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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛四十五回目

 ただ今ササと楽しい(笑)お食事の真っ最中です。

 ササの前には大きな、香辛料を摺りこまれたステーキ肉が、熱せられた石のプレートの上でジュウジュウ音を立てている。

 そこにたっぷりとかけられるタレ。実に豪勢で、匂いだけで涎が溢れてくる。

 逆に、俺の前には大きな硬い黒パンが一つと、複数の野菜を煮込んだスープが一杯。


 ・・・問いたい。



 なんでこうなったッッ!!

 顔を両手で覆って泣く俺の行動に、怪訝な顔を一瞬したササだが、目の前の肉に思考の何割かを既に割いており、気にもしない。

 しかしこの店、量の割には値段が少しだけ良心的なんだよな。

 表の看板には、店名を入れるべき場所を、デカデカと店の方針が書かれており、店の名前は端っこの方に申し訳程度に書いてあるだけであった。


『ただの飯や、量に満足できない奴らは家に来やがれ!

 少し値は張るが必ず満足させてやるぜ!!

                by店長ガラドン

                   お食事処ドン』


 こんな感じだった。

 確かに大衆の酒場で提供される物よりかは割高だが、それに伴ったボリュームに、味の方も美味いときたもんだ。店内にやたらガタイのいい建築関連の仕事をしてる奴や、工房で見かけた奴らが多くいるのも頷ける。

 俺の注文した物も、この店の中では一番安いメニューであるが、満足できる物ではある。周囲の奴らもこれを頼んでいるのが一定数以上いる。

 だが、目の前であんな肉を食ってるやつがいると、話は別だ!!

 俺の金であんなもん食いやがって。

 あ、これ見よがしに、目の前で美味そうに!

 飯の恨みが怖いと今すぐその体に叩き込んでやろうか!?


「変なことしたら速攻で殺すからな」

「すいませんでした」


 ごめん。やっぱり俺には無理だよ。背後に巨大な何かが見えた気がするもんよ。


「そういえば、さっき作ってた剣。いったいどんなやつなんだ?お前が作ってるってことは、ただのロングソードじゃねえってことだろ?」

「ああ?なんでロングソードだと思ったんだ?」

「いや、構造的にロングソードじゃないのか?」


 ササはドヤ顔をすると、人差し指を左右に降って


「ふふふ、甘い甘い。その考えはこの後頼むデザートより甘いことを約束するぜ」


 なんて、とんでもないことを言ってくる。

 待て、こいつ今なんつった?


「おい!まだ食うのか!?」

「当たり前だろ?肉だけじゃ、なんかもの足りねえよ」

「どんだけ食うんだよ・・・」

「ははは、鍛冶の後は腹が減る」

「くそ、今日の稼ぎが・・・」


 今日稼いだ金のほとんどが持ってかれてしまう。

 なんでこんな脳筋御用達みたいな感じの店にデザートがあるかというと、どうやら食事処として、女性も訪れることがあるため、甘い物も置いてあるんだとか。


「くそ、話戻すぞ‼見た感じロングソードにしか見えないが、どうなんだ?」

「どうなんだと言われても・・・最終的な終着点は別もんだしな。まあ、楽しみにしてろよ。覚えてたら作った後見せてやるから」

「覚えてたらかよ!!」

「よし、デザートだ!」

「俺の話を聞け!!」

「却下♪」


 メチャクチャいい笑顔で断られた。

 殴りたいこの笑顔。


 デザートは荒く砕いたビスケットをコーヒーに漬け込んだものと、チーズ風味のカスタードクリームを3段重ね、その上にチョコパウダーが降りかけられている。

 こういうのってティラミスって言ったっけ?

