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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛十七回目

 ログインすると、辺りは少し騒がしくなっていた。そりゃあ、もうすぐで防衛戦が始まるのだ。慌しくもなる。

 僕は持ち物を確認してみることにした。報酬とはなんだ?

 持ち物欄を下へスライドしていくと、見慣れないアイテムが収まっていた。


【魔力の果実】

 MP回復 +500

 一度だけMPを回復させることが出来る。なお、回復した際に、余剰回復の数値分プレイヤーのMP上限を上げることができる。(一度死ぬか、二時間経過すると元に戻る)

 畑で増やすことが出来る。


 魔法職には嬉しいアイテムだなぁ。畑についてはマドイさんに後で聞こう。


 報酬アイテムを確認した僕は、広場へと向かう。広場に行けば、きっと何かあるだろう。

 広場に着くと、作戦の伝達でも行うのか、同じ紋章をつけた人たちが、せっせと何かを準備しているところだった。


「何しているんですか?」

「ああ、うちのギルドが考案した作戦を、他のプレイヤーにも伝えるとかで、その準備をしてるんだよ」

「作戦?」

「ああ、こういうものには付き物だからね。まあ、どんなに綿密に作戦立てても、そのとおりに事が起きるなんてことは無いから、最終的には現場の判断が大事になるんだけどね」

「へー、そうなんですか。教えてくれてありがとうございますね」


 僕はそう告げるとその場を後にし、広場の中央にある噴水の淵に腰を掛け、自分のステータスの確認を行う



ネーム:ヤマト

LV:9


HP:480

MP:770


装備:桜の杖 (水と風の魔法に+補正、火耐性火攻撃ダウン)

   魔力のピアス

   マジックスキン

   黒魔のローブ

   スネークベルト

   黒猫袴 (敵攻撃のクリティカル率ダウン 小 ドロップ率ダウン 中)

   魔力吸収の腕輪 (MP自然回復速度上昇 微小)

メイン称号:初級者魔法使い

装備称号:【迷子】・弱者・水の使い手・初心者・レスキュー



 まだ迷子の称号外せないのか…。でも、あそこの露店では意外といいものを、安い値段で購入できたため、大幅なステータスアップに繋がっている筈だ。

 それに、今回は僕も戦闘に参加するはずだ。


 僕は噴水の淵に座りながら、確認作業を続けていく。そうしているうちに、広場には人が集まり始め、マドイさんもやってきた。


「マドイさんは報酬ってなんだったの?」

「属性の付いた矢が各五本ずつだった」

「あれ?僕とは報酬が違うんだね」

「同じものをもらっても、扱いに困るから装備称号によって変わる」

「へえ、そうなんだ。あ、それと、畑について何か分かる?」

「畑は土地を買わなければ使えない。あと、畑で増やしたアイテムは性能が下がって、増やした方を使って、もう一度増やすということは出来ない」

「え?効率悪くない?」

「強いアイテムを増やされ続けたら、他の人が(いちじる)しく不利になる」

「ゲームバランスの為なのかな?」

「きっとそう」


 僕は気になっていたことをマドイさんに片っ端らから聞いていく。

 マドイさんはの方は、虚空から視線を逸らさずに返事をしてくる。


 マドイさんから話を聞き終わる頃に、一人の女性プレイヤーが、先ほどのプレイヤーが準備していた壇上に上がった。

 きっと、さっき少し話したプレイヤーの所属するギルドの偉い人だろう。しかし、壇上に上がった女性プレイヤーって、なんか綺麗なお姉さんというよりも、カッコいいお姉さんといった感じの女性プレイヤーだな。


『では、これより【第二次ファルフラムの町の防衛】の作戦を伝える。なお、優秀な町民と、うちのギルドの技術班の尽力により、この広場だけではなく、一応この町中に、この音声は届いているはずだ』


 へえ、広場じゃなくても聞こえるんだ。と、思っていると、広場の端にぐったりとしたプレイヤーと、町民の一団がいる。うん。やっぱり大変だったんですね。マドイさんも労るような視線をその一団に向ける。

 すると、何を勘違いしたのかは分からないけど、視線を向けられたプレイヤーが、他のプレイヤーに、リア充化かコノヤロウ!!と言われながら殴られ始める。そこにはNPCも混ざっており、そのNPCはきっと独り身なのだろう。(ひが)(ねた)みって怖いね


『今この町にいるプレイヤー、この町の人々の言葉を借りるならば冒険者の諸君は、最初の配置ぐらいは我々に決めさせて欲しい。その後は各自の判断にゆだねる。好きに動いてくれて構わないが、我々の妨害をするのであれば、容赦はしないことも覚えておいてくれ』


 まあ確かに、そのせいで、勝てるものも勝てなくなるかもしれないだろうし、当然の処置なのではないだろうか。しかし、頭ではそのことを理解できるのに、動きを制限されるという感情が、その発言に対して怒りを買っているといった状態だろうか。回りのプレイヤー達は何かがあったら今すぐあの女性プレイヤーに攻撃を仕掛けそうだ。

 すると、その女性プレイヤーの隣りに、見覚えのある金髪のNPCが現れた。


『なあ、そんな事言っちゃっていいのかよ。俺は勝手に動くぜ』

『我々はこの町を守ることを最優先に動いているだけだ。だから、その妨げとなるものは切り捨てなければならない』

『それがNPCでもか?』

『いや、NPCは保護対象だから殺しはしない』

『そんなに縛ったら、ほかの冒険者達は付いて来ないんじゃないのか』

『それでこの町を守れないのであれば、本末転倒です』


 なにやら二人は言い争いを始めたが、どこかその様子がぎこちない。なんでだ?

