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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛一度目

 僕、中山(なかやま)勇人(はやと)は、高校に入ってから始めての夏休みが訪れようかというこの時期にある決意をした。それは、VRゲームを買うといったものである。今まではお金がたまらなくて、買いたくても買えなかったが、臨時収入があったため、買える様になったのだ。


 そのため、同じクラスのとある少女に話しかけることにした。


 少女の名前は、将門(まさかど)(あおい)といい、僕と同じでゲームが大好きである。後は、なんか表情が動いているのをあまり見たことない。周りの人たちも見たことないみたいである。僕とは話も合うこともあり、このクラスでは多分一番中がよいとすら思っている。

 まあ、向こうがどう思っているかは、知らないけど。


「ねえ葵さん、VRゲームを始めようと思ってるんだけどさ、なにかおススメとかってある?」

「VRゲームで?」

「そう」

「…」


 ん?そもそも葵さんは、VRゲームをしたことあるのか?まあ、なかったら一緒に始めればいいのかな?向こうにやる気があればだけど。

 しかし、葵さんは、一応美人の部類に入るほど可愛い。見た目だけだったらゲーマーだとは分からないぐらいである。

 だから、葵さんが何かを考え込んでいるだけで中々絵になる。後、周りの男共の羨望や嫉妬の視線がすごい怖い。


「…そうね、まず中山君はどんなジャンルがいいの?」

「そうだな、FPSとかよりはMMOの方が良いかな?ファンタジーなものがやって見たいかな。」

「…じゃあ、攻防戦とか、防衛戦メインのVRMMOでもいい?」

「ファンタジーだったら何でもかまわないよ」


 僕がそう答えると、少し安心したような空気を出して。


「私もしばらくやってなかったんだけど…『ディフェンスウォーアドバンス』って言うの一緒にやらない?」

 葵さんからゲームのお誘い入りました!これ現実?向こうから誘ってくれたことって今までで、一度たりともなかったのに。


「分かったよ、今日早速買ってくるね」

 そうと決まったら、今日は午前授業だから、ATMよって金を下ろして、早速行きつけの店に行こう。


「私も一緒に行く」

「? 今なんと」

「だから私も一緒に行く」

「えっと、なんで?」


 僕は思わずそう尋ねた。別に嫌なわけじゃない、寧ろ嬉しいぐらいである。でもなぜという気持ちが先行してしまう。


「初期設定が面倒だから。それと、中山君の行きつけの店が知りたいから」

 わかってるさ。ここで僕は勘違いするほどではない。この高校に入ってから幾度となく葵さんに勘違いさせられてきたから。これはきっと自分のゲームを買える場所を増やしておこうという考えだろう。


「あと、初期設定は大変だから一回家に来て」

「そんなに大変なの?」

「多分設定だけで2時間はかかると思う。」

「・・・」

「一般に普及するのに、設定の手軽さを犠牲にしてサイズを手軽なものにしてあるから」


 なるほど、おかげで僕達も手軽に手に入れられるようになったというわけか。

 …ん?今葵さんはなんて言った?家に来てって言った?これはまさか。


「一人じゃ途中で変な設定にしちゃうかもしれないから」

「変な設定?」

「男の人が設定をミスってどんなに頑張っても、強制的に女性アバターにされてた」


 きっと彼女の良心なんだろう、心配はされているが、決してそのような、恋愛感情を抱いていないとよくわかる言葉である。僕も女性アバターにされるのは嫌です。



「早く行こう」

 放課後になって、僕が帰りの準備をしていると、すばやく帰りの準備を終えた葵さんが、かばんを持って待機している。

「もう少しだけ待ってください」




「ここが僕の行きつけの店だよ」

 僕と葵の前にはこじんまりとしたゲームショップが建っている。このゲームショップは規模としては小さいけど、意外と品揃えが豊富である。ここを経営しているおじさんに値切り交渉は効かないが、ほしい商品を注文すると、どのような手段を用いても早く仕入れてくれるのが特徴だ。

