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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛五十一回目

あけましておめでとうございます。


新年初投稿でございま~す。

投稿が遅れた理由は、まあ、察して下せえな。

 メタルガドの町を歩いてみると、少しゴチャゴチャした感じがする。

 実際に今見ている商店街は、様々な商品が並び、店員が曲の呼び込みをしている。

 まあ、商品の中でも武器防具や装飾品の方が多いけど。

 そんな商店街から少し外れたとある工房に僕達は訪れていた。

 その工房の中では、一人のドワーフの少女と、一人の暑苦しいヒゲモジャの見た目70ほどに見えるドワーフのオジサン。

 その二人がガッツリと抱き合っているのだ。

 僕とマドイさんは感動の再会の図であるのが良くわかるので満足げに見ているが、ケイは興味なさげにそれを眺め、姉さんにいたってはケイを凝視するばかりである。


「あの町の町長から連絡があったときは嘘だと思ってたが、まさか本当とは。今日ほど神に感謝した火は無いぞ。今日は祭りだ!宴をするぞ!」

「親父は大げさだな」

「大げさなものか。死んだと思ってた愛娘が帰ってきたんだ!喜ばずにはいられんよ。酒だ、酒を持てえい!!」

「師匠は相変らずだな」


 なんとナグサの父親がササの師匠だとかなんとか。ササは笑いながら再開を楽しんでいる。


「なんか僕達もういらなくない?」

「ヤマトはいらない子だからね」

「姉さん?ちょっとあっちでお話しようか。僕だって怒るときは怒るんだよ」

「じゃあさっきの続きでもしましょうか」


 そう言い合いながら僕と姉さんは工房を後にした。決着つけてやる!!


 ●●●



 ヤマト君がユイシロさんと一緒にどこかに行ってしまった。どうしたんだろう。

 ついて行こうかと思ったけど、こっちのクエストの報酬をまだ貰ってないから行けないなー。

 

「おお、そういえばまだお礼を言ってなかったな。ありがとな」

「どういたしまして」

「そうそう、こいつをそちらの町の町長に渡しな。報酬をもらえるはずだぜ」


 ナグサちゃんの父親が懐から取り出して渡してきたのは、一枚の紙のようです。

 私はお礼を言ってそれを受け取りました。

 報酬も貰ったから二人の後を追いかけようかな?

 烏丸君もこっちをチラチラ見てくるけど、ユイシロさんを追いかけたいのかな?

 私はボンヤリとそんなことを考えていると、外で何かが壊れるような激しい音が響き、騒がしくなってきた。


「外で何かあったのか?誰か見て来い」


 ナグサちゃんの父親がそう言うと、皆気になっていたのか次々と工房の外へと出て行ってしまいました。

 おかげで工房に残ったのはナグサちゃんの父親と私と烏丸君しか残ってないです。


「・・・俺達も確認しに行こうか?」

「・・・ん」


 話しかけてきた烏丸君に対して肯定の意思を籠めて頷くと、手を取って先導されました。手を掴まれた意味が分からなかったので、途中でそっと手を振りほどくと、なぜか悲しそうな顔をします。烏丸君はユイシロさんが好きなんだからこんなことをしてはいけないと思う。

 まさか全員外に行くとは思ってなかったナグサちゃんの父親もため息を吐きながら外に向かい始めてます。

 私達が工房の外に出る直前、今度は何かが崩れてる音がしました、金属音も一緒です。

 三人で顔を見合わせると、ゆっくりと歩いていたのを駆け足にして外に飛び出しました。


 外にでて周囲を確認すると、人だかりの出来ている場所を発見したので、そちらに行き、人の群れを書き分けて中心の、何かが起こっているであろう場所に無理やり入り込みます。

 人だかりの中心で立っていたのは杖を両手で持ち、槍のように構えているヤマト君であった。

 ヤマト君の見ているのは一軒の武器を扱っている店舗のようで、その店舗の店先に置いてあった木箱が散らばっている。元々綺麗に積まれていたのだろうけど、崩れ、中には壊れているのもあるみたい。

 壊れた木箱の木片が、宙を舞った。

 崩れた木箱を蹴り上げて中から這い出してきたのはユイシロさんのようです。

 顔を怒りで真っ赤に染めて、ヤマト君を睨んでいます。

 いったい何があったのでしょうか。

 魔法メインであるはずのヤマト君が近接戦闘でガンガン戦うユイシロさんを、木箱に突っ込ませることができたんだろう。どういうトリックを使ったのかな?


