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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛二十二回目

 敵はどんどん接近してくる。しかし、僕に残されたMPはもう無い。門のところに設置された櫓からは援護射撃が入るが、それでも相手に当たらなければ意味は無い。基本的に逸れるか、当たっても雀の涙程度のダメージ。まぐれ当たり以外の矢は全部前衛のゴブリンの手によって弾かれてしまっている。


 どうしたらよいか分からず、途方にくれていると、櫓の上からロープが垂れてきて、なんかやたら体格のいいおっちゃんが、捕まれと行ってきたため、僕はそれに捕まろうとした。しかし、視界の端、チャット画面を開いていないはずなのに、テキストが表示される。なになに?


『緊急防衛クエスト【斥候部隊の殲滅】』

 クリア条件:門に到着されるまでに殲滅する。

 失敗すると、接近された門の方角からMOBが無限湧き(ポップ)するようになる。


 なにこのクエスト。新手のいじめ?しかし、これで僕が櫓の上に登り、上から門を開けようとするMOBを魔法で攻撃することは出来なくなった。しかも、この場には僕しかいなく、その上僕はもうMPが無くなってゆっくりと自動回復を待つ身である。八方塞がりとはこのことか?

 いや、何かを忘れている気がするが、この表記が全プレイヤーに行き渡っているとしたら、もしかしたら誰かが来てくれるかもしれない。そんな可能性の低すぎることに淡い期待をこめて時間稼ぎをするなんて、きっと僕の精神が先に折れるか、僕のHPが無くなるかの二択となってしまうだろう。


「どうした、早く掴まれ。それともボウズはここからクソゴブリン共を登らせる気か!!」


 おっちゃんが大声で登るように催促してくる。きっと彼は優しい人なのだろう。しかし、僕はこのロープを手にすることは出来ない。

 ロープを掴もうとしていた手を引っ込めると、門に背を向ける。


「おい、ボウズ!?クソ、全員気合入れて弓を引けよ!!あのゴブリン共を殺すぞ!!」


 おっちゃんは櫓の上にいる人たちに指示を出し、自分も弓を引き、矢を放ち始める。心なしか先ほどよりかは命中率が上がったみたいだが、それでもゴブリンの手にした獲物で弾かれてしまうためろくなダメージが入らない。


「MPの切れた魔法職なんて役立たずなんだからとっとと失せやがれ。邪魔なんだよ!!これでも飲んで消えろ!!」


 その声に反応した僕は、おっちゃんの方を見上げると、何かが落ちてくる。落ちてきたものは低級のMP回復薬だった。これじゃあ回復に時間がかかる上、そんなにたくさんの魔法は使えない。

 ん?たしかMPを回復するための何かを…アイテムに・・・!?

 そうだ、そうじゃないか、一発でMPを回復させる方法があったじゃないか。


「20秒時間をください!!」

「うるせえ!!消えろ!!俺達が20秒といわずに奴らを()殺してやるよ」


 僕はMP回復薬を飲むと、アイテム欄を開き、スクロールしていく。まだ大して持ち物を溜め込んでいないため、目的のアイテムは割りとすぐに見つかった。


 【魔力の果実】


 僕はこれをアイテム欄から直接、使うを選択すると、MPが急速に回復していく。回復したMPと、先ほど飲んだMP回復薬で回復した分を合わせると、アイスフォールを使える分だけMPが回復した。

 僕はMP回復薬の効果が切れる前にアイスフォールを使った。これで後は15秒耐えれば勝ちだと思う。さっきの魔法を乱発したときに、全体それなりにダメージを食らい、少量ながらもNPCの攻撃でHPも減っている。きっとこれは勝てるだろう。が、問題が一つだけ存在する。


 魔法を使った頃には敵がだいぶ接近してきていたので、このままだとアイスフォールの範囲から逃れてしまうかもしれないということことだ。

 NPCのおっちゃん達が矢を必死に放っているが、それは足止めにすらなっていない。


 …しょうがない。生き残れるか分からないけど、何もしないよりかましかな?


「おい、ボウズ、何してる。お前は魔法職だろ?おい!!クソ、ここは任せたぞ!!」


 僕はゴブリン達が範囲を抜け出さないように、走って接近する。きっと僕はあっさりやられてしまうはずである。が、魔法がちゃんと発動するまで奴らをあの場所に留めることに成功すれば、きっと僕がやられてもNPCの人たちだけでもどうにかできるはずである。


 ゴブリンに近づくにつれ、その醜悪な顔が細部まで見えるようになっていく。正直に言うとすごい怖い。しかし、VRってすごいな。敵のゴブリンにすら、息遣いがあることが分かるんだもんよ。しかも、自分よりも格下と思しきプレイヤー(ぼく)が近づいていっているのもあって、殺戮できることに興奮したような息遣いである。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 僕は今すぐUターンしてしまいそうになる自分の精神を押さえ込むように、大きな声で叫びながら先頭の剣を持ったゴブリンに杖で殴りかかる。

