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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛四十四回目 

「ちょ、なんだよこの数。勝てるわけねえだろ!!」

「兄貴、逃げるぞ!」


 ベルとグラがどこかへと走り始める。

 どこに逃げると言うのだろう。


 二人を完全に無視して、剣を正眼に構え、森熊(フォレストベアー)と相対すると、一度深く深呼吸して先ほどまで走っていた時の息切れを抑えていく。

 肩の調子は万全とは行かないが、先ほどよりマシにはなった。


 俺が剣を構えると警戒したのか、距離を保ったまま接近をしてこない。

 しかし、どこの集団にも警戒を怠るものはいるようで、一体が無警戒で飛び掛ってきた。

 それを冷めた目で睨むと、攻撃範囲に入った瞬間に、森熊(フォレストベアー)の攻撃をかわしながら攻撃を4度加え、最後に首と胴体を切り離す。

 HPが無くなり、光の粒子となりながら消えていく。



「さて、次はどいつだ?」

 剣を肩に担ぎ、森熊(フォレストベアー)共を睥睨(へいげい)する。

 消えていった仲間を見て警戒をさらに強めたのか、ジリジリと距離を詰めながら、俺の隙をうかがっているみたいだ。

三乃太刀(さんのたち)飛燕(ひえん)真紅線(しんくせん)!!」


 赤い斬線が、先頭にいた2体の胴体に深々と傷をつけるた。

 しかし、HPを削りきるには至らない。

 今の一撃で攻撃を受けた2体が激昂。

 襲い掛かってくる。

 そいつらを切り伏せると、タイミングを合わせたのか、残りの奴らが一斉に接近してくる。

 少し後退しながら、先頭一体のHPを削りきり、続く2体目の腕を切り落とし、3体目の目に剣をつきたてる。

 後続が攻撃を仕掛けてくるのを、丁寧に弾き、捌く。2体同時の攻撃を受けたときに剣が軋む音を出した気がするが、気にしたら負けだと思う。

 上から振り下ろされた爪の一撃を、体を屈めながら衝撃を殺して弾く。

 弾いた後、屈めた体をバネにして目の前の敵を切り上げる。

 そこでHPがなくなったのだろう。光の粒子となって消えていく。


 出来るだけ囲まれないように、止まることなく動き続け、集団から少しでも外れている奴に攻撃を加えていく。

 残り10体。

 殲滅まではそんなに時間のかからないものだと判断できる。

 腕や足を切り離すことで、敵の機動力や攻撃能力を削いでいく。


 いつの間にやら戻ってきている二人が、攻撃能力のなくなった奴らのHPを削り始めた。

 お前ら今までどこにいた。

 てか、完全にこいつら最低な行動をしてんじゃねえか。

 あ、グラの鉈が折れた。

 涙目で必死に後ろに下がっていくのを、ゴミを見るような目で睨み付けるが、森熊(フォレストベアー)から逃げるのに必死で気が付かないみたいだ。

 逆に離れた位置から攻撃を加えていたベルのほうが気が付いた。

 口パクで俺の意思を伝えると、理解したみたいだ。

 青い顔で、壊れた人形のごとく首を縦に振り続けている。

 分かったのならよろしい。


 残りが5体になったところで、今まで集団の中央にいた無傷の奴が、突如飛び出してきた。

 そして、ベルとグラの方へと突進しはじめた。

 油断しきっていたのか、反応が遅れる二人。

 グラの方が近い位置にいたため、森熊(フォレストベアー)に接触。力いっぱい投げたボールのように飛んでいく。


「グラ!!」


 ベルのほうは離れていたため回避を出来たが、まだ動けた森熊(フォレストベアー)の攻撃を受け、助け起こしに行く余裕がまったく無いようだ。

 動けなかったり、攻撃能力が無いのを放置して、グラに追撃を仕掛けるべく、倒れているグラに向けて突進を開始している群れのボスに向けて駆ける。

 ボスからグラまでの距離およそ2メートル。

 俺とボスの距離およそ4メートル

 間に合わない。


 そう判断すると、とっておきを使うことにした。


 鎧の僅かな隙間にしまいこんでいた、柄の尻に、控えめに加工された特技媒体(アビリティカタリスト)がはめ込まれている。

 それを自分の体の前に構え、

五乃太刀(ごのたち)燕雀(えんじゃく)殺華点(さっかてん)!」


 視界が一瞬歪む。

 視界の歪みが収まると、目の前にボスの姿。

 ちらりと自分のHPを確認すると、特技発動前よりも3割ほど削れている。