 ササの目の前にデザートが置かれたところで、一人の女性が慌しく店に駆け込んできた。


「ササさんはいますか!?」

「いるがなんだ?」

「すぐに来てください!」

「・・・内容をしっかり言ってくれ。私はコイツを食わなければならない」

「なんでそんな物を食すのに使命感を!?」

「そんな物だと!」


 女性のそんな物発言にササが怒りを見せ始める。

 ここはちゃんと俺が抑えないとな。とばっちりが俺の方まで来るだろうし。


「とにかく急いで来てください!」

「まあ、落ち着けよ。飯を中断して料理を残したら、この飯屋のおっちゃんに申し訳が無いのと、無駄になっちまうだろ?ほら、ササはほとんど手をつけてないんだから」

「ですが・・・」

「いいからいいから。な?」

「ではなるべく早く「バカなのか!味わって食べなきゃいけないに決まってる!」・・・・・・」

「なんかスマンな」

「・・・いえ」


 俺は女性と一緒になって、ササが幸せそうにティラミスを食べる姿を見ていた。

 ササが半分ほどを食べたところで、ソワソワと身じろぎ始める女性にどうしたか尋ねると、女性も食べたくなったのだとか。

 もう付き合ってられねえよ。

 女性は自分の仕事がまだ残っているとかで、注文を思いとどまった。


 満足そうにお腹を押さえているササに、女性が話しかける。


「あの、そろそろよろしいでしょうか?」

「おう、いいぜ。私は満足だ。このまま寝てえ」

「いや、自由すぎるだろお前」

「束縛されるのは性に合わん」

「じゃなくて!私の話を聞いてください!」

「ああ、早く言ってくれよ」

「きぃぃぃぃ!!」


 ササが横柄な態度で応じると、女性がなにやら奇声を上げた。

 やっぱりストレス溜まるよな。

 今度あったら労ろうと心のメモにそっと記しておいた。


「はぁ、はぁ。失礼。町長より言付を預かってきました」

「あのオッサン面倒なこと言ってくる気じゃねえだろうな」

「ササさん。町長が至急ワシの家に来て欲しいとの事です」

「はあ、メンドイ。却下」


 女性の言った町長の言付を、バッサリと切って捨てると、女性が慌てたように言葉をつなげる。


「ですが、懐かしい出会いがあるとも言っていますし、どうか来ていただけないでしょうか」

「懐かしい出会い?」

「はい、行方不明だったものが見つかったとか」

「しゃあないな。行くか」


 行方不明の言葉を聞いた瞬間、少し反応したササが、町長宅に行くことを決めたみたいだ。

 そのまま会計を済ませると、やや足早になる女性の後をついて行く形で町長宅へと向かう。

 正直行く気があんまり起きない。なんせさっき飯を食い始める前までいた上に、奥さんがバーサク状態だったのだから。


「そういえばさ、町長からの言付って至急来いだったよな?」

「ええ、そうですね」

「なら、なんでもっと早く言わなかったんだ?」

「あなた達のせいでしょうが!!」


 ササが珍しく真っ当なことを言うと、女性がキレた。


「誰のせいだと思ってるんですか!」

「うん?誰だ?」

「おいササ、俺らのせいだよ」

「そうなのか?」

「いい加減にしてください!早く行きますよ。駆け足!」


 女性の気迫に押され、町長宅まで走ることになってしまう。

 途中、体力が無かったのか息切れを起こしてヘロヘロになった女性を、俺が背負って走ることになった。

 それを見て不機嫌になるササ。

 いったい俺にどうしろと言うんだよ。





「町長来たぞ~。くだらない内容だったらブッ飛ばすからな」

「来て一番に言うことがそれかよ・・・」


 町長宅の扉を開けた瞬間に、ササの口から言い放たれた言葉に呆れるしかない。


「よく来たのう。さて、ゆっくり腰かけて話そうかの」

「ゆっくりじゃなくてもいいよ」

「まあまあ、それなりに重要な話じゃから、少し長くなるんじゃよ。それよりも、なんでこんなに来るのが遅くなったんじゃ?」

「いえ・・・それは・・・」

「ああ、そうそう、彼女が必死になって探してくれたんですけどね、俺たちの居場所を特定するのに時間がかかったみたいなんだよ」

「・・・え?」


 キョトンとする女性。

 俺は耳元に口を寄せると小声で、

「いいか、このままだとお互いが不利益になる。これは分かるな?だからここは話を合わせてくれ」

「・・・はい」


 釈然としない顔をしつつも、俺の要請に頷く。


「はい。そ、そうなんですよ。見つけた後は快くついてくることを承諾してくれました」


 話をちゃんと合わせてくれて助かるな。


「そうじゃったのか。てっきり、ワシはササが食事中のところに乗り込んで、無言の重圧で間食するまで待たされ、その後に色々言ってくるササを説得するために、内容を詳しく教え、行方不明という単語に反応したササが、渋々を装ってついて来たとばかり思っておったわい」

「・・・」


 町長やたら鋭すぎじゃないか?

 実はどこかで見張ってたとかありそうで怖いんだが・・・。


「早く用件を言ってくれないか?私もう眠い」

「おお、そうじゃな。おーい、そろそろ入ってきてくれんか?」


 ササの催促すると、どこかへと呼びかけ始める。

 ガチャ、と音を鳴らしながら開いた扉の向こうから、こじんまりとした、ガリガリにやせ細った少女が、小ぎれいな服装で出てきた。

 見た目だけだとササと同じくらいじゃないだろうか。


「あ、お前ササじゃねえか?」


 その少女はササを指で指すと、女の子らしからぬ口調で大声を上げた。

 指で指されたことに苛立ったのか、不愉快そうに顔を歪めるササ。


「人のことを指さしてはいけませんと教わらなかったのかナグサ」

「そんなもん教わる余裕なんてなかったもんでな」

「え?ササの知り合いか?」

「そうだよ。ずっと死んだと思ってたんだが、生きてたのか」


 ・・・状況がまったくつかめないが、とりあえずナグサと呼ばれた少女がササの関係者であることは分かった。


「しかしなぁ、お前いつこんな小さな女の子と仲良くなブッ!」

「あたいを小さな女の子扱いしてるんじゃねえぇぇぇぇ!!」


 ナグサの小さな拳が、俺の腹に吸い込まれていき、痛みで俺は膝をつく。

 HPはほとんど減っていないのに、モンスターに殴られたときより痛いって・・・不思議過ぎてなんとも言えねえよ。

 痛みのあまり、どうでもいいことを考えてしまう。これも人の体が本能で痛みから逃れるための何かなのか?


