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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛二回目

 今日で学校が終わりで、いよいよ明日から夏休みである。つまり、宿題をさっさと終わらせてしまえば自由にゲームを満喫できるということである。

 僕は今日出される宿題以外はすでに終わらせた。これもゲームを満喫するためだ。きっと葵さんも一緒だという確信がある。


「昨日設定した?」

「バッチリだよ」

「そう」


 葵さんから離しかけてくるなんて珍しいな。普段は僕の方から話しかけるほうが多いのに。そんなに楽しみなのかな。


「じゃあ、今日午後の二時から三時ごろまでにインして」

「分かったよ」


 葵さんと時間の約束をした後、僕はそのまま自宅に帰ることにした。今日は楽しみだなあ。


 僕は家に帰ると、手早く昼食を食べて、チョーカーを首に巻き、チョーカーについた黒い箱に有線ケーブルを差し込んだ。

 それと、セットになっていたヘッドフォンに、付いているスイッチの安全装置のようなものを外して――――これで勝手にスイッチが入るのを防いでいるらしい――――から、装着してスイッチを入れた。

 すると、ヘッドフォンから穏やかになるような音楽が流れ始めた。そしてそのまま僕の意識が遠のいていった。


 目を開けると、周りは真っ暗な空間で、その中に僕はポツンと一人立っている。するとどこからか抑揚のない声で

(ディフェンス)(ウォー)(アドバンス)にようこそ。それではDWAの世界をお楽しみください』


 視界が白く染まっていき、光が収まると僕は見知らぬ中世をモチーフにしたかのような町の広場に立っていた。

 広場には露店なども開かれており、賑わっている。

 そして、一番目を引くのは広場の中央にある噴水だろう。高さがきっと三十メートルはあるだろう。


 僕は噴水に近寄り、その水面を覗き込んだ。水面に映っていたのは、少し短い赤い髪を適当に切っただけのようなパッとしない顔が映っていた。調整を少しミスったみたいだ。


「えっと、フレンド通信はたしか…」

 僕は昨日ネットで見たやり方を思い出しながら、フレンド画面を開いた。フレンド画面には一つだけ、マドイという名前が登録されていた。きっとこれが葵さんのアバターの名前だろう。


 マドイという名前を選択して、通信のアイコンを押し込んだ。


「えっと葵さんであってる?」

『私はマドイです。葵って誰でしょうか』

「えっと…わかってやってる?」

『当然冗談よ』


 んん?葵さんリアルとやっぱり分けてるのかな。


『それで、どこの町にいるの?』

「ちょっと待って」


 僕は近くの露店に入ると、

「この町の名前ってなんでしょうか?」

「なんだ、初心者か?」

「はい、始めたばっかりなので」

「この町の名前はファルフラムだよ」

「ありがとうございます。では僕はこれで」

「あいよ、なにかいらない素材があったら遠慮なく売りに来てくれよ」


 僕は露店のプレイヤーに手を振りながらその場を離れた。


「ごめん待たせた」

『大丈夫、それで?』

「この町の名前はファルフラムだって」

『・・・』


 葵さん…もといマドイさんは黙り込んでしまった。なにか僕ミスした?


『合流に少し時間かかるから少し町でも回ったり自分のステータスの確認とかしておいて』

「わかった」

『でも戦闘はまだしちゃダメ』

「え?なんで?」

『いきなり戦闘するのは危険だから』


 僕は釈然としない表情をしていたことだろう。だけど

「わかったよ、どれぐらいかかる?」

『一時間以内に行く』

「了解」


 フレンド通信を切った僕は最初にステータスの確認をすることにした。


ネーム;ヤマト

LV:1


HP:150

MP:250


装備:なし

メイン称号:なし

装備称号:初心者




 ちょっとまて、HPとMP以外見られないのか?まあ、マドイさんが来たら色々聞こう。

 後この称号って確かネットには行動によっては手に入る称号が変わるとか・・・。これは実際に何か行動をおこすしかないようだ。

 後は装備の問題かな。装備が何もないって致命的だぞ。今僕が着ているものは装備にカウントされないみたいだし、きっと防御力は0に等しいのだろう。

 僕の方針は決まった。これから装備を買いに行くぞ!




