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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛三十回目

 パソコンが大量に置かれた部屋の隣りに設置されているガラス張りの会議室の中には、白衣を着た人間や、メガネをかけた、目の下に濃い隈を作った人間が座って何事かを話し合っている。

 その会議室に置いてあるホワイトボードには『コンピューターの自我の精神限界』と汚い字で書かれている。


「さて、何か案はあるかね?」

「次のイベント的なものでさらに追い詰めるというのはどうでしょうか?」

「いや待て、その個体がいる町でばかり何かイベントを発生させたら何かを疑われないか?」

「だったらその個体と仲のいい個体を使えばいいだろ」

「それもそうだな。その方向で行こう。プレイヤー達にはイベントの発生を告知はしないいが、あることを匂わせておくことにしよう」

「じゃあ、その方向で、モニタリングと作業の方をよろしくお願いしますね」


 そう会話を終えると、会議室にいた面々は徐々に部屋を出て、自分の持ち場に戻っていく。その中の二人がまっすぐ喫煙所へと行き、煙草を吸い始める。


「俺この作業ちょっと心痛むんですけど」

「でもこの実験で人間の精神の限界が探れるかもしれないし、AIにどこまでの作業やその処理を任せられるかの耐久値が算出できるんだ。やるしかないだろ」

「はぁ、正直ゲームだとは分かってるんですけど、あの女性個体、アリシアってモロ見た目が好みなんですよね」

「同じ名前の個体なんて全体を見たらいくらでもいるんだ。ちゃんと識別番号で呼べよ」

「はいはい、分かりましたよ。ああ、この実験が終わって金が出来たら自分だけのVR空間を作るんだ」

「おい、それ途中でこの実験が頓挫するフラグだ、今すぐ撤回しようぜ」

「さて、作業戻りますか」


 二人は煙草を吸い終ると、自身の持ち場へと戻っていった。





 光の届かない廃坑の中。頼りになるのは僕の持つたいまつが一本だけである。もっとお金があればランタンを購入できたのだろうが、あいにく皆お金はスッカラカンになってしまっていた。なのでないお金をかき集めて買ったのである。

 たいまつは一度落としたり水に浸かったりして消えると、もう二度と使用は出来ない。責任重大である。


「始めるから周囲の警戒」

「了解」

「任せてよ」

「…」


 僕達の中の一人が、採掘用に渡されたピッケルを振りかぶると、たいまつなどの照明とは違う、周囲を照らさないように設定されている白い光が淡く点滅している場所へと振り下ろす。これは外でも時々見かける採掘・採取ポイントである。

 適した道具を使うか、手でその地点を調べると、アイテムが手に入るのだ。ただし、手でやると手に入るアイテムはランクが下がったものとなる。


 振り下ろしたピッケルが採掘ポイントに当たることで、甲高い音が響き渡る。


「来たぞ、右方向から3体、左から2体だ」

「じゃあ右方向に壁張るね」

「じゃあ手早く行くわね」


 僕は右手に持っていたたいまつを左手に持ち帰ると、背負っていた杖を構え、右み向かって魔法を使い、水の壁を作り出す、無理やり通れば突破できないことはないけど、その代わりにダメージを断続的に受けることになる。

 その代わり、使用中は動けないし、MPを消費し続ける。その上ある程度強い貫通攻撃が飛んでくると、壁は壊れないまま攻撃がすり抜けるために、僕はただの的へとなってしまう。


 そして、接近してくるモンスターに赤いマントをつけた、色彩の派手な男性プレイヤーがダガーを片手にモンスター接近していく。そして、その後ろから髪をハーフアップにした女性プレイヤーが簡素な槍を構えて後に続く。