「あはははははは。子供と間違えられて・・・くくっ」

「笑ってんじゃねえよ!お前だってあたいと大して変わらないじゃねえか!」

「だれがお子様だコラァ!やんのか?お?」

「やってやんにょ・・・」


 なんで俺の周りってこんな女ばっかり集まるんだろう。

 早くアリシアとゆったり穏やかに話したい。この空間から脱出したい。


「ははははは」

「笑ってんじゃねえよ!他人のミスを指差して笑うとか、お子様にもほどがあるな」

「あ゛あ゛!?」

「それ以上の喧嘩は辞めるんじゃ。まったく。おぬしらはいつもいつも・・・。ワシから言わせれば五十歩百歩じゃ!どっちも子供ではないか!」

「「・・・」」


 あ、町長死んだなこれ。

 巻き込まれないように離れておこう。


「おいナグサ」

「ああ、一時休戦だな」

「「(あたい)を子供扱いした愚か者に鉄槌を!!」」


 綺麗に声をハモらせ、町長にゆっくりと接近する。

 ナグサの出てきた扉が開き、町長の奥さんが顔をのぞかせると、親指を立てたサムズアップをしてGOサインを二人に出す。

 奥さんの許可が下りた瞬間に、町長に襲い掛かる二匹の獣達。


「やめるんじゃ!わ、ワシが何をしたというんじゃ!きっとウェイルズだって同じように思っているはずじゃぞ」


 おいこらジジイ。俺を巻き込むんじゃねえよ。

 二人はゆらりと揺れながら振り返り、俺を光のない瞳で見てくる。


「「もちろんお前はそんなこと思ってないよな」」


 威圧感が半端ない。

 無言で首を横に振ることで、自分はそんなことを思っていないという意思を伝える。

 実際のところは思ったが、決して口にしてはいけないのだ。


「思ってるわけ無いだろ。町長が俺も巻き込もうとしてるだけだよ」

「「・・・へー」」


 あれ?信じられてない?


「おいおい、こういうことに関しては信じない方がいいと評判の町長の言葉だぞ?」

「それもそうだな」

「どの道足らなかったらお前も巻き込む気満々だしな」


 本日二回目。全力で町長宅から飛び出し、夜の街を走り抜ける。

 遠ざかる町長宅の開け放たれた扉の奥から町長の悲鳴が聞こえてきたが、このままここにいたら俺まで死ぬかもしれないから、足を止めるなんて愚かなことはしない。

 しかし、家にこのまま帰ったら、間違いなく怒りの収まらないササ達の追撃が来るだろう。

 こうなったら行くところはもう一つしかないな。

 俺は噴水広場へと足を向けた。




「それで、今晩泊めてほしいの?」

「そうなんだ。頼む」


 俺は手を合わせて頭を下げる。

 アリシアは困ったような笑みを浮かべながら、


「別に私は構わないのだけど・・・来客なんて予期してないから、開いてる部屋なんて無いわよ?」

「いや、この家にかくまってくれるだけでいいんだ」

「・・・しょうがないわね。私の部屋に上がっててね。多分ササがここにも探しに来るかもしれないから」

「ありがとう。アリシア」


 礼を言うと、アリシアに伴われて部屋へと入る。

 中は綺麗に整頓されており、窓辺に置かれている花瓶に花が生けられているのが見えるが、それが何の花なのかが分からない。

 机の上になにやら書類のようなものが置かれている。

 俺がその書類を見ていることに気がついたのか、アリシアが回収して戸棚の中に入れる。


「ごめんなさいね。仕事関連の書類だから一応。ね?」

「ああ、急に転がり込んだ身だから文句はまったく無いが、あの生けてある花ってなんて名前なんだ?」

「そんなことが気になってるの?あの花はヘリクリサムって言うのよ」

「そうか」

「それじゃあ、そろそろ時間も遅くなってきたし、お風呂に入っちゃいなさい。ササが来たらちゃんと対処しておくわね」

「すまないな」


 その後アリシアが同じ部屋で寝ようとか言ってきたのを断るということがあったが、結局俺が折れた。

 寝息を立てているアリシアを意識して中々寝付けなかったが、少し眠くなったらあっという間に睡魔に襲われた。

料理の表現がありますが、私は料理できません。

せいぜい野菜炒めじみた何かを作れる程度です。


読んでくださってありがとうございます。

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