防衛二十七回目
再び追い詰められる。HPはもうあまり残っていない。おそらくキングゴブリンのほうもHPはそんなに残っていないはずだ。それこそ後一撃で決められるぐらいには。
しかし、ちゃんとしたダメージを与える反撃を行うためには武器が必要であるが、それを取り出す暇が無い。20、いや、10秒は時間が欲しい。
「アリシア!もう歩けるだろ!早く行け!」
「でも…」
「お前がいると全力で戦えないんだよ!」
走れないのか、ゆっくりと歩いてこの場を離れていく。俺はこの場を離れるアリシアがキングに攻撃されないように、防御を捨てて攻撃を仕掛ける。
結果こっちの攻撃は全部かわされ、反撃とばかりに攻撃を加えられる。HPがまた危険域まで減少してしまった。
さて、アリシアがいなくなったところで攻撃から回避に専念する。おかげで攻撃を受けることはなくなったが、ギリギリの戦いが続く。いや、戦いというよりも一方的に攻撃されているだけだ。
「クソが、いい加減にしやがれ。もうそんだけ攻撃してきてんだから満足だろうが!」
思わずそんな事を大声で言うが、もちろんそれが相手に通じるわけも無く、むしろ攻撃が苛烈になってきた。俺が援軍を要請したとでも思われたのだろうか。
だが、周囲にいる冒険者含めた味方は、いまだにダークマジシャンを相手取っているマドイしかいない。しかも、もう少しだけ時間がかかりそうだ。とりあえず少し逃げておこう。
俺はキングに背を向けずに、後ろに向かって全力で飛ぶ。背後にあった家などはすでに倒壊しているため何かにぶつかる心配もない。
とりあえず下がり続ける俺を追いかけてくるキングが連接剣を伸ばして攻撃してくる。俺は当たりそうなものはワイヤーの部分に触れて逸らし、そうでないものは余裕を持って回避をする。その状態で少し移動すると、足に何かが当たり、何かと思ってそれを見ると、刃が血に染まり、折れた槍が転がっている。
先ほどこれを見てキレたが、今は見ても悲しみがあるが、怒りまでは湧かない。やはり先ほどジャイアントオークを殺しただからなのだろうか。俺はその半ばから折れている槍を拾うと、全力で振りかぶり、追って来るキングに向けて投擲する。
投擲した槍は、キングに弾かれるが、俺はその間に新たな武器を取り出そうと表示枠を指でなぞり、アイテム欄を弄る。
だが、相手が迫る方が早い。このままだと攻撃を食らった場所によっては死んでしまうかもしれない。
キングの連接剣が迫り、自身の死のイメージがだんだんと鮮明になっていく。
そのとき、連接剣を弾くように矢が飛んできて、俺の真横、ギリギリのところに振り下ろされる。俺は指を再度動かし、目的の武器を選び、実体化させる。
武器が実体化するまでの僅かな時間で矢の出所を確認すると、マドイがダークマジシャンの魔法を食らっていた。きっと戦闘中なのにも関わらず、こちらの援護をしてきたのだろう。矢と魔法の打ち合いが拮抗していたはずなのに、それが崩れてしまったために、魔法を全部打ち落とせずにいる。
じゃあ、マドイのHPがなくなる前にキングを潰す!
実体化させた武器は、細身の緩やかに曲線を描く片刃の曲剣。そして、細身のためとても軽い。この軽さに俺は懐かしさを感じながら、軽く2度3度と振って調子を確かめる。うん。十分戦える。
ササに武器の作成を依頼する前までは今手にしているような軽い剣を使い、今のような一撃ごとに大ダメージを叩き出して敵を倒す戦法ではなく、敵が反撃をする間もないほどの速度と手数で攻める戦法だった。
俺はそれを思い出しながら、軽くキングに攻撃を仕掛ける。攻撃を加えるごとに速度を上げていき、キングが防げるが反撃は出来ないぐらいの速度で止め、息つく間も与えず蓮撃を加え続ける。すると、だんだん対処できなくなってきたのか、キングが俺の攻撃を防ぐのがギリギリになってきている。
「さっきまでの!威勢は!どうしたよ!」
一言ごとに一撃を加えていく。が、キングが兜の奥で、お前が言うなという視線を送ってきた気がするが、今俺は久々に本来の戦い方が出来て気分がいい。やはり一撃に全力をこめるよりも、速度で蓮撃を加える方が性に合っているな。
最近はそれなりの速度を出せるようになったが、試作品である当初は、重いのなんの。強化を重ね、完成品に至ったとき、俺がササに要求したのは、威力を上げるための要請ではなく、剣を軽くしてもらうことだった。
しかし、大剣を使用していた時の経験が生きているようで、こういった速度重視の戦闘だと一撃ごとの威力が軽くなり、簡単に防がれて弾かれるが、大剣を効率よく使用するための動きを少し取り入れると、一撃辺りの威力が上昇。弾かれにくくなっている。
「食らいやがれ!」
俺はそう言うと、少し威力のこめた斬撃をキングに入れ、体勢を崩させると、右手で剣を上段に高く掲げて体を重力に任せて落とす。
キングはそれに反応。体勢を崩しながらも剣を自身の前に構えて防ごうとする。だが、俺の手はまだ高く掲げられたままで、剣はまだ振り下ろしてなどいない。
キングがいつまでたっても衝撃が訪れないことを確認するために顔を上げようとしたところで俺も動き始める。
沈めていた体を持ち上げながら、右手を一度自分の背後に振り下ろす形で下ろし、その勢いを殺さないまま自分の体の横を通過させ、キングを下から肩へと斜めで切り裂き、再び重心を下に持っていきながら剣を振り下ろす。
剣はキングの体に吸い込まれていき、HPを吹き飛ばしたのか、奇声を上げながら少しずつ消滅していく。ようやく終わったのか?
