防衛十六回目
今回は現実サイドの話のため、少し短めです
体が眠りから覚める感覚と共に、ゆっくりと目を開けると、見慣れた天井が視界に入る。僕はベッドから起き上がると、部屋にあるパソコンへと近づき、弄り始める。
パソコンの画面に、DWAの公式サイトを表示させると、次の防衛戦がいつかを調べると、なんと今晩の7時からみたいだ。
僕は居間へと行き、そこで昼食の仕上げをしている母さんに、今日の晩御飯がどうなるか聞いてみたところ、父さんの帰りを待つため、時間がいつになるかわからないみたいだ。冗談だと言ってくれると非常に助かるんだけどなぁ。
僕は自分の部屋に戻ると、一緒にログアウトしたはずのマドイさん…葵さんに連絡を取ることにした。
電話の向こうで呼び出し音が響く。これを聞いているときって、なんだか不安になっちゃうんだよな。なんでだろう。
『中山君?どうしたの?』
「ああ、ちょっと今回の防衛戦に参加できるかわからないんだよ」
『どうして?』
僕は葵さんに説明をすると、葵さんは少しの間沈黙し、回答をだす。
『じゃあ、家に来ればいい』
「…はい?」
『だから家に来ればいい。家だったら環境も整ってるし、晩御飯もだす』
「え?でも時間いっぱいの防衛だったら泊まり込みになると思うけど?」
『お父さん今日帰ってこないから大丈夫』
「そういう問題じゃなくてね、僕は一応男だよ?」
『大丈夫。中山君にそんな度胸はない』
「・・・うん」
僕だって男だよ。やるときは…うん。腰が引けて出来ないや。
「分かったよ。じゃあ、適当に理由つけてから行くね」
『ん。了解』
僕は葵さんと、もう少しだけ話すと、次は、男友達の中で、一番中のいい奴に、電話をする。
「もしもし、ケイか?」
『なんだよ急に電話なんてよこしてさ。またゲーム談議か?お前のはちょっとディープすぎてついていけないからパスな』
電話口からケイのめんどくさそうな声が返ってくる。それもありかな。と、思った僕は、思考を無理やり元の、電話をかけた理由へと戻す。
「違う違う。ちょっとケイの家で一晩泊まっている事にしたいんだよ」
『なんでまたそんな…まさかテメェ、女か?女が出来てそこに転がり込む気か!?俺より先に恋人を作るなんて、お父さんはそんなことをする子に育てた覚えはないし、絶対に許しませんよ!!』
「それ完全に嫉妬じゃないか!!それにそんな関係じゃないよ」
『そんな関係じゃないと。ホホウ。女であることは認めると』
「そ、そんな訳ないじゃないか。ただその人の家でDWAをやるだけだよ」
電話口で少し沈黙があったあと、ケイが震え声で
『なに?お前あのマゾゲーやってんの?』
「あれ?ケイやったことあるの?」
『いや、掲示板の情報とかでだけど?』
「あれ意外と楽しいのに。いい、あれにはね――」
僕がDWAについて、経験したことを熱く語ろうとしたが、ケイに遮られてしまった。
『分かった分かった、とりあえず俺の家にいるって事にすればいいんだろ?』
「うん。面倒ごとは回避したいからね」
『その面倒ごとが俺に来ているんですけど?』
「うん。ガンバ」
『うおぃ!!』
ケイの慌てた声に、ひとしきり笑うと、冗談だと言ってなだめる。ケイは落ち着くと、
『まいいや。じゃあ、明後日だ。明後日に詳しい話を聞かせてもらおう』
「詳しい話って何さ」
『決まってるだろ、誰の家に泊まり、どんなおいしいイベントがあったのかを聞くんだよ』
「ええ!?」
『協力するんだ。それぐらいあってもいいだろうが。それと、宿題出来てるところまででいいから、写させてくれ』
「どっちか片方に『ならねえな』…ハァ、わかったよ」
『おっしゃ、成立だな』
その後少し話すと、僕は母さんに泊まりに行くことを伝えに行く。果たしてうまくいくだろうか。
「で?どこのお宅のお世話になるのかしら?」
なにやら母さんの背後に、若干黒っぽいオーラが漂っている気がする。そして、なぜか母さん隣りには僕の姉も座っている。
「えっとね、ケイの所で泊まろうと思ってるんだけど…」
「ケイって?」
「同じクラスの斉藤軽野のことだよ。姉さんは確か知ってるよね?」
「もちろん、お目付け役ということで、私も一緒に行っていいよね?」
