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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛二十四回目

 全員突っ込んできたといっても、それぞれが好き勝手にタイミングを合わせず突っ込んできている上に、外側の包囲網を敷いていた奴らまで一緒になって突っ込んでくるため、抜け出すことがさらに容易になった。

 しかし、巨体が密集しているために、下手したら圧殺されてしまうかもしれない。俺は最初の一体の腹を縦に浅く切ると、ひるんだ隙にできた隙間から外に飛び出す。しかし、いまだに俺がそこにとどまっていると思い込んでいる奴らは、先ほどまで俺がいた位置に殺到していく。


 肉に圧殺される前に飛び出した俺は、外側にいるジャイアントオークに切りかかる。その際に飛び出していた豚の尻尾を切り離しておく。外側のやつが大声でわめき、その声が中心まで聞こえたみたいで、慌ててこちらに向き直ろうとするが、密集しすぎてそれがままならない状況となっている。

 俺はそれを見ながら笑い。外側のジャイアントオークから足や腕を切断して、反撃を出来ないようにする。

 そして、反撃能力を奪ったジャイアントオーク達をなます切りにして、出血状態にする。血は出ないのに出血ってどういうことなんだろうな。まあ、今はそんなこと関係ねえな。

 そして、ようやく密集状態から脱した奴らは再び襲い掛かってくる。学習能力が本当に低いのか先ほどと何も変わらない攻め方だ。

 そんな単調な攻め方じゃ俺にはダメージを与えられない。先頭の一体の首を浅く切ると、次に続いてきていた奴を蹴り飛ばす。蹴り飛ばした際に続いてきていたジャイアントオークを巻き込んで吹き飛び、民家へと突っ込む。ヤベ、力入れすぎた。これは・・・弁償じゃすまないよな。土下座か?


 もはや俺は関係ないことまで考え始めてしまっている。なんでだろう。


 そんな思考をしながら首を浅く切ったジャイアントオークを切り刻んでいく。

 これで何体目だっけ?まあ、関係ないよな。全員半殺しにするんだから。


 俺は思考を巡らせたままジャイアントオークを片っ端らから半殺しにして、出血状態か部位欠損状態へとしていく。

 そして、最後の一体を胴体だけにしたところでようやく落ち着いた。

 自分の周囲には消え行くジャイアントオークと、痛みに呻きながらモゾモゾと動いているのが残るばかりである。まだ残っていたはずの家も半径30メートル以内のものは全壊してしまっている。


 大きく息を吐き出すと、その場に座り込む。予想以外に消耗していたみたいで、HPはそんなに減ってはいないがだいぶ疲れた。

 そうして、まだ残っている奴らを眺める。眺めているうちに、次々と消滅していく。それはどこか儚さがあったが、俺は頭を振ると、最後の一体が消滅したのを確認してその場を後にしようとしたが、視線を感じたため、そちらを見ると同じくらいの身長の奴がボロボロのマントを羽織っており、フルフェイスの兜をかぶっている。


 この町にこんな奴いたか?とりあえず近寄ろうとしたが、そいつの隣りに一体のダークマジシャンがいることに気が付いた。

 ああ、コイツも敵か。


 俺は剣を構えると、少しずつ慎重に近づいていく。


「おい、そこのお前。隣りの奴はなんだ?そんな奴を町に入れていいと思っているのか?」

「・・・」

「何か答えたらどうなんだ?」

「・・・!?」


 俺が応答を促すと、急に動き始めた。

 具体的にはマントの中に隠していた手に、ナイフを握りこんでいて、こっちに駆け寄ってきながらそれを振りかぶってくる。すでに振りかぶっているところ悪いが、この距離だったら絶対にとどかっ!?

 いきなり隣りに立っていたダークマジシャンが火球を複数放ってきたので、そちらの処理に追われてしまう。そうしてそっちに追われてしまっているうちにマントの奴に接近されてしまった。意外と動き早いなコイツ。突き出されるナイフを持つ手を、剣から離した左手で逸らす。そして、右手の筋力を総動員して剣を振ってマントの奴を叩ききろうとするが、本体には当たらず、マントを切り裂く結果となった。マントを切り裂かれた相手は俺から距離を取る。


 切り裂かれて、ただでさえボロボロだったマントの耐久がなくなったのか、消滅していく。

 消滅したマントの下にいたのは、やたら細い手足に、布製のだいぶボロボロになった服をまとい、その上から金属製の防具を要所要所に装備している。腰にはアイテムを入れてあると思われる袋がぶら下がっている。そして、今手に持っているナイフ以外にも武器を持っており、直剣を背中に背負っている。そして、露出している肌の色は緑色。ゴブリン種の中でもオーソドックスな色である。


 確か【キングゴブリン】。ゴブリン種の頂点に存在するモンスターで、自分の配下を持っており、司令塔でもある。自分の配下のモンスターにアイテムを集めさせ、それを使用してくる狡賢(ずるがしこ)い相手。だったかな。


 しかし、マントに何かしらの優秀な効果でも付いていたのか、動きが若干遅くなった気がする。

 そうだな。キングゴブリンの持っているアイテムを全部破壊すれば、恐らく将軍を一回り強くした感じになると思われるから、相手の装備全部壊すか!