 疑問の解消は思わぬところから来た。


「フフフ。下手な三文芝居よね?ウェイルズとリーダーさんには、演技向いてないんじゃないかしら。あなた達二人もそう思うでしょ?」

 そんな声と共に現れたのは、見知らぬNPCだった。いや、待てよ。確かどこかでこの人とはあったぞ?確かアレは…そうだ、ササさんを連れて戻ったときに、町長の近くにいた女性NPCだ。たしかウェイルズさんにアリシアと呼ばれていた気がする。


「確かアリシアさんですよね?」

「あら?名乗った覚えは無いのに知っているってことは…」

 なぜか少し距離を置かれた。僕は弁明しようとするが、その前に、ウェイルズが私の名前を呼んでいたのを聞いたんでしょ?と言ってくる。


「そんなことより、三文芝居?」

「そうね、前回の防衛の前も似たようなことしてたわね。あれで、役割分担をしているのよ」

「…役割分担ですか?」

「そう、好き勝手動いて前線の敵を殲滅する班と、そのサポート班。そっちは殲滅班が討ち漏らした敵の掃討が主な作業かしらね。まあ、サポート班と称してはいるけど、そっちの班の人も突撃とかするみたいね」

「ちゃんと考えられてる」

「でも、そのたびにあの三文芝居を見せられるこっちの身にもなってほしいわね。芝居っていうのが丸分かりなのに、そのことに気がついてないみたい」


 初めての人ですら、見抜けるのにね。そう言いながら、その女性NPCはクスクスと笑う。その姿に、僕は迂闊にも見とれてしまった。そんな僕にマドイさんは蹴りを入れてくる。


「ちょ、なんで蹴ったのマドイさん!?」

「女性をそんな不躾な目で見てはいけない」


 うう、これが嫉妬から来る蹴りだったらどんなに嬉しかったことだろうか。しかし、マドイさんは僕に対してそのような感情を持っていないことは、先ほどの晩御飯の時に実証されてしまっている。非常に残念である。


「別に私は気にしてないから大丈夫よ。それより、話が進行したみたいね」

 笑って許してくれた彼女の言うとおり、壇上では話――――ただし演技――――に決着がついたみたいだ。


『最前線で暴れたい奴は俺に付いて来い。腐れモンスター共を一掃してやろうぜ!!』

 そう言いながら、片手を高く突き上げているウェイルズさんと、

『では、最前線に行きたくない方々は、前線の方が討ち漏らしたものを狩り、敵に生き残りが出ないようにしましょう』

 仕方が無いという雰囲気をかもし出している女性プレイヤー――――きっとこれも演技だろう――――が、ウェイルズさんよりも半歩下がった位置で(たたず)んでいる。


『では、どちらに付いて行くかを決めたら、そちらの方でパーティーを組んでください。最低でも5人以上とします』


 壇上のプレイヤーがそう宣言すると、辺りのソロや、コンビを組んでいるプレイヤー達が忙しなく動いて規定の人数以上になるように募集を募り、固定パーティーは、どちらに付くかで議論を交わすため、広場が騒がしくなる。きっと他の場所でも似たような感じになっているのだろう。


 そして、僕達を発見したのか、壇上のウェイルズさんとバッチリ目があった。そして、口の動きだけで何かを伝えようとしてくるが、僕は読唇術なんて出来ないから分からない。そのため、首をかしげていたのだが、ウェイルズさんはこちらに歩み寄ってくる。当然そうなると回りの人たちから注目を集めてしまうので、居心地が非常に悪くなってしまった。


「パーティーはそのまま組み続けてたはずだよな。それで後は二人だが、あてがあったりするか?」

「まだそこまで交友関係を広げてない」

「そうか、じゃあうちの自警団の奴らでもいいか?」

「僕は別に構いませんよ?」


 自警団の方が一緒だろうがなんだろうが、僕達にできることなんて、たかが知れている。そう思ったが、

「ちょっと待ってくれ。俺たちをこのパーティーに入れちゃくれないか?」

「ああ?間に合っている。大丈夫。いらない。お帰りください」


 声を掛けてきたが、即行で拒絶されたのは、何度か会っているダグロとフォックスの二人組みだった。


「断りいれるの早すぎだろ!!もう少しだけでも考えてくれよ!!」

「それでもダメだ」

「理由を言えぇぇ!!こっちの納得できる理由じゃなきゃ俺は引き下がらないぞ!」

「もう正直に言えばいいじゃん。僕達二人はあぶれてしまったので、入れてくださいって」


 食い下がるダグロに、フォックスが投げやり気味にそんなことを言う。言われた瞬間にダグロは固まってしまい、フォックスを睨みつける。しかし、フォックスは目をそらして口笛を吹いているが、それがとてもわざとらしい。そんな二人に僕は同情、ウェイルズさんは哀れみの視線を投げかける。マドイさんはいつも通りの無表情で二人を眺めている。


 結局、哀れに思ったウェイルズさんが、二人にパーティー申請を送ることで決着が付いた。ダグロの方はこっちに話しかけてきたときよりも、心なしか背中が小さくなっている気がした。

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