさんのケイを見る目が変わったような気がする。
まあ、無理やり奢らせておいて、その品物を勝手に売却するなんて最低の極みじゃないかなと思うんだ。
「そ、そんなことよりさ」
「謝罪は?」
「すいませんでした」
「私じゃなくてヤマト君に」
「・・・はい」
マドイさんの叱責に従ったケイが、僕に向き直って謝ってくる。
腹は立てていたけど、結局はゲームなんだよなと思っていた僕はあっさりと許すことにした。
「それで?これからどうしようか」
「帰る?」
「それもそうだね。今から戻れば晩御飯までには帰れそうだね」
僕達はファルフラムの町に戻るべく動き始めた。
しかし、マドイさんが微動だにせず一点を見始めた。何を見てるんだろう。
僕達はマドイさんの視線を追うと、石段に座り込んで頭を抱えている一人の女性のドワーフが座っている。
「気になるんだったら行って来ればいいじゃない」
「そうする」
トコトコと頭を抱えるドワーフに近づいたマドイさんは会話を始める。その内容が気になるので、僕も話を聞いてみよう。
だけど、僕が近づく前にマドイさんが戻ってきてしまった。
「あの人なんだって?」
「・・・私はお呼びじゃないって」
「よし、文句言ってくる」
マドイさんにそんなことを言うなんて許すまじ。NPCとか関係ないね。ノックバックで星の彼方までぶっ飛ばしてやる!
「相手NPCだぞ・・・」
「ようはバカなのよ」
「ああ、なるほどな」
なんだか失礼なことを言われてる気もするけど、先に文句を言ってやらなきゃ気がすまないんだ!!対応次第では僕のヴォルスタッフが火を噴くよ。
内心はそんなことを思いながら接近すると、ガバッと急に顔を上げて僕を見ると、走って接近してくる。
「あなたは先ほど行われた決闘の勝者ですよね?」
身を乗り出しながら真剣な目で僕にそう尋ねてきた。僕は文句を言いたいのも忘れ、つい反射的にうなずいてしまった。
「やっぱり。お願いします!私を助けてください!」
「・・・え?」
どうやらめんどくさいことになりそうだ。僕は自分の取った行動対して早速後悔した。
ちょっと相談するべく、その人を引きずったまま仲間の下に戻る。
「どうする?」
「お願いします。話、話だけでもさせてください!お願いします!」
「私はどうでもいいわよ。どうせゲームなんだし」
「負けた人に用はありません!!」
「・・・」
あ、姉さんの額に青筋が浮かんでる。このゲームってこんなとこまで再現できるんだね。
「お、俺はイベントが始まる気がするから話を聞くぜ」
「助けるべき」
「う、うん。じゃあそうしようか。話だけなら聞きましょう」
僕のその話を聞くと言うところを聴いた瞬間に、猛烈に頭を下げながら感謝された。
「お礼はいいから早く話しなさいよ」
「うるさい負け犬!私はこの人に話しかけているんだ!邪魔をするんじゃない!」
「・・・」
姉さんが無言で槍を構えると、ドワーフの女性に攻撃を加えようとするのを、ケイが羽交い絞めで抑える。
普段なら速攻で動かなくなって幸せそうな表情をするはずなのに、まだ怒気をまとって暴れているので相当頭にきているようだ。
「出来れば話はスムーズに進めたいから、すぐに話して欲しいな」
「これは失礼いたしました。それでは話させていただきます」
「なんでそんなに扱い方が違うのよ!納得の行く説明をしなさい!」
「あなた敗者。この方は勝者」
「殺す!刺し違えても殺す!」
「ユイシロさん落ち着いてくれ。話が聞けないから」
この人は姉さんに恨みでも持っているのだろうか。キツイ目で睨みつけてるんだけど。
「あんまり煽るのは止めてあげてね。話が進まなくなっちゃうから」
「分かりました。それでは話させていただきます」
いまさらだけどさ、この人なんでこんなに恭しく話してくるの?僕何かしたっけ。
勝者とか言っているからきっと、さっきの姉さんとの勝負が原因だとは思うんだけど、ただ勝っただけでこうなるものなのかな。
疑問がどんどん湧いてくるが、それに答えてくれる人はいない。
「実は先ほどまでいた私の夫が姿を消してしまったんですよ」
「ちょっと出かけてるだけとかじゃなくて?」
「ええ。普段夫はどこかに出かけるとき必ず書置きをしていくんです」
「忘れただけなんじゃ」
「それは絶対にありえません!!」
絶対って・・・。すごい信頼してるんだね。でもなんでこの人の伴侶を探すだけなのに助けてくださいなんだ?それに、普通にクエストの形にしたほうがいいんじゃないか?
