防衛二十五回目
「…なん・・・で?何でここにいる!」
俺は完全にキングのことを忘れてフラフラとアリシアに近づく。
「すごい音がしたから大丈夫かなって思って…ッ!?」
急にアリシアが言葉を切ったかと思うと手元にあった小石を俺の背後に投げる。それにつられて俺は自分の背後を振り返らずに、直感に任せて目の前のアリシアを救い上げるようにして軽く放り投げる。
その直後に背中を切られた。だが、装備していた鎧のおかげで傷は無いが衝撃でHPが少し減った。アリシアの方は放り投げた際にどこかをぶつけたみたいで、痛みで呻いている。怪我はしたかもしれないが死なれるよりはずっとマシだ。
キングに向き直ると、怒りの雰囲気を出しながら、直剣を振り回し、攻撃をしてくる。ダークマジシャン達の方からも怒ったような困惑しているかのような感じがする。
俺はその場に留まり、キングの攻撃を剣で受けながらダークマジシャンの魔法の対処もする。しかし、捌ききれない分は自分の体を盾にしてアリシアを敵の攻撃から庇う。流石に先ほどHPを回復させたと言っても、さっきよりも被弾率が上がってしまっているためにHPの減りが早い。
「早くこの場から逃げろ!」
「ご、ごめん。ちょっと腰が抜けてて動けそうに無いの」
「這ってでも逃げてくれ。このままじゃ二人とも死ぬことになるぞ!」
「じゃあ、私が逃げた後あなたはどうするのよ。そのまま死ぬなんて絶対許さないわよ」
「死ぬ気なんざ始めっからねえよ。あいつら全員倒すのに庇いながらじゃきついって言ってるんだよ!」
「あら?天下のウェイルズさんも一人庇いながらだと負けちゃうのね」
「負けねえよ!こんな奴らごときに負けてたまるか!」
「じゃあ、私が立てるようになったら一緒に逃げましょう。それまで私を守るのなんて余裕でしょ?」
そんなことを言ってニッコリと微笑んでみせる。こんな状況でも笑顔を見せるなんて、俺に対する信頼?安心感?まあいい、だったら意地でも耐えてやるよ!!
いつの間にか俺のHPは5割を切っており、俺の近くでキングが直剣を振るって俺を追い詰めようとする。俺はダークマジシャンの火球に晒されながらも、キングの攻撃と自身の残りのHPだけに集中し、キングの攻撃を受け、捌く。
そして、剣を袈裟懸けに振り上げたキングの攻撃をかわし、そのがら空きの胴体に蹴りを入れる。キングはそのまま転がり、強制的に俺達から距離を取らされた形になる。その瞬間ダークマジシャンの魔法の狙いが、俺から俺の庇っているアリシアへと移った。俺はそれらを全部剣で切り払い、打ち消す。
その間に体勢を立て直したキングが再び攻撃を仕掛けてくる。変わりにダークマジシャンの魔法攻撃が散発的になってきた。おそらくだがMPがもう切れそうなのだろう。そう考えているうちに魔法攻撃が止んだ。
ここを勝機とばかりに剣を振るい、キングにダメージを与えていく。
キングの装備しているものがボロボロになり、壊れかけ始めたとき、大量の火球が飛んできた。
「な、MP切れたんじゃねえのかよ!?」
不意打ち気味に飛んできた火球を回避できるわけも無く、ほとんどが当たってしまった。HPがごっそりと減り、残りが3割ほどだ。
ダークマジシャンの方を見ると、足元に空の小瓶が転がっており、今まさに消滅していった。
「MP回復薬!?雑魚にも持たせてやがってたのかよ!クソ!!」
形勢逆転された。今度はキングの方が攻撃を激しくする。
HPが減っていく。残りを2割切ったところで絶望的な気分になる。
俺が倒され、後ろに庇っているアリシアも殺されるビジョンが脳裏にちらつく。そのせいで集中力が落ち、さらに攻撃を食らってしまう。HPの減る速度が上昇する。
だんだんと頭が焦燥で埋め尽くされてしまう。そうなると動きの方も鈍っていく。ヤバイ。これは非常にヤバイ。
焦った俺の耳に、ズドン、と言う音が聞こえた。
音の聞こえた方を見ると、ダークマジシャンの頭の上から矢が当たった形になっており、一本の矢が見事に頭から胴体まで貫いている。それが致命傷になったのか、一体のダークマジシャンが消滅していく。
驚いたのは周囲にいたダークマジシャン達だ。なんせさっきまで一緒に有利な環境で攻撃をしていたはずの仲間がやられたのだ。逆に平静でいられる奴の方が少ないはずである。
そして、辺りをキョロキョロ見渡し、挙動不審気味に動いていたのが彼らの命を救った。先ほどまで立っていた場所に一体につき一本の矢が地面を破砕して突き刺さっていたのだ。
敵は戸惑っている。今がチャンスか?
俺は上等な回復薬を使うと、周囲を見渡しながらHPが回復するのを待つ。そして、見渡しているうちに一人の冒険者を発見した。
その冒険者はまだ倒壊していない屋根の上に立っていて、長い銀色の髪を風になびかせていた。矢を番え、射抜くような目でダークマジシャン達の位置を確認すると、弓を上方に向けて放つ。
どうやらまだ敵はまだ援護に矢を放っている冒険者、マドイの存在に気がついていないみたいだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は敵の意識をこっちに持ってこさせ、マドイの存在を気づかせないように大声を張り上げながらキングに攻撃を仕掛ける。
キングは俺の攻撃を防ぎながらも、さっきまでのようなキレが動きにない。きっと矢の出所を探し、当たらないために警戒しているのだろう。
だったらそんなことを考える余裕をなくしてやるよ!!