「あんたら喧嘩なら他所でやってくれ!!うちの商品が、商品がぁぁぁ!!」

「あんたはどっちが勝つと思うよ」

「俺はあの譲ちゃんが勝つと思うね、なんたって膂力がちげえ上に、技術まであるんだからよ」

「ハッ、よく見てみろよ。確かに力や技術はあっちの譲ちゃんのほうが上かもしれないが、戦闘のなんたるかの根幹をまったく理解しちゃいねえだろうがよ」


 武器屋の店主の悲痛な叫びを尻目に、ドワーフの皆様は賭けをし始めた、気がつくと元締め役のドワーフが私の背後に立っていて、どっちにかける?って聞いてきています。

 私はとりあえずヤマト君にかけておこうかな。

 元締めさんに一口分の掛け金を渡すと、二人の戦闘に視線を戻す。

 あ、またユイシロさんがヤマト君に弾き飛ばされてる。


「あれ?リアルで格闘技の経験をしたことのあるこんだけユイシロさんが弾き飛ばされてるのって・・・喉元まで出てるんだけどな」


 隣りで烏丸君がそんなことを呟いている。

 へえ、ユイシロさんって格闘技を経験したことあるんだ・・・

 あ、またユイシロさんがヤマト君に弾き飛ばされるようにして地面を転がってる。

 ・・・もしかして。


「ノックバック?」

「ああ、それそれ。ようやく出てきた。なんかすっきりしたぜ。マドイさんサンキュー」

「・・・」


 思わず声にだしちゃったみたいです。

 先ほどからチラチラ見てくる烏丸君には曖昧な笑み(表情はまったく変化していない)を向けながら頷いておくことにしました。

 嬉しそうな顔をしてくるのはなんでだろう。

 再び大きな破砕音。

 しまった、余計なことに気を取られていて見逃しちゃった。


「あー!!なんでよ!明らかにこっちの方が力も腕も上なのに、なんで私が転がされるのよ!」


 ずっと転がされていてフラストレーションが限界に達したのか、ユイシロさんが苛立ちをぶつけるようにそんなことを叫んでいます。

 ヤマト君はそれをスルーすると、ユイシロさんの精細さを欠いた槍をギリギリのところで避けて杖でカウンターを加え、ユイシロさんを転がします。

 あれ?今気がついたけど、杖があの時一緒に買ったものとは違うものになってる?

 普段使ってる桜の杖とは色合いが違い、ベースの柄の色が赤茶けている。

 さらに、杖先は桜の杖よりも心なしか尖っていて、何よりグリップにはめ込まれている赤い宝石のようなものが大きな違いです。なんで気がつかなかったんだろう。

 起き上がってきたユイシロさんに魔法を撃ち込んでいるけど、どうもいつもの威力がないみたい。



「いい加減に、しろぉぉぉぉ!!」


 槍をヤマト君に投擲したユイシロさんは、投げた槍の行方を追わずにすぐさま距離を詰めていっています。

 ヤマト君は投げられた槍に対処できなく、肩口に槍が刺さって体勢を崩してしまいました。

 そこに繰り出されるユイシロさんの拳を不安定な体勢で受けてしまったせいで、完全に地面に倒れこみます。

 突き出した拳で槍を掴み、回収を果たすとそのまま中心を基点に回転させてしこたまヤマト君を殴り、切り裂いていっています。

 おまけとばかりにもう一撃加えようとしたユイシロさんの頭上から大量の水が流れ落ち、動きを阻害し始めました。ヤマト君のウォーターウォールです。

 動けなくなったユイシロさんの頭にヤマト君の2度、3度と振り下ろされた杖が直撃した結果、ユイシロさんの頭上に見覚えのある星のエフェクトが出てきた。気絶状態になってしまったようです。

 動けないユイシロさんをヤマト君が一方的にタコ殴りにして、ついにユイシロさんのHPがあと一回でも攻撃を受けたらなくなってしまうところまで減ってしまいました。

 ようやく気絶から立ち直ったユイシロさんが顔を上げると、ヤマト君がその首筋に杖先を当ててしまいます。

 悔しそうな顔でリザインと宣言したユイシロさんはヤマト君を睨みつけて疑問をぶつけ始める。


「なんで、私のほうが近接戦闘は魔法職のあんたよりも上のはずなのに・・・」

「僕を睨みつけても姉さんが負けた事実は変わらないよ。そんなに気になるんだったら烏丸かマドイさんにでも聞けばいいよ。僕が唯一上回っていることをホイホイ教えたくはないからね」


 ヤマト君がそう告げると、ユイシロさんは真っ直ぐ烏丸君の方へと歩いていく。邪魔したらまずいかな?

