防衛二十八回目
ウェイルズサイドの1章エピローグです。
そのため短めです。
今は無事…とは言いがたいが、とりあえず町を守り抜いたことを喜ぼうということで宴会が開かれている。中には自分の息子や知り合いを亡くした人もいるが、悲しみを押し殺して騒いでいる。
俺は左手に酒の入ったガラスのコップを握り、右手は頬杖をつくのに使っている。そして、表情はきっとそうとうブスッとした表情をしているのだろう。
そして、そんな俺の対面にも、似たような体勢と表情でいるササがいる。どうでもいいが幼女にしか見えないササが酒を手にしているのを見ると、違和感がバリバリ出てるな。
「それでお前は私の作品を無残にもこんな姿に変えたと?」
俺とササの付いている机には、今回の防衛戦で折られてしまった【ヴォルカニック+30】の柄が転がっている。よく見たらササの表情はブスッとしたものではなく、青筋があることから怒っているのが伺える。
「ササ落ち着いて、ウェイルズの剣が折れちゃったのは私のせいなの」
「それでももっと他にもやりようがあったんじゃないか?剣を投げるのではない方法とかで!」
「それじゃあきっと間に合ってなかったと思うの」
「ああ、クソ。どちらにせよ壊さなきゃ救えないってか?確かに人を救って壊れたんだったら納得だが、ここまで完璧に、しかも薬品ごときで壊されるってどういうことよ」
ササは酒を手にしたまま机をバンバン叩いて中身を撒き散らしている。おいおい、中身が俺にもかかるからやめろよ。
だが、確かにササの最高傑作だと豪語していた武器が簡単に壊れるわけが無い。それでも壊れたのは、やっぱり無茶な使い方を続けていたからなのだろう。
「まあまあ、そんな暗い話は後日に回して今日は騒ぐのじゃい」
「何だ町長。俺はゆっくりしたいんだが?」
「美少女と美幼女をはべらせながらゆっくりじゃと!どこまでお主は「おい町長、幼女って私のことじゃないよな?」止めてそんなもので殴ったらワシ死んじゃうから、止め、ノォォォォォォォォォォ!!」
ウザッたく肩を組んできた町長が、迂闊な発言のせいでササにボコボコにされていく。止めろ、俺に同意を求める目で訴えるな。…拒否したからって助けを求めるな。俺を思いっきり巻き込もうとしてんじゃねえよ。ほら、ササが鬼のような目で俺を見てるじゃねえか。
「ウェイルズ君は私のことを幼女とか言わないよな?な?言うわけねえよな?おい」
「言いません。町長の妄言です」
「ウェイルズゥゥゥゥゥ!!あ、ちょギャァァァァァァァァ!!」
とりあえず町長に冥福を祈っておこう。だが骨は拾う気は無い。
見ているうちにどんどんと町長がボロボロになって行く。ササは相当怒りが溜まっていたのだろう。そりゃあ、剣壊しちまったもんな。
そんな町長を見ていると、隣りに座っていたアリシアが俺の真横、密着できる位置に移動してきた。体温が暖かい。いや待て落ち着け。向こうにその気は無いはずだ。
「それであなたとパーティーを組んでくれた人達と彼女さんはどこかしら?」
まだアレのことを気にしてたのかよ、いや、待てよ。ここまで気にするということは俺に気があるということでいいのか?ここで確かめてやる!
「ああ、あいつらは送還していったぞ?それと俺にはまだ彼女はいない」
「そうなの?そんなに隠さなくてもいいのに。でもあんなところで事に及んじゃだめよ?」
「だから違うって言ってるだろうが!!」
この誤解はどうやったら解けるんだ?本人でも連れてくれば…いや、逆の結果になりそうだ。しょうがない、全力で違うということを言い続けるしかないのか?
結局俺は宴会なのにも関わらず、アリシアに弁明をするだけで時間をすごしてしまった。置いてあった料理なども全部無くなっていたため、俺は寝ている椅子の上で寝ているアリシアの横で顔を上に向けて涙をこらえている。最後に飯を食ってから時間も大分立っており、戦闘も経験していることもあってすごい腹が減っているのに、中途半端に酒だけを少し飲んだため、空腹感が酷い。これってこのまま死ねるんじゃないかと思うほどである。
どこか適当なところで食べよう。そうしよう。
俺はそのまま寝ているアリシアとササの脇を通過し、もはや誰だかわからないほど顔を変形させた町長を踏んで自分の家へと向かう。流石に自宅だったら何か食材ぐらいあるはずだ。
そんなことを考えていた自分がいましたよ。はい。食材どころか、家が半壊していました。食材を保管していたところがモロに崩壊していて、全部消滅してしまっている。
俺は半壊した自宅の前でしばらく呆然としていたが、気を取り直して立ち上がると、気合を入れるために一度自分の頬を両側から叩く。
パンッ、といういい音がなり、痛む頬を意識して目を開けると、いつの間にいたのか、大分顔が元に戻ってきている町長がニヤニヤとした表情で俺を見てきている。
「なんですか?」
「いやいや、中々珍しい光景を見たと思ってのう。それとそうじゃ、お主は今日の葬式に参加するのか?」
「当たり前のことを言わないでくれ」
俺がそう言うと町長は、来ないと思ったんじゃがのう、と目を細めていってきた。
「行くに決まってるでしょ?あいつは俺が殺したも同然なんですから。ここであいつの親族や婚約者に会って決着を付けておきたい。俺はいつまでの誰かの死を引きずりたくないだよ。それにこれから誰も死なない保障はないんだ。そのたびにいちいち引きずってたらそのうち1歩も動けなくなっちまう」
町長は俺を見てうなずきながら、そうか、逃げずに立ち向かうようになったか、と呟いていた。確かにリセットが起こる前の世界。つまり1度目の世界で、俺は自分の弱さを盾にいろんなものから逃げていた。だが、3度目の世界で初めて無理だとあきらめずに立ち向かった。まあ、結果は惨敗。偶然居合わせた町は滅んだが。
「逃げてたまるか。俺はたとえ負けて逃げることになっても、諦めねえよ。諦めてたまるか」
「そうか、もう逃げないか…じゃあ、一つたのもうかの?」
「は?」
「ちょっと門を直すための資材を運ぶ人材が足りなくてのう、手伝ってくれんか?」
「飯は?」
「食べてる暇はないぞい。なんせもう作業は始まっておるからのう。それにこれを機にモンスターが入り込まないという保障もない。ほれ、急いだ急いだ」
「俺に飯をくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺の叫びは誰にも聞き入れられることなく、辺りに響くだけで終わってしまった。俺餓死するんじゃないか?
次回はヤマトサイドのエピローグです。
本来はまとめてもよかったんですけどね。
分けたほうがいいのかなと思って分けました。
1章は次回でラストです。