「人様の装備を強奪して王様気取りか?じゃあ、その化けの皮全部剥いでやんよ」


 俺はそう宣言すると、まだ距離はあるが剣を相手に突きつける。キングは突きつけられた剣に集中しているみたいだ。



 剣を王に打ち付けるが、手にしたナイフで受け流されてしまう。こちらはリーチの長い大剣、あちらはリーチの短いナイフ。しかもナイフはそれなりにいいものみたいで何度大剣をぶつけても壊れる気配が無い。

 しかも、ダークマジシャンの放つ火球も捌かなければならず、キングが懐に入るのを許してしまった。おれ自身はまだそんなにHPは減っていないが、装備している防具のあっちこっちに傷が出来ている。

 今もまた受け流された後に流れるような動作でナイフでの一撃を当てられる。


「クソッ!」

 さっきちゃんとダークマジシャンを全滅させておけばよかった。5体も…あれ?今いるの1体だけだよな。おいおい、これでさらに4体も増えたら流石に厄介だぞ?

 今ならまだ相手は油断してるから特技いけるか?でも俺は大剣使ってるから特技も基本的に大振りなで高威力のものばっかだからなぁ。もっと手数で攻めるものを用意しておけばよかったな。

 まあ、一か八かで使うか。この状況で最適なのは…。自作のアレだな。アレだったら火力は俺の手持ちの特技の中でも高い方の奴だ。


断閃(だんせん)一之太刀(いちのたち)廻転(かいてん)!!」


 特技を発動させる。


 発動した瞬間に自分の体が自動的に引っ張られ、一度剣を横なぎに振るう。キングはその攻撃をナイフでうまくいなし、受け流す。だが、俺からすれば都合がいい。横なぎに振るった剣をそのままの勢いで1回転。遠心力もたっぷりと乗った2撃目ををキングに叩きつける。

 流石に2撃目までは防ぎきれなかったみたいで、キングを吹き飛ばすことに成功する。


「あ、やべ」


 吹き飛ばした先にあったのは、普段なら迷路のような裏路地を突破しなければ到達できないであろう怪しい感じのする魔具屋であった。

 キングは壁を壊しながら魔具屋の中へと転がり込む。

 ああなってしまっては追いかけて狩るよりも、今のうちにダークマジシャンを倒して負担を減らした方がいいな。

 そう判断した俺は多少のダメージは無視して即効でダークマジシャンを倒そうとそちらを向くが、いつの間にか5体に増えていて、火球や氷粒、小さな雷撃が飛んできている。


「おいおいマジかよ。チクショウ!」


 ダークマジシャン共は俺が特技でキングを吹き飛ばしている間に集結し、魔法を唱えていた。しかし、とっさには反応できないため、せいぜいできた事といえば、自分の顔を小手で覆われた手で庇うことだけであった。


「グゥッ」


 次々と当たる魔法を耐え切り、視界の端にあるHPを確認すると、それなりの量を削られてしまっていた。顔を庇った腕や、魔法が直撃しまくっていた胴体が痛むが、それで動きを止めるわけには行かない。

 痛みをこらえてダークマジシャンに向かって走り出す。ちゃんと対応できればあの量の魔法だったら多分捌ききれる。


 そんな思惑があったが、横、正確には先ほどキングを吹き飛ばした魔具屋の方角から、なにやら赤いガラス玉が飛んできた。そして、それを俺は反射的に剣で切ってしまった。


 爆発と共に火が上がる。


 吹き飛ばされ、何度も地面に体を打ちつけながら転がる。

 俺が転がっている間に、先ほどのガラス玉を投げたキングが背中の直剣を抜きながら走ってくる。

 俺は体制を立て直すために、自分から勢いを殺さないようにそのまま転がって距離を取ってから立ち上がり、剣を中段で構えて相手の攻撃に対応できるようにする。

 しかし、キングに対応しようとするとダークマジシャンが魔法を打ち込み、そちらの対応をするとキングが回収したと思しきアイテムを使って攻撃してくる。

 しかし、今までだって一人でこれぐらいの困難は乗り越えてきた。


 とりあえず最初にまだ6割ほど残っているHPを回復するために、回復薬を飲み込む。

 一人で戦うときにHPの管理を怠ると死ぬ。それで何度死に掛けたことか。


 次にすることはダークマジシャンを完全に無視することだ。何度火球を放ってきてもそちらの対応は決してしない。

 そちらの対応をしようとするたびにキングに妨害されるのであれば、始めからキングを攻撃することだけに集中しよう。


 そう決心してキングを見据えたが、なぜかキングは俺と目をあわせている感じがしない。視線は交差しているはずなのになんでだ?…まさか俺の後ろ?そんな古典的な手には乗るわけには行かない。

 だが、本当に数%の可能性も考慮しなければ一人では戦えない。それが出来ない奴が一人で戦うとすぐに死ぬ。たかが数%。されど数%だ。


 俺は前のキングから意識を逸らさないようにしながら後ろを振り返る。


 そこにはなぜかアリシアが尻餅をついた状態で、俺とキング達を見上げていた。

 おかしいな。当初はウェイルズにあんなことさせる予定じゃなかったんだけどな…。

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