防衛四十一回目
忙しすぎて書く暇があんまりない orz
朝日が眩しい。太陽が真ッ黄色に見える。おかしいな。俺の目はとうとうイカれてしまったのか?
きっと俺は酷い顔をしているのだろう。道行く人が若干俺を避けて歩いてる気がする。
「あら?ウェイルズじゃない。って、酷い顔をしてるじゃない。どうしたのよ」
偶然遭遇したアリシアから心配そうな声をかけられた。アリシアがそうやって指摘してくるということは、思っていた以上に酷い顔をしているのかもしれない。
「ああ、昨日ちょっとな・・・。心配されるほどじゃねえから安心しろよ」
「そう?それならいいんだけど・・・やっぱり少し休みなさい。親方さんにはそう伝えておくから。ね?」
「ああ、正直助かる」
「代わりに後で私の店に来てね。頼みたいことがあるから」
「え?あ、ああ」
うん?アリシアにいいように使われる約束をしただけみたいになっているけど、きっと気のせいだな。アリシアは俺を心配してくれているはず。
首を傾げながら家路へと足を向け、ゆっくり歩く。
とにかく今はゆっくりと休もう。
うん、おかしいな。
なんで起床して扉を開いたら俺の方に木材が倒れてきたんだ?ツイてなさすぎだろ。倒れてきた材木にはご丁寧に紐が巻きつけられており、俺が扉を開けたら倒れこんでくるようになっていた。
しかし、ファルフラムの森の巨木すら支えることのできる俺の筋力をなめきっているとしか思えない。
難なくそのアホみたいなトラップを力技で壊すと、アリシアの家へと向かう。
どうせあんな稚拙なトラップを仕掛けるやつは、頭の悪いガキぐらいだろ。それに万一俺に悪意を持つ者の仕業だとしても、問題は一切無い。返り討ちにしてしまえばいいのだから。
俺は歩きながらそう判断する。
「アリシア、来たぞー」
「ちょっと待ってて。すぐ行くから」
奥の方からアリシアのそんな声が聞こえる。
「手伝うか?」
「大丈夫よ。だから待ってて」
手伝おうとしたけど止められてしまった。しょうがないから、店に置いてある花を観察していく。視界の端にウワバミ草が映るが、確かに花の香りにまぎれて、かすかなアルコール臭がする。
きっと残っているのはサンプルだろう。残さざるをえないからこうしてまだあるのだろう。決してまだ何かに使うためではないと信じよう。
「お待たせ。悪いわね。こっちが呼んでるのに待たせちゃって」
「いや、こっちの都合のいいタイミングで来たんだ。待つぐらい当たり前だろ。むしろそっちの都合が悪いタイミングで来て悪かったな」
俺がそう謝ると、アリシアは両手を振りながら、気にしなくてもいいよ、と言ってくる。
「それじゃあ、早速ウェイルズにやってもらいたいことを言うわね」
「俺にやってもらいたいと言うことは何なんだ?俺に頼むということは敵が強いのか?」
「そんなに心配そうな表情しなくても大丈夫よ、あなたを強敵と戦わせるなんてマネはしないから」
「俺が心配しているのはそこじゃないんだが・・・」
「そうね、今回は町長経由じゃないのよ。直接持ち込まれたものなのよ」
あれ?俺のぼやきはスルー?って、
「ちょっと待て、直接だと?確か一度町長の所に回すんじゃなかったのか?そうしてから、お前みたいに委託してくれてるところに回ってくるんだろ?だから冒険者に安定した報酬を渡すことができる。じゃなかったか?」
「そうよ。でもね、どうしても欲しいものがあるけど、町長のところで弾かれちゃったり、今すぐ欲しい。そんな人が持ち込んでくるのよ。最初は断ってたんだけどね・・・」
アリシアは俺から視線を外すと、気まずそうな表情で続ける。
「実際に私がすぐ必要になったものを必要なものの回収依頼として町長のところに出したの。けど、結局それは間に合わないで、それからしばらくしてから、依頼したものが届いたの。もちろん手遅れな上に、報酬だけを払わされたわ」
「それは・・・間に合わなかったほうはともかく、報酬を払うハメになったのって、依頼を取り下げなかった自業自得じゃ・・・」
「と・に・か・く、そんな経験をしてから私は、強く頼まれたらそういった依頼も受けて、優先的に回すことにしたの!」
アリシアが手をブンブンと振り回しながら俺に接近してくる。正直見ているだけで何か癒される気がする。こういうのって小さい子供がやってる方が癒される気がするし、それ以外がやると、とたんにドン引きするレベルに昇華される。
しかし、俺がアリシアのことを好きだから、よい方向に解釈するフィルターがかかっているからなのか、可愛らしく見える。うん。無理やり冷静になってみると、少しあざといような・・・可愛い。あれ?思考誘導?とりあえず無表情を維持しなければ。そのために会話だ。とにかく会話だ!!