 そう判断した私はこちらを見たヤマト君に手招きをして二人でこの場から立ち去ろうとする。

 うん?ヤマト君が周囲をキョロキョロ見たりソワソワしたりとなんだか挙動不審な行動をしている気がするけど、きっと回りにリアルじゃなかなか見れない珍しいものがあるからだと思います。


「PvPに向いてないね」

「え?」

「ユイシロさん」

「姉さんがなんだって?」

「PvP向いてないね」

「姉さんはこの仮想世界(VRゲーム)でもリアルとほぼ変わらない動きをしていた。これが純粋なプレイヤーの腕だけで戦う、特殊な技の無いVRの格闘ゲームだったらまだ良かったんだろうけど、ここはガッツリファンタジーな世界だよ。この世界特有だってあるから、その辺をしっかりと理解できなきゃPvPじゃ勝てない」

「・・・分かりやすく」

「まあ、ようするに田んぼと畑の違いかな?作物を育てるという観点で見れば似たようなものだけど、そのやり方がまったく違うでしょ」

「なんとなく分かった」


 私が頷くと、少しホッとした顔で無事言いたいことが伝わったことに安堵しているようです。

 じゃあ今はまだシステムを理解していないユイシロさんがシステムの理解に勤めたら・・・。


「次はどうなるか分からない」

「うん、そうだね。姉さんが学習してきたら今度こそ勝てないかも。性格があんなんでも頭は僕なんかよりもよっぽど優秀だから」


 なるほど、ユイシロさんって優秀な人なんだ・・・人物像が浮かばないな。あ、ついでにあの杖のことも聞いておこう。


「そういえば、アレ何?」

「アレって?」

「さっきの杖」

「ああ、あれは一人で散策してるときに工房で作って貰ったんだ。ほら、僕の装備一式を買った店でこの杖のベースになった杖を購入してね」


 そう言いながら手元に先ほど使っていた杖を出現させました。

 シンプルな形状をしていながら、どこか力強さを感じる杖です。


「これの名前は【ヴォルスタッフ】って言うんだ。効果に力の上昇とノックバックが付いてて、完全に前衛向けの武器だよ。魔法職でもいざとなったら自分の身を守るために前衛まがいのことをしなくちゃいけなくなるだろうし、だから僕は念のためにこれを作ってもらったんだよ」


 ・・・魔法職が前衛のまがいごとをするのって意味ないと心の中で思ってしまいました。だって、基本的に魔法職がそんなことをしなくちゃ行けない事態に陥る=全滅の図式が出来上がっているから。

 首をかしげてヤマト君を見ると、なぜかちょっと顔が赤くなりました。何ででしょうか。


「え、えっとね。ほらこの杖ならノックバックも付いてるし、時間稼ぎをするのにピッタリだと思うんだ。ほら、作戦の幅も広がるし、いい事のほうが多いと思うよ」

「魔法の威力は?」

「・・・」


 色々と言い訳をしてきましたが、ヤマト君の魔法の威力がどうなるかを聞くと、口を噤んでしまいました。


「魔法の威力は?」

「・・・」

「威力は?」

「・・・下がります」

「よく聞こえない」

「下がりました!!ものの見事に下がりましたよ!!」

「そう」


 やっぱり下がるんだ。

 ・・・それって器用貧乏になるだけなんじゃ・・・。


「でも、僕だって色々出来るように」

「器用貧乏?」

「グフゥ」


 ヤマト君はその場に崩れ落ちた。

 え?どこかから攻撃!?

 周囲を警戒し始める私の足元でプルプルと小刻みに震えているヤマト君。これって麻痺?

 視界の端に映るパーティメンバーのHPを確認するけど、なぜか麻痺のアイコンが付いていない。あれ?

 周りにいる町の人たちが私を怪しい人を見る目で見てくるけど、あれ?攻撃は?


「おお、いたいたさっきの兄ちゃんだよな」


 一人のドワーフが近づいてくると、ヤマト君に向けて声をかけています。攻撃してきたのこの人?


「あの後、急に消えちまうんだもんよ」


 私は警戒を解かないでいますが、そんな私を気にした様子も無くフレンドリーにヤマト君との会話を継続しています。


「ほれ、兄ちゃんの取り分だ。賭けでたんまりと稼がせてもらったお礼さ」


 そう言って重そうな皮袋をヤマト君の目の前に置いて立ち去っていく。

 ゆっくりと立ち上がったヤマト君は、その皮袋をの中身を早速のぞこうとしたが、立ち上がるのを待っていたかのようにその肩を叩くドワーフの青年。

 その青年は笑顔で賠償金の請求を始めました。

 どうやら先ほどユイシロさんが散々突っ込まされた武器屋の店員らしいです。

 結局ヤマト君が手に入れたお金は、全部賠償金として溶けて無くなっていったみたいです。

 うなだれるヤマト君の背を見て、今度リアルで食事を奢ってあげることを心の内で決めました。

はい、どうだってでしょうか。お楽しみいただけましたか?

気が向きましたら評価や感想などをお願いいたします。


では今年もよろしくお願いします

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