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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛五十回目

 メタルガドは巨大な岩山をすり鉢状に削り、そこに作られた町である。

 そのため、その町に行くためには東西南北と北東へ伸びている洞窟を通っていく必要があるのだ。

 ナグサの話によると、元々は大きな鉱山で、そこから資源を掘っていたが、どこかのバカが坑道内で巨大な爆発魔法を使ったせいで崩落、大きな犠牲が発生した。

 しばらく人は寄り付かなかったが、一人のドワーフの将軍が戦争の前線基地にちょうどいいとして、砦を建築。

 だが、すぐに戦争終わってしまったため、前線基地の意味が無くなってしまった。ここをどうするかと上層部で話し合ったいると、まだ資源が残っているという報告があり、ならいっそのことここに町を作っちまえということになり、気がつくとドワーフ達の政治の中心がその町に移動していたのだとか。

 そうして出来たのがメタルガドと道中ササとナグサに教わった。


 どうしてこうなった。


「アイス!!」


 杖の先から生み出された氷塊が、背後から迫ってくる狼MOBの集団に当たる。しかし、数が多すぎて減った感じがまったくしない。

 魔法を使って遅れた分を取り返すために、速度を上げて走るも、先行して走る仲間達よりも少し遅れてしまう。


「クソ!なんでこうなったんだ!!」

「「「お前のせいだよ!!」」」

「うん」

「軽・・・烏丸君は一切悪くない!!この可能性を示唆しなかった弟が悪い!!」

「僕のせいにするんじゃない!!」





~10分前~


「そういえばさ、僕達無警戒でここまで来ちゃったけど、本来だったら罠とかあるんじゃないの?」


 僕達は歪な、自然に出来た感じのする円形の部屋の入り口でたっている。

 中心地に明らかに罠だとわかるオブジェクトが鎮座しているからだ。


「いや、今は平時だからそう言う類の罠は作動してないはずだぜ」

「ナグサよ、ドワーフ共は鍛冶と酒以外の事に関してはどこか抜けてるからな。どうなってるかわからねえぞ」

「それって大丈夫なの!?」

「多分解除し忘れが結構あると思うから気をつけた方がいいぞ」


 無駄に爽やかな顔でそんなことを言うナグサに皆呆れるしかない。

 あれか?ドワーフは皆そんな性格に設定されてるのか?


「おし、じゃあ索敵は俺に任せろ」


 唐突にケイがそんなことを言い始めた。


「あれだろ?このメンバーの中に罠とか発見できる奴っているのか?いないだろ。俺に任せろ」

「出来るのか?」

「大丈夫だ。これでもMMORPGでは斥候役もやってたことあるんだぜ」

「VRでは?」

「ねえ」


 キッパリ言い切られた。罠の解除は普通のゲームのようにはいかないと思うんだけどな・・・。

 僕はケイの蛮行を止めるべきか否か。まあ、何事も経験。

 簡単な罠ぐらいだったら解除できるだろう。そうでもしなきゃプレイヤーが罠を解除できなくて洞窟やダンジョン攻略が詰んでしまうしね。


「じゃあ任せたよ。ナグサ、あの罠って、解除の難しい罠じゃ無いよね?」

「罠の種類が変わってなければ、あれはただの落盤トラップだたはずだぜ。ただ・・・新しい罠を作ったとか言って遊び半分に変更をしている可能性が高い」

「・・・それって大丈夫?」

「まあ、気をつけたほうがいいだろうな」

「烏丸。聞いてたよね?罠の解除は慎重に・・・?」

「あ?なんだ?」


 ナグサの忠告は遅かったみたいだ。

 すでにケイが罠の解除を行い始めていた。


「おお、なんか手順が視界に浮かび上がって・・・なるほど、ここをこうして。うん?このパーセントは何だ?」


 ボソボソと呟き、一人で納得しながら手を動かしていく。ケイの視界には罠を解除する手順が表示されてるのかな?


「うん?数字が下がったな。新しく・・・タイマー?」


 手を忙しそうに動かしていくケイを、ナグサが心配そうに見ている。


「あれ?急に難しくなってきた?」


 ケイがそう呟いた瞬間、ブザーが鳴り響いたかと思うと、巨大な魔方陣が地面に浮かび上がった。


「あれ?ミスった?」

「ナグサ、罠の種類とかって分かる?」

「あたいはこのタイプの罠を見たこと無い。新作かな?どんな罠なんだ」


 やたらキラキラした目で罠を見つめるナグサ。いや、感動してる場合じゃないから。期待に満ちた目でその罠を見ても、その罠の被害を受けるのは僕達だから!!