 そんな感じで意気込んで来たわ良いけど、ほんとに初心者用の装備しか買えなかったです。

 とりあえず買った装備をちゃんと装備しておこう・そんなことよりも手持ちの道具に面白いものが入ってた。


【青の粘土棒 グレードE】

 道具説明

 魔法の力をこめることのできる媒体。魔力伝導率は一番低い(水属性)


 これを杖などに差し込むと魔法が使えるようになるとネットでは書いてあった。そして、ゲームを始めると、最初にこの粘土棒が手持ちにあるみたいなんだけど、属性はランダムみたいだ。



 僕が色々準備をしていると、急にフレンドの画面が開いた。開いたフレンド画面の唯一登録された名前のマドイの文字が点滅している。きっとこれがフレンド通信の合図みたいなものなのだろう。

 …フレンド画面がさびしすぎて少し泣きそうだよ。早くフレンドを増やそうかな。


『町に着いた。今どこ?』

「あ、町着いたんだ。今ちょっと入り組んだところにいるから、この町の広場で落ち合うって言うのは?」

『ん、分かった。出来るだけ早く来てね』

「了ー解っと」


 そこでフレンド通信は切れた。さて、急いで向かうかな。

 …ぶっちゃけ今の今まで、寧ろ現在も迷子なんだけどね。どうしよう。


 しょうがないので、近くにあった家の窓をノックする。

 ノックしても何も起きないので、こういうところは空き家で、プレイヤーがお金をかければ買える物件なのかなと思い始めていると、バンと大きな音を立てて窓が開いた。仮にこれが現実(リアル)だったらきっと窓は割れているだろう。


「人様の自宅の窓をノックするなんて、いつから冒険者様はそれだけ偉くなったんですかねえ!?」


 そんなことを大声で、当り散らすようにしゃべっているのは、この家の家主と思しきNPCだった。金髪は伸ばしっぱなしでボサボサになっており、黒い目を怒らせながら僕を睨んでいる。正直すごい怖い。


「えっと、実は迷っておりまして、広場までの道を教えてもらえませんか?」

「なんだよ、ただの迷子かよ…金はいくら持ってる」

「装備を買ったらなくなっちゃって」

「本格的に俺にメリットがないな」



 この人はプレイヤーなのかな?行動がプレイヤーっぽいけど、NPCみたいな感じがあるのも否めない。どういうことだろう。



「しょうがねえ、俺は広場に用事がある、だから来るなら勝手について来い。見失っても責任はとらん」

「え?はい。ありがとうございます」

「お礼はいらない、お前は俺に後についてくるだけだ。俺も案内はしない、ただ目的地が広場なだけだ」

 こういうのってなんて言うんだっけ?ちょっと思い出せないや。


 先行する形の金髪の後に、はぐれないようについて行くこと五分ほどすると、最初の広場に到着した。

 広場に着くと、金髪の男はどこかへと行ってしまった。どこに行くんだろう。


 とりあえずマドイに連絡でもしますか。

「今広場に到着したけど、マドイさんはどこにいるの?」

『広場にいる。弓装備してるのが私だから』

「あ、うん、もしかして花屋の近くにいる?」

『うん』

「じゃあすぐいくよ」

『ん』


 僕は花屋のほうへと足を向ける。そっちはさっきの金髪が行った方向と同じ方向であった。


 花屋の前にいる銀髪ロングの女性アバターが、きっと葵さんのアバターであるマドイだろう。しかし、なにやら複数の男性アバターに絡まれているみたいだ。


「なあ、いいじゃん。俺達前衛しかいないんだよ。パーティー組もうぜ」

「待ち合わせしてる」

「じゃあそいつも一緒でいいからさ」

「そうだよ、だからパーティー組もう」

「待ち合わせ相手初心者だし、私もLV低い」

「それでも大丈夫だから。俺達でいろいろレクチャーするから」


 断り続けてるマドイさんに、しつこく食い下がり続ける男二人。初心者の僕が一緒でも大丈夫って言ってるんだからOK出しちゃえばいいのに…。


「待ち合わせの人と一緒にこのゲームを回りたいから」


 ええ?それってまさか僕のことを…今すぐ行きます!


「俺達とパーティー組んでも一緒に回れるじゃんよ」

「お待たせ、遅れちゃってごめん」

「誰だよお前」

「その人私の待ち人」

「え?」


 確かに驚くだろう、だって現れたのが初心者装備丸出しの、アバター作成をミスった冴えない男性アバターなのだから。


「じゃあ行こうか」

「うん」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ」


 む、僕とマドイさんの妨害をしようとするのかね。


「そっち二人とも後衛装備じゃんか、なら、俺達前衛二人なんだからバランスよくなるだろ」

 マドイさんは僕の肩に手を置くと、――――置くというよりも無理やり載せてる感じになっている――――

「初心者だから戦闘方法が変わるかもしれない」

「それでも…」


 いい加減こいつらしつこくなってきたぞ。



「おいおい、冒険者って奴は、とことん見境ないみたいだな」


 声のした方を見ると、花屋の中から僕を裏路地からここまで案内してくれた金髪の男が立っていた。

花屋から僕を案内……となっていましたが、見直したら意味がよくわからないので少し直しました

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