 二人は危なげなく接近してきたMOBを倒したのを確認すると、壁の魔法を解除し、攻撃魔法を放って牽制し、二人が切り込むのを待つ。


 接近してきたMOBを全滅させるのに要した時間は、2分かからなかった。


「採掘終わった」

「マドイさん、そのピッケルの耐久値って後どれぐらい?」

「4/1は残ってる」

「「うへぇ。マジかよ」」

「…はぁ、綺麗にハモってるわね」


 何で僕達が廃坑で採掘をして、普段ならピッケルの耐久値が4/1も残っていれば安堵するはずが、皆ため息やちょっとダルそうな顔をしているかというと、金欠だったんだからしょうがないじゃないか。稼げるクエストがこれだけだったんだよ!




~~~約8時間前~~~~


「リンク完了。これからダッシュで家に帰ってログインするぜ」

「分かったよ、キャラ作り終わったら一回ログアウトして連絡頂戴ね」

「あいよ、じゃあ、ゲーム内だけどまた後でな」

「了解~」


 ケイは慌しく僕の家をダッシュで出て行った。きっとあのままの勢いで家に帰り、たどり着いたところで息切れ、少し休憩を挟むことも想定すると、やはりそれなりに時間はかかりそうだ。


 ケイが僕の家を出てからおよそ10分。なぜか姉さんが僕の部屋でなにやらゴソゴソと作業をしている。ちょっと水を飲みに言っている間に何があったのだろう。


「姉さん何してるの?」

「ああ、勇人?ちょっとVR機器借りてるよ」

「ちょ、ちょっと待ってよ、勝手に触られると」

「大丈夫よ、私はそれなりに成績取ってるんだからあんたより早くVR関連のものは手に入れてるわよ。ちょっとリンクさせてもらってるだけだから」

「え?なんで?」

「ふふふ、お姉ちゃんが力を貸してあげるって言ってるのよん」

「え?でも今僕がやってるゲーム持ってるの?」

「うん、昨日適当に選んだらそれだった」


 ん?今やってるゲームって僕姉さんに言ったっけ?言った覚えがないような・・・これ以上考えるのは止めとこう。


「はい、リンク完了したから私は部屋に戻るわね」


 そう言って姉さんは僕の部屋から出て行く。何がしたかったのだろうか。僕にはまったく分からない。

 まあいい、僕はケイからの連絡待ちだ。



 …1時間経過したが、いまだにケイからの連絡が来ない。まさか連絡してくることを忘れてる?

 そう思っていると、僕の携帯に電話が来た。

 いそいそとその電話を取ると、電話の相手はケイではなく、葵さんだった。


「今日はいつログインするの?」

「ああ、ごめん、ちょっと午前中人とあってて、それと今は連絡待ちだから、先にログインしててよ。僕もログインしたら連絡するから」

「ん、分かった」


 こうして電話は葵さんとの電話は切れた。出来ればもう少し話したかったな…まあ、もう少し話そうにも僕には話題を広げることは出来ないし、マドイさんもそう話すこともないだろう。しょうがない、おとなしく待ってよう。


 結局ケイから連絡が来たのはそれから1時間後だった。どうやらキャラを作りこみすぎていたらしい。おかげで満足の行く物が出来たと言っていた。これは見るのが楽しみでもあるな。



 電話が切れると速攻でログインをして、ファルフラムの町に降り立つ。


「マドイさん、今ログインしたけど・・・」

『そう、じゃあ噴水広場で』

「了解」


 マドイさんとのフレンド通信が切れたところで、再びフレンド通信がかかってきた。確認すると、フレンドに新しく追加されている二人。きっと姉さんとケイだろう・・・姉さんがログインしているだと!?ケイとは絶対合流させないようにしないと。

 その方法は後で考えるとして、ケイからの通信にでることにしよう。


『ああ、勇人か?』

「ケイ、この世界で僕はヤマトだよ」

『そうか、じゃあヤマト、俺はこの世界では烏丸(からすまる)だ』

「なんでそんな呼びにくい名前に!?」

『カッコいいだろ。それよりお前今どこいんの?ランダムスタートってこういうのがあるから厄介だよな』

「というよりも、これって絶対にリアルで仲のいい人同士が集まってやるものじゃないよね。知らない人と組むかソロで攻略するゲームだよね」

『そんなことはどうでもいいから場所をはよ教えろ』

「・・・分かったよ。今僕はファルフラムって言う町の中心点にある噴水広場に向かってるとこ」

『待ち合わせでもしてるのか?』