「マドイさん!!撤退しよう。なんの罠か分からない以上全滅するかもしれない。それに、ササとナグサさんは優先的に逃がさなきゃ」

「烏丸君は?」

「置いていこう」

「テメ、即答かよ!!」

「ヤマト、そんなことしたらリアルのあんたは女の子になるわよ」

「姉さん。二人っきりになるチャンスだよ」

「烏丸君。私が残るわね」


 よし、めんどくさいのも押し付けることができた。後は撤退するだけだ。

 マドイさんは入ってきた扉から出ようとするが、その前に魔方陣が光を放ち始めた。


「なんだ!?」

「やった来たぁぁぁぁぁ!!罠が起動したぁぁぁ」

「ナグサは全滅したいのかコノ野郎」


 眩む視界の中、ギャアギャアと元気に騒ぐ面々。そんなメンバーを尻目にHPバーを注視しているが、HPが減ることも無く、状態異常が付与されたわけでもなく、何事も無く光が収まっていった。


「皆大丈夫?体とか・・・に・・・」

「どうしんだ?」

「総員!!早急に離脱!!」

「「了解!!」」

「分かった」

「え?え?皆どうしたんだ?」


 バカみたいな顔でこちらを見てくるケイを放置して、姉さん以外は入ってきた扉からダッシュで飛び出す。約1名は目をキラキラさせたままだったけど。


「烏丸君後ろ!!」

「後ろ?」


 怪訝な顔をして振り返ったケイの視界には、大量の狼型MOBの群れが入るはずだ。

 泡を食ったような表情で飛び出したケイの後を追うように、狼共が喰らいつかんと飛び出してきた。

 そして、この現状に陥っているというわけだ。

 どこからどう見てもケイのせいだよね?


 この原因を現実逃避気味に思い出していると、マドイさんが話しかけてきた。


「魔法で壁張れば?」

「その手があったか」


 僕は早速ウォータウォールの魔法を唱え、狼と僕達の間に水壁を張ってこれ以上追いかけて来れないようにする。

 しかし、足を止めたのは一瞬。

 張ったはずの水壁はあっさりと突き抜けられ、素通り同然で狼の群れが追いかけてくる。


「あれ?もしかしてこいつら相当強い?」

「そりゃあそうさ。こいつらはメタルガドに繋がる通路で出てくるモンスターの中じゃ一番強いからな。一匹ずつだったらそんなでも無いが、団体様にあったら足に自身がある奴は逃げろ、自身がないやつは諦めろと言われてるんだぜ。すげえだろ」

「そんな自慢はいらないよ!!」

「まったく、なんで水の壁にしたんだ?氷とか土とかの方が使い勝手良くないか?」

「ササ、甘いよ。甘すぎる!!あの程度の魔法を土や氷に変換したとしても、あいつらは簡単に壊してくるぜ」

「テメエはなんでそんなに嬉しそうな顔してんだ!!」


 彼女らはなんて楽しそうなのでしょう。

 時折マドイさんが矢で牽制しているが、狼は全部回避して迫ってくる。

 ああ、護衛される人たちと、護衛している人たちとで温度差がありすぎる気がするんだよな。


「マドイさん。このままだとどうなるかな?」

「十中八九全滅」

「ですよねー。命中させることのできる魔法だと火力不足。矢は当たらないもんね」

「烏丸君。あっちのわき道でいい事しない?」

「姉さんはこんなときに何してるのさ!!」

「冗談じゃない。何怒ってるの?冗談も分からないバカな子だったなんて私知らなかったわ」

「ヤマト君怒っていいよ」

「そうだよね。僕は怒る権利があるよね」

「マドイさん。このクエスト成功したら、二人で別のクエスト受けませんか?」


 急に口説き始めたケイに足払いをかける。そのまま狼の経験値となれクソ野郎!!

 狼に一撃を食らったケイが、体勢を立て直して戻ってくる。チッ、生き残ったか。


「おい、友人に向かって何しやがる!!」

「こんな状況で口説いてる余裕があるんだったら、中央で暴れてもらおうかと」

「死ぬわボケ!!」

「口悪いな。いったいどうしたんだよ」

「お前のせいだよ!!」


 うん。こんだけしゃべれる余裕があるんだから元気だね。もう一回行って来てくれないかな?


「ヤマト、後で覚えてなさいよ」


 般若だ。般若が僕の後ろに立ってる。

 僕ここで死ぬのかな?