 それに伴い、体の節々が痛みを発している。


 ボスに視線を戻すと、首筋に赤い小さなマーカーが表示されている。

 ボスの動きがスローモーションに見える中、ダガーをマーカーに向けて突き出した。

 正確にマーカーが示す場所に当たるダガー。

 当たった瞬間に、内側から小さく膨張。そこから光の粒子を大量に噴き上げ始め、ボスのHPがすごい速さで0へと近づいていく。

 ボスは突進を止めると、苦しそうに、半狂乱になりながらその場所で腕を振り回して暴れ、離れていくウェイルズを攻撃しようとしている。

 しかし、その目は濁り、何も見えていない。

 自分の嗅覚のみで追いかけているのだろう。

 もちろんそんな攻撃に当たるわけもなく、少しすると倒れこみ、動かなくなる。そして、光をまき散らしながら消滅していった。

 ウェイルズはそれを見届けると、残りを始末するべく動き始める。全滅させるのにそう時間はかからなかった。



 ●



 全部倒し終わると、まずはドロップ品の確認を行い、いいものがなかったことに落ち込み、グラが全く動かないということで、ベルに高品質の回復薬を渡す羽目になって、余計な出費に涙する。


「いやあ、助かったよ」

「うん。それは分かった。御代をよこせ」

「これ以上何かを搾取するというのか!俺たちには金がない。よって体で支払うことしか」

「お前ちょっと黙れ」


 グラは一命は取り留めたがいまだに目を覚まさない。

 ・・・振りをしているのがバレバレだ。

 なんせチラチラと薄目でこちらを見ている。

 うっかりを装い、笑顔で腹を踏むと、カエルが馬車に引かれた時のような声を上げて起き上がるも、そっと差し出した俺の膝に自分から顔を突っ込み、再び仰向けになって倒れこむ。


「な、何をするんだ!!」

「ん?じゃあ俺に何で目を覚まさない振りをしてたか言ってみ」

「振りなんかじゃねえよ!!」

「ほほう。薄目でこちらを伺っていた理由を教えてもらえるかな?」

「俺は本当に寝てたって!!なんで笑顔で踏まれなきゃいけないんだ!!」

「お前よく踏まれて飛び起きたのに、俺の表情を確認する余裕あったな」


 グラの言い訳に、呆れ顔になるしかない。


「起きたら周囲を確認するのは当たり前だろ!!」

「お前はどこぞの戦闘民族だよ」


 確かどこぞの、モンスターに襲われても簡単に撃退するような戦闘民族が住んでいる村があったはずだ。

 話が逸れたな。


「そうなんすよ。俺はその戦闘民族を参考にしてるんすよ」

「へえ、じゃあその村の名前は?」

「・・・」


 黙りこむグラ。それを心配そうな。しかし、どこかで呆れ、可哀相なものを見るような目で見ているベル。

 そこには保身しかなく、兄弟愛は一切無かった。


「言いたくないならね、別にいいんだよ」


 そう呟くと、聞こえたのか、表情を明るくするグラ。

 だが、直後に俺の言葉で顔は青ざめることだろう。


「元々お前ら二人は私刑だからな」


 最近俺の中で一番の笑顔でそう言い切ってやった。


 予想通り。

 顔を青白く染め、お互いを抱き合う男の図が完成。

 すばらしいほど吐き気を催す作品となっている。

 予想通りとはいえ、精神的にツライものがあるため、早速作業に取り掛かる事にするとしよう。


 手始めに、二人が逃げられないように縛り上げて、巨木にロープを引っ掛けて吊り上げる。

 宙にぶら下がっている二人を見て満足すると、下にアリシアから貰ったものの、使い道を発見できなかった剣山を複数置いていく。

 ロープは意外と頑丈で耐久値も高いのを理解しているのか、余裕の表情に二人。

 そんな二人が気に食わない俺は、ロープに少し切れ目を入れて、暴れたら落ちて剣山が突き刺さるな。と脅してやった。

 とたんに泣き出しそうな顔に変わるのを見て、溜飲を下げることに成功した。


 しばらく会話という名の恐喝行動にいそしんでいると、人が近づく気配がする。

 僅かに聞こえる声からして、おそらく三人ほど。

 人の声が聞こえるということは、こいつらはここに放置してもいいことになるな。


「じゃあな。また会う機会があったら合おうぜ。まあ、そんな機会は無いだろうがな」

「待て、このまま吊るして行く気か!?」

「何でそんなに爽やかな顔で惨酷なことが出来るんだよ!!」


 だって、そんなの。そんなの決まってるじゃないか!!