 その他にも、二ヶ月に一度、このゲームショップでは、地域密着型のゲーム大会が開催される。この大会の勝者には、ここだけで使える商品券のようなものをもらえる。


 僕は前回この大会での勝者となったため、おろした分のお金と合わせると、VR機器がぴったりの値段で買えるのだ。ウハウハな気分がとまらなくて困る。


「おじさん、VR機器って置いてあるよね」

 おじさんは軽く片手を上げると、

「いらっしゃい、置いてあるよ」

「それってどこに置いてある?」

「ちょっと待ってろ、今出してやるから」


 おじさんはそう言うと、店の奥に引っ込んでしまった。


 しょうがないからその間、葵さんと一緒にいろいろ見ることにした。無邪気な目でゲームを見て、時折手にとって確かめている。気に入ったゲームがあるといいな。


「おう、取ってきたぞ」

「ありがとうございます」


 会計の際におじさんと少し話したけど、無事に買い物も終えた事を葵さんに伝えると、

「じゃあ、家に行こう」

 そして、僕を先導するように歩き始めた。


 ちなみにおじさんとはこんな会話をした。


「なあ、中山君よ、今日一緒に来た子は彼女かい?」

「あはは、そうだとよかったんだけどね」

「なんだ、ちがうのか?」

「はい、彼女とはゲーム仲間ですよ」


 なんて会話があった。




「着いた」

 僕は葵さんの家に初めて訪れた。家の規模は普通の、ごく一般的な住宅であった。


「ただいま」

 先に葵さんが家に入っていく。中からは出迎えてくれた親と思しき人が、葵さんと話しているのが聞こえる。


「おかえり、今日は午前授業だったのに少し遅かったのね」

「友達の行きつけの店に行ってた」

 そうか、僕はやっぱり友達という扱いで、そういった感情はないのか。改めて確認できてよかった。

 …残念がってないよ?ホントダヨ?


「じゃあお昼ご飯は食べてきたの?」

「ううん、ゲームショップだったから」

「お昼ご飯は用意してあるから、早めに食べちゃいなさい」

「…えっとね。お母さん」

「何?葵」

「実は友達が来てる」


 会話が止まった。やけに長い沈黙が続いてるな。そんなに驚くことなのだろうか。


「友達って、一定以上仲が良くなったって人のこと?」

「そう」

「・・・」


 驚きすぎじゃないのかな、葵さんのお母さん。


「…グス」

 葵さんのお母さんが急に泣き出した。どういうこと?


「ついに葵が友達だと認めた人が我が家に来たのね」

 彼女は今まで友達いなかったのかな。


「じゃあ入れてもいい?」

「いいわよ、いくらでもいいわよ」

「ん、分かった。連れてくる。でもその前に泣くのだけは止めて」


 玄関のドアから葵さんが出てきた。


「許可はとった。どうぞ」

「う、うん」


 僕が彼女の後に続いて玄関のドアをくぐると、そこには葵さんの顔を少しいじって大人にしたらこうなるんだろうな。と、思えるような女性が立っていた。少し目が赤いのは、さっきまで泣いていたからだろう。

 その女性は僕を見ると、驚いたような表情をし、

「え?お友達って男の子だったの?」

 えっと、男だと何かまずいんでしょうか。

「えっと君の名前は?」

「中山勇人といいますけど…?」


 葵母は、僕の手を握ると、

「今後とも葵のことよろしくね」

 と、お願いされた。


「葵さんは僕にとっても、数少ない大事な友人です」

 僕はゲームをやりこみすぎて、適度にしかやらない周りの友人からドン引きされてますからね。


「なにしてるの、早く来て」

 葵さんは、僕と葵母のことを軽く睨むと、そのまま――――彼女の自室があるのだろう――――すぐ前にあった階段を上がっていく。

 僕は慌てて葵母に一礼をすると、彼女の後を追った。




 家族以外の女性の部屋に入るのは、実は始めてである。

 とりあえず最初にしたことは、買ってきたVR機器の箱を開けることだった。女性の部屋に入ったから何か起こるはずも無い。寧ろ大事な友人をなくしかねない行為になるので絶対にしません。


 箱の中から出てきたのは、装飾品であるチョーカーに小さな四角い箱がついたものと、ヘッドフォンが入っていた。これがVR機器?


 僕は葵さんの指示に従って初期設定を済ませていった。確かに時間がかかる。全部終わったころには、もう日も傾いて、夕闇が広がっていた。


「結構長居しちゃったな」

「別に平気」

「それじゃあ、僕はそろそろ帰るね」

「ちょっと待って」


 彼女はそう言うと、僕のVR機器を手に取り、少し弄り始めた。ほんとに少しで作業が終わったのか、すぐに返してくれた。


「リンクしておいた」

「リンク?」

「同じVRゲームをやれば自動的にフレンド登録されるはず」

「なるほど、ありがとう」

「今回のゲームはスタート地点がランダムだから手間を省くため。あと、帰ったらゲームの設定だけはしておいて」

「了解、それじゃあね」

「ん、見送りぐらいはする」


 僕は葵さんと一緒に玄関まで行き、そのまま帰路についた。

 葵母に挨拶ぐらいはと思ったけど、彼女が頑なにダメと言って聞かなかったので、少しモヤモヤ気分だ。


 家に帰りついたころには辺りはすっかり暗くなっていた。

 もともとそんなに遅く帰る予定ではないと親には伝えていたため、メチャクチャ怒られた。

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