「はあ、助けてくれといわれても内容が不透明な上に、決闘の勝者である必要がわからない・・・だったら強い人が受けてくれる確率を高めるためにクエストにした方がいいんじゃない?」
「それじゃダメなんです!今すぐに捜索を頼みたいんです!それに実力者じゃないといけないんです!」
「その理由を尋ねても?」
「クエストの形だと手遅れになるかもしれないんです。回りの目撃情報をあわせてみると、どうやら攫われたみたいなんで・・・」
「なんで手遅れになるのかは知らないけど、クエストの方が確実だと思うんですけど」
ドワーフの女性は俯くと、
「手順が問題なんです」
と呟いた。
「手順?」
「はい、本来なら町長の方に書類を提出して審査、問題が無ければ依頼として成立されるのが正式な手順なんです。けど、それだと依頼として出されるまで数日かかるので緊急の、本当に切羽詰った依頼だと間に合わないことの方が多いんです」
「それってシステムを見直したほうがいいんじゃ・・・」
「しすてむ?しすてむが何かは知りませんが、過去は町の酒場などの掲示板に、自分で依頼を張ることができたのですが、どこかの町の愚か者が依頼を掲示板に張り、報酬を高額に設定したみたいなのですが、達成者にその報酬を渡さなかったことでもめる案件がたくさん出たので今の形に落ち着いたみたいです」
ああ、ゲームの世界なのに良く作りこまれてるんだな。こんな依頼の出る裏側まで設定がちゃんとあるなんて。
けど、確かにそれは問題だね。せっかくクエストをクリアしたのに報酬が貰えなかったらクソゲーって言って放り投げると思うしね。
「なので、私の夫を助けてください!」
「・・・今の話を聞いちゃうとなぁ」
「お願いします!何でもしますから」
「ん?今「烏丸?ふざけてる場合じゃないから」お、おう」
このままケイに続きを言わせたら嫌な予感がしたから止めたけど、別に公開はしいていない。むしろ妥当な判断。ファインプレーだと自分自身を褒めてもいいかもしれない。
「報酬は?」
「夫が武具店を営んでおります!ドワーフ製の最高の武器防具を用意させていただきます!」
「ねえ、ドワーフ製の武具がどれほど優秀かは知らないのだけど、こういうクエストの報酬としてはきっと破格のものよね?」
「え、ええ」
「それだとさっきの話の、なんだっけ?報酬を払わなかった人と同じで、つりあってないから怪しいんだけど」
「っ!?」
「それでホイホイ受ける人はいるのかしら?」
ドワーフの女性は姉さんの口撃受け、ボロボロと涙を流し始めてしまった。
「私・・・そんなつもりじゃ」
「でも怪しいものは怪しいわよね?」
「でも・・・」
「いい年した女が泣いても心に何も来ないわよ。むしろムカつくわね」
うわぁ、姉さん荒れてるな~。さっき僕に負けたことがよほど腹立たしいのだろう。八つ当たりかな?
「ただ、私は夫のため思って・・・」
ここは悪いけど、姉さんの言うことも的を得てるところがあるから、断ろうかな?よし、断ろう。
「申し訳ないのですが「助けてあげないの?」その依頼受けましょう」
きっと今の僕は人生でも最高レベルの真面目な顔をしていることだろう。
姉さんの、なんで?といった感情が伝わってくるけど関係ない。マドイさんが助けたいというんだ!僕は全力でサポートするべきだろ!
「え?」
「受けましょう。その依頼」
「本当ですか!」
「男に二言はありません」
『イベントクエスト【いなくなった夫の行方】を受理しました』
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
すごい勢いで頭を下げてくるドワーフの女性を見ながら、勢いのままに受けたはいいけど何も考えていなかったことに頭を悩ませながらマドイさんからの感謝の言葉も受け入れたのであった。