 まさか魔法職の僕が直接物理で殴りかかることを予想していなかったのか、最初の一撃だけはゴブリンに入った。

 だが、剣を横なぎに叩きつけられ、杖を叩きつけた後で身動きの取れなかった僕は地面を転がることとなった。今の一撃で満タンだったHPが半分近く削れてしまっている。確かに僕は元々HPが高い方ではなかった。けど、敵の攻撃力の高さに、背筋がぞっとする。けど、ここで足を止めてしまえばただの的に成り下がってしまう。

 僕はそのまま前に走り続ける。


 攻撃されたことで僕を倒すべき対象としたゴブリンたちが追いかけてくる。やはりというかなんと言うか、相手の方が早く、あっという間に追いつかれてしまいそうだ。だけど、もうすぐだ、あと数秒で

「うっ!」

 突如足が動かなくなり、僕は地面に倒れこんだ。そのため、考えていたことが強制的にストップさせられてしまう。

 足を見ると、矢が僕の足を地面に縫いとめてしまっていた。

 不幸中の幸いなのは、僕の体には当たっていないところだろうか。僕の体ギリギリのところに矢が突き立っており、僕の装備しているものを貫通して地面と縫い合わせている状態だ。


 矢を掴み、無理やり引き抜こうとするが、今の僕のレベルのSTRじゃ足らないみたいで引き抜けない。

 そうこうしているうちに、元からあまり離れていなかった距離を詰められ、ゴブリンに追いつかれてしまった。

 ゴブリン共はニタニタとした嫌悪感を抱くような表情で各々が手にした武器を振りかぶる。だが、ここをあと少しだけ粘れば…。


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 僕は手にした杖を振りかぶり、不意打ち気味に叩きつけようとするが、あっさりと受け止められ、取り上げられてしまう。その様子を見てゲラゲラと笑い始めるゴブリン共。だが、こうして時間を浪費してくれるのが一番ありがたい。

 なんせ、そろそろ時間だ。


 空が一瞬光った気がした。


 そして、降り注いだ氷の塊が地面に叩きつけられて砕ける音が大音量と共に響き渡る。


 うん、自分の放った魔法は自身のダメージは入らないというのがあってよかった。もしそうじゃなきゃ僕のHPは最初の一個が降ってきた時点でなくなってしまっていただろう。しかし、ダメージは入らないけど当たり判定はあるみたいで、その場から吹き飛ばされてしまう。

 地面と空が何度も入れ替わり、自分がどんな体勢になっているのかが分からなくなった頃に、ようやく体の動きが止まった。


 体を起こすと、周囲は土煙が立ち込めており、視界を一切確保できない状態になっていた。多分これで敵は全滅してるといいかな?

 してるよね?


 少しすると、土煙も収まり始めたのか、目の前がまったく見えない状態から少しだけなら見えるようになった。

 僕は見える範囲にゴブリンの影が無いことを確認すると、その場に座り込んでしまう。どうやら敵は全滅したみたいだ。

 さて、MPの残りはせいぜいアイスの魔法を一回唱えられる程度しかない。まあ、自動回復で徐々に回復してはいるんだけどね。

 そこで油断してしまったのがいけなかった。そもそもまだ防衛戦は続いており、敵の影が無かったからと言って敵を全滅させたわけではなかった事もある。


 薄まり始めたとはいえ、まだ視界の状態が悪い中、突如土煙を裂いて剣を持ったゴブリンが飛び出してきた。そのゴブリンは装備がボロボロになり、体にかろうじて引っかかっている状態で剣を振りかぶっている。

 僕はとっさに反応できなかった。出来たのは、振り下ろされ始めた剣を見てから体を傾けることしかできなかった。


 振り下ろされる剣がスローに見えたが、僕の体の速度が上がるわけではない。振り下ろされた剣は、僕の右腕を切り飛ばしていった。部位欠損の状態異常である。

 もちろん、ショッキングな光景ではあるが、痛みが一切発生していない。ここは流石VRというか、現実だったら多分ショック死してしまっていただろう。

 クルクルと回転していた僕の右腕は、地面に落ちると粒子を撒き散らしながら消えていった。

 HPが残り1割を切ってしまった。そして、今もHPの現象は続いている。


 2撃目を加えようと剣を再び高く掲げるゴブリン。きっと次の一撃で僕のHPはなくなってしまうだろう。

 ゴブリンが剣を振りかぶっているのを、呆けたように見ていると、急に服の襟首を掴まれ、引っ張られた。そして、さっきまで僕のへたり込んでいた場所にゴブリンの剣が叩きつけられる。

 引っ張られた衝撃で仰向けになった僕の口になにやらビンのようなものを突っ込まれた。そして、その中身が口の中に入った瞬間、僕は吐き出しそうになってしまった。とてもじゃないがこの世の飲み物じゃないと思ってしまう。

 しかし、視界の端に映るHPバーが、減少ではなく、回復を始めたことから、それなりに強力な回復薬を突っ込まれたんだということを理解した。

 そして、すぐ近くで剣と剣がぶつかり合う甲高い音が響き始めた。

 顔を上げてそちらを見ると、先ほど僕に下がれだの逃げろといい続けていた、体格のいいおっちゃんがゴブリンと剣を交わしていた。

もう少しだけヤマト視点です

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