「何でキレるんだよ。分かった。分かったからそんなに手を振り回すな。お前の商品に当たったら危ないだろ」
「・・・今分かったって?」
「ああ、言ったが、それが何か?」
「言質はとったわ。それじゃあ早速お願いするわね」
「え?意味がちが――」
「そうね。それじゃあ、あなたに頼みたいのは、とある素材を集めてもらいたいの」
こちらの話を聞かないアリシア曰く、素材名は【人蜘蛛の糸】。工房にいるギンという裁縫師が求めているらしい。
町長のところに回してみたら?というアリシアの言葉に、
「すまないが、今すぐ必要なのだ。今日装備の受け渡しを約束した冒険者の装備に必要なのを、仕上げに入ろうかという段階で思い出したんだよ」
と言って笑っていたらしい。しかも期限は大分差し迫っている。今から持って行った所でギリギリ間に合うレベルだ。
「それで、いろんなアイテムを持ってるウェイルズだったら持ってるんじゃないかな?って思って・・・」
確かに持っている。自分の装備をレベルアップさせるために持っている。これを渡してしまうと、また取りに行かなければならない。それは非常に面倒だ。俺はもう一回取りに行くめんどくささと、この場で断った際のデメリットを天秤にかける。
確かにアリシアのお願いを断るのに心苦しさがあるが、ここでOKと返してしまうと、今後こういう依頼は俺のところに回されて貴重なアイテムを渡すハメになってしまう。だったら・・・。
しょうがない。ここは心を鬼にして断るしかないな。
「すまないが、この依頼は受けられ――」
俺は見てしまった。涙目になっているアリシアの姿を。
「・・・分かったよ。その依頼受けるよ」
『お使いクエスト【おっちょこちょいな裁縫師】を受理しました』
「ありがとうウェイルズ」
アリシアの顔に華やかな笑顔が浮かぶ。あれ?俺騙された?いやいや、そうやって邪推することはよくないよ。きっと俺が受けたから嬉しそうにしているだけだ。こういうのって信頼が大事だからな。向こうもダメ元だと思うんだけどな・・・。
「それで、ギンはとか言う奴はどこにいるんだ?」
「ギンさんなら工房にいるはずよ。でもあったら少しは警戒してね。少し特殊な趣味の人だから」
「特殊な趣味?」
「あー、そこは会えば分かるかな?」
再び視線をそらされる。しかし、今のやり取りですごい不安になってきた。今からでも依頼を放棄できないものか・・・。
そんなこちらの心情を理解しているのかしていないのか分からないが、平然と話を続けるアリシア。何時の間にこんな子に育ってしまったのだろうか。
「終わったら町長のところに行ってね。私からの依頼が町長のところにあるはずだから。もちろん内容は正規のアラクネの糸の調達よ。報酬は少しの金銭と、取って来たアラクネの糸を少しといったところね」
アリシアがやりたい放題の子に育っています。これも全部町長のせいだ。そう言うことにしておこう。そりゃあ、あんな奇抜な行動を毎日見てたらそうなるな。私的な内容の依頼なんて、町長からもたまに受けるしな。問題は無いだろう。
俺はため息を吐きつつ、アリシアに行ってくると言って、花屋を後にする。
ドボーン
何かが水に落ちる音がしたため、反射的にそちらを見ると、噴水に誰かが転落したみたいで、バシャバシャと水しぶきを上げながらもがいている。そして、なぜかそれを見ながら笑うハーフアップの女性が一際異彩をを放っている。正直関わりあいたくない。
水中でもがいていた奴が、噴水の縁を掴み、一気にその体を持ち上げて噴水の中から出てくる。出てきた奴が、どこかで見たことのある赤髪の冒険者。ぶっちゃけヤマトだった。
俺はハーフアップの女性――おそらく冒険者――にがなりたてているヤマトを確認すると、背を向けてその場を立ち去る。
ご愁傷様。
しかし、やっぱり冒険者にはろくな奴いないな。昨日のアルベルトとかいう冒険者しかり、烈風騎士団の団長しかり、あのハーフアップの女性冒険者など、人間としてちょっとクソな部類だと思う。
なんでアリシアはあんなの共と仲良くなれと言ってくるんだろう。
そもそも、今までのリセットされる前の世界で、アリシアが今回のような依頼を用意したことってあったか?確か無いはずだぞ?
