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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
34/84

防衛三十三回目

 はあ、もう過ぎたことをグチグチ言ってても仕方がない。気持ちを新たにするしかないんだ。


「じゃあ、装備と廃坑探索に必要なものを揃えに行こうよ。僕も強化のために預けてた装備を取りに行きたいし」

「え?今のお前のその格好が本来の装備じゃねえの?」

「そんなわけないじゃないか」


 ちなみに今まで触れてこなかったけど、僕の装備は本来の装備じゃない。別に説明を忘れてたわけじゃない。

 装備を全部外すと、簡単な服に身を包まれている状態になってしまう。そして、その状態の服装を、町にある服屋で変更することが可能である。そのため、今の僕の格好は、リアルでも着るような普通過ぎるラフな格好だ。けど、ものの見事に顔との調和が取れておらず、相変らず可哀想な感じになっていた。しかし鏡を見たわけではないので、本人はそれに気がついてはいない。


「じゃあとっとと取りに行ってヤマトの完全形を見せてもらうとするか」

「マドイさんも武器のメンテナンス頼んでたよね?」

「ん」


 僕の質問にマドイさんはうなずく。ようやく話しかけたときに返事が来るようになった。

 僕達はしばらく歩いて工房へとたどり着く。熱した鉄を叩く音、木材などの素材を削ったり打ち付ける音、職人の声と熱気が満ちた空間へと足を踏み出すと、何人かの職人がこちらを見るが、一部はすぐに視線を外し、残りの職人達は注視してくる。

 僕とマドイさんはもう自分を担当してくれる職人さんを見つけ出しているから、きっとケイや姉さんを新しい自分の顧客にしようとしているのだろう。


「じゃあ、用が終わったらここに集合で。姉さん達もいろいろな職人さんと話してみるといいと思うよ」

「うん?ここで装備を買って行くのか?」

「買う場所は違うよ?運がよければ掘り出し物が見つかるかもしれない店に行くんだ。まあ、やってるかどうかは分からないんだけどね」

「おい」

「その場合は二度手間になるけど工房に戻ってこよう」

「はぁ、しょうがないからさっさと済ませてくれよ」


 僕は工房の奥の方に陣取り、木を削っている青年の方へと近づいていく。青年は少し木を削っては様々な角度から見直して、再び削るという行動を繰り返している。


「すいませーん」


 僕が声をかけると、手を休めて僕を見上げる。この青年こそが僕の杖の強化を受け持ってくれたNPCのサイガンである。


「杖の強化できましたか?」

「ああ、ちょっと待っててくれ」

 青年はそう言うと指を虚空で動かし始め、一本の杖を取り出す。僕はそれを受け取り、握り心地と重さを確かめるために、軽く振ってみる

「魔法の威力でも確かめていくか?」

「え?いいんですか?」

「まあ、的のただじゃないから別料金だけどな」

「・・・だ、大丈夫です。MOBで確かめるので」

「MOB?ああ、モンスターのことだっけ?けど、それだと正確な数値は出ないんだけどな」


 結局僕は折れて、的に向かって何回か魔法を唱えるハメとなった。たたき出された数値に満足がいったのか、サイガンはメモ帳にものすごい勢いで何かを書き込んでいっている。


「OK渡された金額で出来た強化の割には、なかなかいい感じに仕上がったな。俺は満足だ」

「そうなんですか?ってアレでもまだ足りないぐらいだったんですか!?」

「そりゃそうだよ。素材までこっち持ちだったんだから当たり前だろ?それに、その杖って意外とレアなものなんだぜ」

 え?そうだったの?じゃあ、あの露店の兄ちゃんって意外と損してるんじゃ・・・。


「それで?まだ何かあるか?」

「いや、今のところないけど」

「じゃあな、次もその杖のメンテナンスは任せとけ」


 そう言ってサイガンは自分の作業に戻っていった。

 さて、次は防具の方か。僕は防具の強化を頼んだ人を探す。この工房のエントランスホールにいないということは、きっとどこかの部屋の中にいるということだろう。僕は工房の隅に設置されている階段を下ると、両脇に扉がついている通路が延びている。僕はそれにかかっているプレートを確認しながら歩いていく。すると、目当ての部屋を見つけたからノックをして入る。中で展開されていた光景を見た瞬間に僕は固まってしまった


 中はおよそ4畳ほどの狭い部屋の中で、奥の壁にくっつけるように机が置いてあり、その上にはさまざまな種類の糸や針が綺麗に整理整頓されて置いてある。そして、左右の壁沿いにそれぞれアイテムボックスが鎮座しており、上には何かの動物の皮や布が山盛りになって置いてある。それはまだいい。