そして、キングが完全に消滅すると、マドイに向かって攻撃していた残り1体のダークマジシャンは踵を返してこの場から走り去ろうとする。そこを今までのお返しとばかりにマドイが矢を放ち、ダークマジシャンを消滅させる。
終わったのか?これでようやく終わったのか?
俺はその場で膝に手をついた体勢で立ち尽くす。今までの防衛戦でこれだけつらかったのは、毎回リセットを起こす原因となる町が滅ぶ規模の防衛戦以来である。まだリセットされたばかりなのにこの規模になるのは初めての経験である。
俺は不安に囚われてしまう。現在でこれなのだ。これからどんどん敵が強くなっていくかと思うと、不安が拭えない。
そんな不安に囚われてしまっている俺に、マドイが近づいてきた。
「お疲れ」
「ああ?何がだ」
「町の防衛」
「こんなに壊れている上に住人を死なせたのにか?」
「それでも町は壊滅してない。これを成功と言わないでなんという?」
「あいつはもう結婚目前だったんだぞ!こんな若造も同然の俺を自警団のトップとして背中を押してくれたいい奴だったんだぞ!」
「あなたの目の前で死んだ?死んだのはあなたが見てないところ。そんなものは守りようが無い」
なんだ、結局コイツも他の冒険者と一緒だったのか。一瞬でも期待した俺がバカだったよ。
「なんだその言い方は!」
「そんなに怒っても結果は変わらない。嫌だったら常に一緒にいるしかない」
「そんなことできる訳「それが出来れば守れる。女の人守ってた」ッ!!」
「目の前にいない人は守れない」
「でも俺がこの場の巡回を命じたんだ!だから俺のせいで!」
「別の人がこの場につく。それに、門が突破されるなんて誰も考えない」
確かにマドイの言うことはいちいち正論である。だが、正論を言われても感情の整理はつかない。
「そんなことは分かってる!だけどそれでも俺は守ると言ったんだ!」
「・・・」
マドイは何も言わずに、ただただ俺をじっと見続ける。マドイに詰め寄ろうとしたが、熱くなっていたみたいで周囲の確認を怠っていた。
足元に落ちていた石に躓き、バランスを崩してしまう。俺は両手を振りながらバランスを取ろうとするが、勢いよく躓いた際に浮いた足を地面に押し付けると、そこにもガレキが転がっており、後ろ向きに転んでしまう。
そんな俺の体を支えようとマドイが俺の手を掴むが、俺の体重+装備の重さを支えることは出来なかったみたいで、そのまま俺と一緒に倒れる。
「クソ、まさか石ごときに躓くと…は?」
頭を振りながら体を起こそうとすると体が重いため確認すると、マドイが俺の体の上にいた。まるで俺を押し倒しているかのように。
「ファッ!?」
思わず変な声出ちまったよチクショウ。やめろ、そんな目で俺を見上げるなよクソ。
「ウェイルズさんマドイさん大丈b……」
「ウェイルズ!今度は護衛が……」
めんどくさい二人が来やがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ウェイルズお幸せにね、アリシアはそう言うとこの場をダッシュで立ち去り、ヤマトの方は、え?なにこれ?え?とエンドレスで呟きながら固まっている。
俺は先ほどまでの感情はどこへ行ったことやら、マドイを自分の体の上から強引にどけると、アリシアを追って走り始める。
おかしいな、これは僕の幻覚なのかな?
門の中に入れてもらった後、おっちゃんとは別れて破られた門のほうへと走っていったが、その途中でアリシアさんに捕まり、ウェイルズさんがピンチだと聞き、案内をしてくる代わりに守れと一方的に言われ、渋々それを了承して駆けつけると、ピンチであるはずのウェイルズさん及びマドイさんは倒れこんでいた。
マドイさんがウェイルズさんを押し倒す形で。やはり顔なのか?それとも別の何かなのだろうか。神様、僕にも春をください。
そう思っていると肩を揺さぶられ、現実に無理やり戻された。こんなつらいのが現実だったらいらないよ!
「戻ってきた?」
「マドイさんお幸せにね?僕は悲しいけど応援することにしたから」
「まだ?」
所詮僕なんて路傍の小石。いや、砂でしかないんだなぁぁぁぁぁああぁぁぁああ!?
マドイさんに思いっきり揺さぶられ、脳内がドップラー効果使用となった。何事!?
この後元に戻った僕に伝えられたのは、アレはバランスを崩して転びそうになったウェイルズさんの腕を掴んだら思った以上に重く、自分も一緒に倒れこんでしまっただけだという。
僕は、へーそうなんだ~、と気が無い風に返しながらも、内心では安堵と歓喜の雄たけびを上げていたのは内緒のお話である。
言い訳に聞こえるかもしれませんが、手首と指を痛めたため更新が遅れました。すいません。
次回は戦闘も終わりましたしエピローグのようなものの予定です。
視点は…多分ウェイルズです