俺は攻撃速度をどんどん上げていく。キングの体にかすり始めるこれは中々いい状態じゃないか?
ダークマジシャンが残り2体になったところで、ダークマジシャンが突如奇妙な方向に魔法を放った。俺はキングを攻めながらその魔法の行方を目で追う。魔法の先にはマドイがいて、次の矢を放とうとしていたみたいで魔法をかわせずに直撃する。だが、まだHPは残っているみたいで、番えていた矢を放つと、移動を始めた。
あの位置からだと曲射しなければ当たらない上に、当たるまで時間があるため敵が移動してしまうとの判断だろう。だが、走りながら矢を番え、放つ技量は高いと思うがどうもさっき立ち止まっていたときよりも威力が下がっている気が
「ウワッ!?」
マドイのほうを観察しすぎた。おかげでキングから攻撃を受けて回復中だったHPの回復が止まってしまった。だが、HPは大体回復していたみたいで、5割を超えていた。ダークマジシャンはマドイが引き受けてくれた。後はコイツを全身全霊で倒すだけだ!!
先制攻撃とばかりに放ってきた突きを、剣の腹で受け、そのまま体ごと回転することで攻撃を自分の横へと受け流す。そしてそのままの流れで回し蹴りをキングの顔へ向けて打ち込む。だが、のけぞる形でかわされてしまう。
俺は回転する体の動きを、掴んでいる剣に体重を乗せ、無理やり止め、かかと落しをする。流石にこれは避けられなかったみたいで、突き出されていた腹に直撃する。
キングは痛みを抑えるために体を丸める動きをしており、ちょうどかかと落しをした足に全体重を乗せ、前かがみになっていた俺の頂頭部にキングの顔面が当たる。
偶然キングが俺に頭突きをかます構図となり、俺はそのまま地面にうつ伏せに倒れこんでしまう。
俺はこのままの体勢だと一方的に背中から直剣を突き刺され、ダメージを与えられ続けると判断し、キングの足を掴むと無理やり引っ張って転倒させ、素早く立ち上がると、中途半端な体勢のキングに攻撃を加え、衝撃で再び転倒させる。
剣を頭上に振りかぶり、キングの頭めがけて振り下ろす。キングはこれを直剣で受け止めるが、ギリギリなのだろう、だんだんとキングの体へと直剣ごと近づいていく。
キングに無理やり剣を弾かれ距離を取られてしまう。
距離を詰めるために近づこうとするが、俺が近づくだけキングが離れていく。そして、まだ距離があるのに直剣を振ってきた。
振るわれた直剣が伸びた。比喩でもなんでもなく本当に、物理的に伸びてきた。
俺はギリギリで対処することに成功する。ジャコン、と言う音を鳴らしながら剣が元に戻っていく。よく見ればキングの持っていた剣には薄く筋が走っている。なんで今の今まで気がつけなかったのかが分からない。
キングは直剣ではなく、連接剣を装備していたみたいだ。
俺はキングに無理やり接近する。連接剣ということは近距離から中距離まで戦えると言うことだ。俺の剣よりも遠くの射程から一方的に攻撃されないためには、たとえ無茶でも近づかなければならないのだ。
キングはなぜか俺が接近しているのにも関わらず、連接剣を伸ばし、ムチのようにしならせ、俺の背後の方へ伸ばす。俺はそれを目で追うと、狙っていたのは俺ではなく、ようやく立ち上がることが出来るようになったのか中腰となっているアリシアの方だった。
「え?」
まさか狙われるとは思っていなかったのか、アリシアは呆けた表情で固まってしまっている。
今から走っても追いつかない。と言うよりも追いつく追いつかないの問題ではない。もう剣を横なぎに降り始めてしまっているからどのみち走り出すことが出来ない。
こうしている今もアリシアに剣先が迫っていっている。これを打開できる方法は…一か八かだがやるしかないか。
俺は体の回転を早めることで剣の速度を上げ、それをキングに当てないように軌道を無理やり変更し、頭上を通過させ、体ごと振り返り、そのまま遠心力まで利用して手にした剣を投擲した。
剣はアリシアと連接剣の間の地面に、滑り込むように突き立ち盾となる。
連接剣は盾となった俺の剣に絡まり、動きを止める。
俺はそれを確認するとキングに向き直ろうとするが、背後から強い衝撃が走り、アリシアの方へと転ばされる。
素早く立ち上がると、キングの連接剣は元の直剣になっており、キングの足元には俺の剣が転がっている。武器を取られた俺は取り返そうと拳を握って殴りかかりに行く。
キングは俺の剣に固執せずにすぐに下がり始める。だが、下がる際に何か小瓶を放ってきた。それは俺には当たらず、俺の剣に当たった。
小瓶が割れ、中の液体が剣にかかると、シュウゥゥゥ、と言う音と共に白煙が上がり、刺激臭が俺の鼻に突き刺さる。
俺の目の前でササの作った最高傑作がどんどん溶かされていっている。きっと耐久もすごいスピードで減っているはずだ。
キングの投げた小瓶の正体がようやく分かった。武器の耐久を大幅に下げる【装備壊酸】だ。
そして、白煙を上げていた俺の剣は、刀身の半ばから折れ、剣先の方が消滅していった。
戦闘ばかりだったから書くの大変でした。
そのため会話がほとんどありませんでした。