それに、今回は色々とおかしいところがありすぎる。ヘイストリムの町の壊滅だってそうだ。始めの方はモンスターの統率は一切取れていなかったはず。
この町に攻めてきたモンスターの中にキングゴブリンがいた事も腑に落ちない。リセットされた後のこの時期は、出てきてもゴブリン将軍が集団のトップであったはずだ。
リセットが起こるたびに少しずつ歪んでいるのか?
こういった考察が苦手な俺にはなんとも言えない。
そういえば、奥でアリシアは何をしていたのだろうか。リセットされる前も含めると、アリシアの方から呼び出して、俺を待たせたことはほとんどなかった。むしろ、入ると同時に店の奥から顔をのぞかせていた。それが今回はそれなりの時間待たされた。そのうえ、泣きまねなどという小技まで持ち込んできた。まあ、あれはあれで良かったから、できればもう一回やってもらいたい。
そんなことを考えているうちに工房を素通りしてしまっていた。
慌てて今来た道を引き返していると、どこかで見たような、噛ませ犬にピッタリな男と、苦労が絶えなさそうな男の二人組み。
「ウェイルズ!勝負だ!」
「レベル差を考えてください。今のダグロじゃ、ウェイルズさんが足だけで戦ってきたとしても絶対に勝てませんよ」
おかしいな。顔を合わせないように歩いてたのに一発でばれたぞ。
「悪いな。今急いでるから、そういうのは3年後ぐらいにしてくれ」
「大丈夫だ。速攻で俺がお前を打ちのめして勝ってやるからよ。時間は取らねえぜ」
「ダグロ、お前のその自身はどこから出てくるんですか?正直そこまでいったら哀れみしか湧きませんよ」
「うるせえよ!!」
ああ、今日もフォックスの苦労性は絶好調みたいだな。
「そもそも、いきなり勝負を仕掛けてくるなんて非常識もいいところじゃねえか?冒険者って皆こうなのか?」
「すいません。ダグロが特別バカなだけなんです。だから、気分を害したのなら今すぐダグロを黙らせます」
そう言ってダグロの頭をバシバシと叩く。ダグロがそれを不快そうに跳ね除けるが、フォックスは止めようとしない。しょうがない。最近のフラストレーション解消の生贄になってもらうか。時間もそんなにかからないだろうしピッタリだ。
「いや、ちょうどいい。少しだけ付き合ってやるよ」
「おし、そうこなきゃな」
『プレイヤー:ダグロからNPC:ウェイルズにHP半損決闘が申し込まれました』
YES/NO
俺は当然のようにYESを選択。腰に刷いた剣を抜いて構える。
「なんだ?大剣から変えたのか?」
「・・・」
こっちが気にしていることを!!
自分の中に湧いた怒りや、今までため込んだフラストレーションを一気に解放できるように力をため込む。
カウントが0になる。
一息で相手の懐に飛び込んだ俺は、剣を抜きざまにダグロを深々と切り付け、その場から離脱。
周囲を飛び回りながら、全身を切りまくる。
驚いたダグロの表情が見えたが、おそらく俺がこの前まで大剣を使っていたから、それに対抗するための装備で来たのだろう。俺の速度にまったく対応できていない。
結果だけ告げると、ダグロは光の粒子となって消えました。
正直あそこまでHPが急激に減るとは思ってなかった。
HPが半分を切ったところで、攻撃を止めたんだが、今まで与えた累積ダメージが発生。残っていたHPを全部持って行ってしまった。
一応決闘だったため、アイテムを落としはしなかったが、フォックスが、
「ありがとうございます。あのバカにはいい薬になったでしょう」
と言ってきたときには驚いた。お前ら友達じゃねえの?
けど、俺はこの時まだ気がついていなかった。
この後、恐怖、これ以上の驚愕。さらには男としての尊厳が大変なことになるとは思いもしてなかった。そりゃあ、俺は未来が見れるわけじゃないから分かるわけもない。けど、これだけは言わせて欲しい。
工房って本当に変人の魔窟なんだな・・・。
次回は名前の出ているあいつの登場です。ウェイルズ君が自分の尊厳を守れるかどうかは、私の気分とさじ加減一つで決定しますね。
・・・どうしてくれよう(悪い笑顔)