 部屋の中央になぜか今も装備を剥ぎ取られて、その下に来ていた服まで脱がされかけている男性プレイヤーと、

「よいではないか。よいではないか。そのすばらしき肉体をボクに見せておくれ」

 なんてトチ狂ったとしか思えないことを口走っている、男物のスーツをキッチリと着込み、顔面偏差値がとんでもなく高い人物。


「ちょ、止めて下さい本当にあ、やめ」

「ほらほら、脱がなきゃ採寸が出来ないぞ?このボクに服を作ってもらいたいんじゃなかったのか?うん?ホラホラホラホラ」

「ギャァァァァァァァァァァ!!」


 目の前で綺麗にすばやく男が脱がされていく光景を見せ付けられている僕は、部屋を退室した。うんうん、僕自身も通った道だからよく分かるよ。本当にあれはどうにかならないものかね?

 待つことおよそ10分扉が開き、中からうなだれ、もうお婿にいけない。もうお婿にいけない。もうお婿にいけない。と、壊れたおもちゃのようにブツブツ呟きながら出てきて、僕が立っていることに気がつかないで、そのまま横を通って行ってしまった。


 僕が再びノックして中に入ると部屋には恍惚とした表情のイケメンが机に腰掛けている。

「ねえ、人の趣味にどうこう言うつもりはないんだけどさ、もう少しどうにかならないの?」

「やあ、ヤマト君来たね。装備はもう完成しているよ。それと、ボクは自分の欲求をどうやったら埋められるかを必死に考えた結果が、今の職業なんだよ」

「筋金入りだった!?」

「ふふふ、それにねボクはこの格好で人を脱がす方が、様々な反応を見れて楽しいのさ」

「せめてここみたいな個室でお願いします」

「前回君にものすごい勢いで泣きつかれたから、さっきまでいた冒険者はちゃんとここに連れ込んでからやったよ?」


 そう、僕がこの人に強化と修復を依頼したとき、採寸を取ると言って、あろう事かエントランスホールで僕の服をひん剥き始めたのだ。もちろん周囲に人はたくさんいるし、マドイさんも見ている前でだ。

 そのため、僕もさっきの人みたいにうつろな目でうなだれていた。きっとササのあの言葉がなければそのままゲームからログアウト。以後絶対にプレイしなかっただろう。それゆえ覚えた疑問をためしにぶつけてみる。


「脱がすときに相手の裸見て恥ずかしいとかないの?」

「恥ずかしい?バカ言っちゃいけないよ。ボクは脱がした人が恥ずかしがったりする反応を楽しんで興奮しているのさ。それにだね。たとえ痩せていようが太っていようが、必ずどこかにその人特有のオンリーワンな肉体美が存在しているものさ。ボクはそれを探すのも楽しみの一つさ。ということで、ボクに君の服を脱がさせてくれ」


 目をキラキラさせながら質問にとんでもない切り返しを放ってきた。

「嫌ですよ。早く僕の装備を渡してください!それにあんたは女性なんだから!」

「・・・はぁ、ササもツマンナイ事しちゃうよね。せっかくボクが男装してまで相手の反応を楽しんでいるというのに。まあ、別に知られても、それはそれで少し楽しめるからいいんだけどね。はぁ、しょうがないか。ハイ。君の装備だよ。今すぐ装備をして感触を確かめてみてくれるかい?できれば一度全部脱いでから」

「装備はしますけど脱ぎません」


 彼女から渡された装備一式を改めて装備してみると、見た目に変化はほとんどないが、細かな調整、性能アップなどがされていてものすごく動きやすくなっている。唯一の変化である【黒魔のローブ】に織り込まれている魔方陣が僅かに複雑になっているぐらいだが、それもカッコよくなっている。


「違和感とかはないかい?あれば今すぐここで直すけど。もちろんボクが脱がせて上げるよ。違和感あるよね?むしろあると言ってくれ」

「いや、違和感は特にないですよ。前よりも動きやすくなっていますし。性能も上がってるみたいです」

「なんだ、違和感はないか・・・それより性能の方は渡された料金で出来るだけのことをやっただけだよ」

「うん。ありがとう。すごくいい感じだよ」

「じゃあ今後もごひいきに」


 そう言うとまだ仕事があるのか、机に向かい、布などの装備作成のための道具を揃えていく。

 流石にこれ以上ここにいるのは邪魔だと思い、部屋からでる。出た際に扉に掛けられている表札を見てみると、


『ギン』


 ・・・本名はギンサだった気がする。とりあえずそれを頭の中からどかすと、大分時間がたっているのに気がつき、慌てて集合場所へ向かう。

 エントランスホールに出ると、なぜか一角に人が集まっている。不思議には思ったが、きっと新規プレイヤーを自分の顧客にしようとしているのだろう。

 さて、集合場所に来たけど、誰もいない。おかしいな。僕のことおいて行ったのかな?でもフレンドの位置で見てみると、ちゃんとこの工房内にいるみたいである。


「ああ、いたいた。ちょっと来てくれないか?」

「ササ?どうかしたんですか?」

「ああ、ちょっとな・・・まあとにかく来てくれ」


 僕はササさんの後について行って、人の集まっている所に行くと、中心にケイと姉さんが職人らしき男と何事かを話し合っている。うん。この時点ですでに嫌な予感しかしないね。これだけ嫌な予感しかしないことも珍しいや。