「うん、マドイさん『OK高速で行く、超全力で行くぜぇぇぇぇぇ!!』あ、おい?」


 通信が急に切れてしまった。あいつ場所とか分かってるのか?それにきっと装備無しの状態だろう。

 ・・・まあ、ケイだったらどうにかするだろう。心配は要らないな。それにこれは何度も死んでいいゲームだ、心配することは何もない。

「よし、待ち合わせ場所に行こう」

 僕は噴水広場への道のりを急いだ。


「うーん。やっぱりゲームだからかな?復興のスピードが早い気がするなぁ」


 僕は広場から伸びる、各門へと通じる大通り、その中の壊された門に通じている大通りを歩いていると、つくづくそれを感じる。

 倒壊していた店舗や民家は、最低限住める、または商売できる程度には直されていて、活気が溢れている。広場にあった露店などの一部を貸し出しているのか、店舗の中には明らかに屋台っぽい構造の店もある。中に見知ったプレイヤーがいたが、今僕は待ち合わせ場所に急行しなければならないから、スルースルー。


 そういえば、これだけ復興している理由に、やはりあの金髪の男の活躍があったらしい。壊された門は綺麗に直っていて、一昨日一人で涙目になりながら、森からそのまま切り出した丸太を担いでいるのを見かけた。その後、腰を抑えて横たわっているのを見たが、巻き込まれたくないのですぐにその場を立ち去った。罪悪感?そんなものは何も感じなかったよ。


 さて、いつの間にか噴水広場にたどり着いていた。なので、僕はいつも通りの場所――アリシアさんの経営している花屋の前の噴水の縁に腰掛ける。

 僕はここでマドイさんを待つときは、基本的に噴水を延々と眺めているか、露店のプレイヤーやNPCと交渉をしている人たちを見るのが中々楽しい。今日は噴水の水の流れを眺めることにした。


 高いところから吹き上がった水が、半分近くが飛び散り、高所から落ちてくる頃には霧雨ほどのものになっていて、気持ちがいい。残りの半分ぐらいが段々状になっているところを流れ落ちてきていて、時折風で飛ばされてきたものが水の上に着水しいて、下ってくるのを見ていると、きっと僕は半日ぐらいここにいても分からないと思う。

 実際マドイさんが声を掛けてくれなきゃ僕は来たことに気がつかないのだから。


 噴水を眺めている僕に突如衝撃が訪れた。当然僕はそんな突発的なものに対して警戒などをしているわけもなく、勢いそのままに水の中に飛び込む形となる。

 そんな風に水に投げ出された僕は、当然自分がどうなっているかなどがまったく分からなくなるわけで、見事に溺れる。


 仮にこれが町の外だったら溺れていることで呼吸困難、肺に水が入るなどでHPが経るのだろう。だが、ここは町の中僕達冒険者(プレイヤー)のHPは減らない。だから呼吸が出来ない感覚と体内に水がどんどん入ってくる感覚で精神と肉体が染められていく。うん、これって拷問に使えるんじゃない?


 水の中で思うように動かせないにも関わらず振り回し続けた手が、水から手が出たときに硬いものに触れた。僕はそれを掴むと、思いっきり引っ張って体を水の中から出す。ようやく呼吸できるかと思ったけど、肺に入った水がまだ残っているので思うように域が出来なくて、咳き込もうとしても体の中に空気がろくにないので出すこともできない。


 なので、思いっきり吐いた。まあ、ゲーム補正で何も口から出なかったんだけどね。代わりに嘔吐、眩暈の状態異常が付いてしまった。


 ボロボロとこぼれ続ける涙がうっとおしいけど、僕を水に突き落とした下手人を見やると、これからの予定的には絶対会いたくない人物であった。

 その人物はリアルと同じ髪型(ハーフアップ)をしていて、お腹を押さえて笑いすぎたみたいでプルプル震えている。ああ、流石にリアルと同じ髪の色ではないみたいだ。そんな僕を酷い目に合わせた奴は…。


「あんなに慌てちゃって、見ててとっても面白かったわよ勇人」

「言いたいことはたくさんありすぎるけど、とりあえず最初に言いたいのはネットでリアルを出すのはNGだよ姉さん」


 僕の姉さん、その人だった。

 おかしいな、最初はの水に突き落とす表現じゃなくて、後ろから軽く肩を叩く程度の表現だったはずなのにな…

 何はともあれ第2章開始でございます。

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