「ナグサさん。メタルガドに行く道わかる!?」

「当たり前だろ?後もう少しだ!!」

「騒ぎながらもちゃんと道案内はしてたのか」

「なんだその意外そうな表情は」


 僕は急に壁の形が気になったので、ナグサからそちらに視線を移す。


「おい、なんでお前らみんなで視線を逸らしてんだ?ササも便乗してんじゃねえよ」

「気にしたら負けだよ」

「うるせえ!!」

「喧嘩してる暇は無い」


 マドイさんがポツリと言うのと、背後から迫る狼共の唸り声が先ほどより近く、相当近寄られていることがわかったのがほぼ同時。

 振り向く暇が無いことは分かっているのに振り向かずにはいられない。

 振り向き、飛び込んできた光景は、口を大きく開け、僕に向かって飛び掛ってきている狼の姿だった。


「うわぁ!!」


 偶然だが、反射的に杖を眼前に持ってきたのが僕のアバターの命を救った。

 杖で狼の攻撃を弾くことができたのだ。

 もう一回やれといわれても出来ない。

 僕を襲った狼は、マドイさんの矢と、ケイの投げた投げナイフでHPが消滅した。


「どうするの?もう少しで追いつかれそうだよ!」

「どうするって・・・走るしかないだろ?」

「確かにそうだけども・・・」


 確かにそうなんだけどさ・・・。このままじゃ追いつかれちゃうよ。

 そう危惧していると遠くの方に、壁にかかっているランタンの光とは違う光が、僕達の進行方向に見えてきた。


「多分あそこが出口だ!!全員死ぬ気で走れ!」

「走らなきゃリアルに死んじまうだろうが!」

「しゃべる余裕があるんだったら走りなさい」

「いや、このままだと追いつかれるな」


 さてさて、どうしたものか。確かにケイの言う通りなんだよね。

 今襲ってきてないのは、仲間がやられたから警戒しているだけだろう。

 現に再びジリジリと近づいてきている。


「しょうがないわね。ヤマト、囮は任せたわよ」

「なんでそうやってサラッと弟を見殺しに出来るんでしょうね!!ここは年長者の意地を見せて姉さんが囮になればいいんだ!!」

「マドイさん、こんな酷い男と付き合ってはダメよ。今後気をつけなさい」

「姉さん何を言っているんだ!!僕はこんなにも紳士的であるというのに!!」

「女性を囮にして逃げようとしている奴は、紳士とは言わないわ!!」

「ハハハ、姉さんもおかしな事言うね。ここにいる女性はマドイさんとササとナグサさんだけだよ」

「そうね、私はヤマトと喧嘩すればいいのね?そうなんでしょ、その喧嘩買ってあげるわ」


 走りながら器用にファイティングポーズを取る姉さんに対抗して、僕も同じポーズを取る。

 前衛職の姉さんと殴り合いをしても勝てないのは分かっているが、どうにも一発は殴っておかなきゃ気がすまない。

 走りながらも相対する僕達に呆れるような空気が前を走る4人から漂ってくるが、そんなものは知ったこっちゃない!!

 そんなことをしていたからか、前の4人が突如ジャンプしたのが視界の端に映ったが、それが何を意味していたかを理解する前に、僕と姉さんはそろって倒れこんだ。


「「い、いったい何が?」」


 躓いた地点を確かめると、大き目の石が転がっていた。


「ヤマト君!?」

「クソ、ヤマトのせいで」

「この期に及んで僕のせいか!!自業自得じゃないか。ウォーターウォール!!」


 僕は素早く魔法を唱えたが、学習されたのか立ち止まることなく突っ込んできて、2~3体が水壁を突き破ってくる。

 それを素早く立ち上がった姉さんが槍で攻撃していく。

 飛び込んだ瞬間に姉さんの連続攻撃でHPを削られていく狼達は大した抵抗も出来ずに消滅していった。

 消滅する様を確認すると、姉さんとの言い合いを再開しながら走り始める。


 狼達も逃げられまいと、次々水壁を破って接近してくる。

 しかし、僕の顔の横を複数の何かが通ったかと思うと、迫ってくる狼の中の1体が音もなく崩れ落ちていた。

 前方の洞窟の出口に、先にたどり着いていたマドイさんとケイが立っており、そこから援護をしてくれたみたいだ。

 ナグサさんが心配そうに見てくるが、マドイさんの援護があるというだけでなぜか安心できる気がする。


 マドイさんとケイの援護のおかげで、狼から逃げ切ることができた。

 まあ、その際僕は一撃貰ったんだけどね。一応生き残ったんだから些細なことさ。


「マドイさんありがとう。助かったよ」

「ん、無事で何より」

「さて、皆無事に到着したな」

「あれ?狼達はどうなるの?」

「ああ、モンスター自動迎撃の罠が作動してるはずだぜ」


 後ろを振り返ると、確かに壁が出来上がっており、壁の上から炎が上がっているのが見える。

 それを見ていて、背筋に寒いものが走る。

 アレに巻き込まれたら一瞬でHP持ってかれるんだろうな・・・。


「さて、それじゃあすぐそこの階段を下ればメタルガドだ」


 ナグサはそう言って僕達の前をゆっくりと歩いていく。

 それを追いかけて階段の上まで行くと、市場のような場所を中心とした町並みに、所々立っている工房らしきところから上がる煙がアニメなどでよく見る発展途上中の町を連想させる。


「よし、とりあえず護衛のクエスト終わらせようぜ」

「それもそうだね」

「私達をここまで送ってくれてありがとな」


 ササが柔らかい笑みを浮かべていて、思わず見とれてしまった。

 マドイさんになぜか蹴られて、ボソッとロリコンと言われたけど、僕はロリコンじゃない!!

今年最後の更新です。

 それでは皆さん、良いお年を。ノシ

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