 そして、予想通りにササに連れられてその人混みの中心へと行く。


「ああ、ヤマト来たわね」

「うん。今度は何をやらかしたの姉さん」

「実はね、お金を貸してほしいの」

「却下。そんな弟にたかるダメ人間に育っているとは、母さんも予想外だと思うよ」

「これはたかってるんじゃないのよ。ちなみにこのままヤマトがお金を貸してくれなかったら・・・」


 ケイと姉さんがふいに視線を別の一点へと向けたので、つられてそちらを見ると、自警団なのだろう。どこかで見たことあるようなおっちゃんが、迫力のある笑みを浮かべてながら睨んでくるという、とても器用なことをしている。う~ん、これは自業自得かな?


「烏丸、姉さん。何をしたのかは知らないけど、ちゃんと自分の罪は償ってね」

 そう言ってその場を後にしようとするが、後から思い返してみると、ケイと姉さんはこのことを予測していたのだろう。綺麗に声を合わせて、

「いいのかヤマト!!」「このままだとヤマトの黒歴史を大声で暴露」「その上先日の頼みごとの実態までばらしちまうぜ!!」「それでもいいの?いいなら私達を見捨てなさい」

 こんなチャチな脅しに僕は屈しない、屈しないんだからなぁぁぁぁ!!



 ・・・土下座している僕の姿があります。何ででしょうか。ああ、結局僕は屈してしまったのか。お金を巻き上げられた上に、土下座までするハメになってしまうとは。

 こんなところをマドイさんに見られたら、僕はこのゲームを止めるかもしれない。それどころかリアルで話せる友人を失うことになってしまう!


「そうね、そろそろ立ってもいいわよ」

 僕は涙目になりながらゆっくりと立ち上がる。ケイの方は悪いことをしたという自覚があるみたいで、僕に両手を合わせて謝ってくるが、姉さんの方は完全にスルーだ。姉さんは本当に風紀委員長なのだろうか。僕には疑問しか湧かない。


「ごめん。私が最後」

 マドイさんも戻ってきた。幸い僕のあの土下座シーンは目撃されていないみたいで、助かった。

「マドイさんは何を買ってきたの?」

「防具の強化と薬系アイテム。強化は後払いだった」

「へえ、そうなんだ。それで何か面白いものでもあったの?」


 マドイさんは無言でうなずくと、指を走らせて空中からアイテムを取り出す。そのアイテムは、試験管のようなものに錠剤が詰まっている不思議な物であった。


「これは何の効果を持ってるの?」

「内緒。でもこれだけは言う。試作品らしい」

「試作品?じゃあ副作用とかあるのかな」

「内緒」

「え?でも」

「内緒」

「だかr」

「内緒」

「・・・」

「ごめんなさい。でも内緒」


 どうしても言いたくないみたいです。


「二人の装備が立派になってる。初期だとそんなにお金ないはず」

「実はね、ヤマトがお金を出してくれたのよ」

「そうなの?」


 マドイさんがこちらを見てくる。実は巻き上げられました。そう言ったら、その場で何があったのかを全部言わなくてはならなくなってしまう。そんなことになったら、僕が土下座をしたことも言わなくてはならなくなってしまう。しょうがない。


「実はそうなんだ。ほら、これから廃坑に行くのに二人の装備じゃ心もとないでしょ」

「確かに・・・ランタンは買った?」

「ランタンって・・・あの自分の周囲を照らす道具だよな?」

「廃坑探索だけじゃなくて、洞窟探索にも必要」

「・・・僕お金もうほとんどないよ」

「同じく」

「右に同じく」

「私もほとんどなくなっちゃったわね」


「「「・・・・・・」」」


 あれ?これどうするの?

 今回から目指せ5000文字でやっているため、急に伸びていると思います。


 スイマセン。嘘です。実は二人の職人のくだりが長くなりすぎ、ヤマト君の懐事情が厳しくなったところまで出来そうになかったからです。

 え?ホモ表現がある?いやいや、私がそんな表現入れるわけないじゃないですか(目逸らし)

 あれは、そう、男装女子です。中でサラシを撒いているだけなんです実際は女性なんです!!


 さて、今回もお楽しみいただけレナ幸いです。

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