「色々ムカつくことをしてきたお前らの不幸で飯が旨い!!」

「このクズ!!」

「兄貴はいいから、せめて俺だけは降ろしてくれ!」

「てめえ、グラこの野郎!!」

「いいのか?俺が降ろすとしたら、そのロープを遠慮なく切るスタイルだが」

「鬼畜!!鬼!!クソ野郎!!」

「ははは。よかったな。今俺はお前らの不幸で機嫌がいい」


 頑張って脱出してもらおうじゃないか。


「陰険!ゴミ!禿!イケメンもどき!変態!ホモ!」

「ははは。よし、お前らのロープ切るな」


 こいつらは殺しておこう。


「バカグラ!!言いすぎだ!!今すぐ謝れ」

「俺は悪くない!間違ってない!」

「ほら、恐ろしい笑顔になっているじゃないか!!」

「俺は屈しない!暴力なんかに屈しないぞ!」


 二人のロープに切れ込みを増やすと、俺はその場を離脱。帰途へとつく。

 なにやら背後がうるさいが、接近中の人間に助けてもらうこったな。



 声が聞こえる方を迂回するようにして森から出ると、すでに日は沈みかけ、夕闇が広がりつつあった。

 草原をゆっくり歩いて街へと近づく。

 今はモンスターが攻めてくることもなさそうなので門は全開だ。


「ああ、穏やかだ」


 俺は、このどこか時間がゆっくりになったかのような、穏やかな気分になれる感覚を楽しみながら歩く。

 どうせすぐに騒がしくなる。

 それまではこの感覚を楽しもうじゃないか。

 門の近くで、スライムと戦う初心者冒険者を見かけたが、どこぞの赤髪のようにバカな真似をしているわけでもなく、危なげなく処理している。

 そういえば、子供のころはスライムですらも強大な、恐ろしいモンスターに見えたものだ。

 そんな、懐かしいような気分に浸りながら、門を潜って町に入っていった。



「よくぞ戻ってきたぁぁぁぁぁ!!」

「うるせえ!」


 扉を開けた瞬間に、半裸でとびかかってきた醜悪な老人を、反射的に殴ってしまった。反省はしている。後悔はしていない。


「何するんじゃ!!いきなり殴ることないじゃろうが!」

「だったら、いきなりとびかかってくるんじゃねえよ!」

「だって入ってきたのが可愛い女の子だったらどうするんじゃ!!」

「犯罪だ!」


 町長とギャアギャア言い合っていると、


「すいません。スライムの討伐をしてきました~」


 そう言って、先ほど門の近くで見かけた、初心者冒険者が入ってきた。

 あの時は暗くてよくわからなかったが、可愛らしい少女だ。


「ふぉぉぅぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「キャァァァァァァァァァァ!!」


 そんな少女に、一瞬でふんどし一丁になった町長が襲い掛かった。

 涙目で逃げる少女。

 手をわきわきさせながら追跡する町長。

 音も無く町長の背後に回り、絞め落とす奥さん。そしてそのまま流れるように綺麗なバックドロップを決める。

 ガクガクと痙攣し始める町長を尻目に、少女に謝る奥さん。


 ポカンとする少女に、今後はアリシアの店でクエストを受けることを進めると、町長が復活する前に外に送り出した。

 奥さん経由で報酬を受け取ろうとしたが、その間に町長の復活の前兆が見えた。

 そんな町長に接近した奥さんは、おもむろにかかと落しをお見舞いする。

 町長のふんどしが覆っている、男なら誰もが持つ急所に・・・。


 当たる直前に、室内にいた男は皆自分の目を塞ぎ、耳を手で覆う。

 しかし、それでも町長の悲痛な叫びが木霊す。

 絶叫が止み、恐る恐る目を開き、耳から手をどかすと、頭を床にめり込ませた町長が直立不動の体勢で痙攣していた。

 男は皆自分のを庇うように手を置き、小刻みに震える。

 俺は奥さんから報酬を手早く貰うと、すぐさま町長宅から脱出する。

 あんな恐ろしいものを見て、あの場に留まれるほど、俺のメンタルは強くない。


 背後を振り返ることも無く必死に走っていたが、工房が近づいてきたので、速度を落として入り口の横で立ち止まる。

 一息つくと、中に入ってササを探す。

 ササはすぐに見つかった。

 真剣な顔で槌を振るい、剣を鍛えているところであった。


 しばらくそれを眺めていると、作業が一区切りしたのか、道具を片付け始める。

 作っている剣は、刃渡り1メートルほどある両刃の直剣。たぶん分類的にはロングソードかな?

 ササが作っているということは、ただのロングソードじゃなさそうだな。


「なんだ。わざわざそっちから出向いてきたのか。順調に主従関係ができているようで」

「俺とお前に主従関係ってあったっけ!?」

「私主人。お前下僕」

「ふざけんな!!」

「そんなことはどうでもいいから、飯食いに行こうぜ。前から行きたいところがあるんだ」


 ササに、俺の文句をどうでもいいの一言で一蹴され、楽しそうに笑うササに手を引かれて行く。

 その笑顔を見て、あふれ出る文句を言う気が失せた。

はたしてあの兄弟に今後出番はあるのだろうか・・・。


ウェイルズ君の使った技は、急所攻撃ですね。

外したら何もおきません。HPが無駄に消費されるだけです。


技名には触れないでください。(真剣)

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