「ダメに決まってるじゃないか!!なんでそれでOKだと思っているのさ!!」
「私はそのほうが安心できるからいいけど…」
「ケイが安心できる時間が無くなるよ!!」
姉さんは、なぜかケイのことを一目見た瞬間から気に入ってしまい、猛烈なアタックを敢行しているが、ケイにその気はまだ無く、あしらわれてしまっている。それでも諦めてはいなく、最近姉さんの部屋に行くと、中から既成事実とか、そんな感じの単語が聞こえてきて、僕はそれについて考えるのを放棄している。姉さんがケイの家の場所を知らなくて、本当によかった。
そんな姉さんが、僕も通っている学校の風紀委員長をやっているのが、いまだに信じられない。いや、信じたくない。
「それに、これは僕達二人は大事な話をしなきゃいけないから、姉さんが来ると困るんだよ」
「よし、行っていいわよ」
なぜか今まで渋っていたはずの母さんが、急にOKサインを出してきた。そして、反対に姉さんは、ギャーギャー文句を言っている。なんで急にOKになったんだろう。まあ、そこを追求したら、きっとOKから、NOに意見が変更される恐れがあるため、何も言わないことにしておく。ついでに、絶対に来ないように行っておいた。こうしておかなければ、絶対にケイの家に来るやつが現れる。姉さんとか姉さんとか姉さんとか。
「じゃあ、行ってくるね」
僕は昼食を食べ終え、必要なものをそろえると、家を出て行く。母さんは見送りに来ていたが、姉さんは顔を出さなかった。
勇人が出て行った後、お母さんが居間に戻ってくる。
「ねえお母さん。なんで急にOK出したの?しかもお目付け役無しで。私も行って軽野君と会いたかったよ」
「ダメよ、二人っきりにしなきゃ」
私が文句を言うと、なぜかお母さんはうっとりとした表情で、そんなことを言って来た。そういえば、お母さんの部屋の中を覗き込んだことあるものだけしか、今のお母さんの言葉に秘められた真意には気がつかないと思う。
私が意を決して飛び込んだ、お母さんの部屋に置いてあった物には、男同士の絡みの薄い本が、本棚を埋め尽くしていたことを、思い出す。私には理解できない領域だなぁ…。
「今晩は豪勢に行きましょう。ふふ腐」
とりあえず、勇人にはご愁傷様だわ。
居間には、時折出てくるため息と、怪しげな笑い声が響き渡るのが、約30分ほど続いたという。
なんで僕は正座をさせられているのだろうか?自分に何の落ち度があったのか分からないため、振り返ることにしよう。
確か、葵さんの家に着いた僕は、葵さんに連絡をするか、いきなりインターホンを押すかで、大体15分ほど悩んでいた。そこに、外出先から帰ってきたのか、葵さんの母親が出てきて、僕を家の中に上げてくれた。
そこに様子を見に来た葵さんと遭遇、葵母が何かを言う前に、僕の襟首をすさまじい力で掴み、引きずるように自分の部屋へと僕を引っ張っていき、この状態である。
「えっと?なんで僕は正座させられるの?」
「お母さんにはばれたくなかった」
「でも、どうあがいてもばれちゃうよね?」
「うっ…」
泊まるとなると、どの道親の許可は必要だろう。葵さんはちょっと待ってて。と言うと、部屋を出て行った。
どのくらい待っただろうか、時折階下から、大きな声が聞こえてくる。僕は自分の家から持ってきていたものは本当に必要なものだけなので、手持ち無沙汰気味になり、部屋の中を見渡す。
写真立てが、勉強机の上に伏せた上体で置いてある。…見ても大丈夫だろうか。
僕が写真立てを見てしまうか、見ないかで悩んでいると、葵さんが荒い息をしながら戻ってきた。写真立てを見なくてよかった。
「許可下りた」
「そ、そう。大丈夫?」
「大丈夫。少しする?」
その後僕達は、DWAを少しして、装備の確認や、僕は新しい魔法の習得、マドイさんは情報収集をしてすごした。
晩御飯をご馳走になっているときに、なぜか葵母から、やたら、娘とずっと友達…いや、むしろそれ以上の関係になってください。とか、娘のことを末永くお願いしますね。とか言われ続けた。
しかし、そのたびに葵さんが、ずっと友達それ以上でも以下でもない。とか、末永く友達としてよろしく。とか言われ、僕のライフは、もうとっくにやばい事になってしまっている。
ここまで否定され続けると、さすがにメンタル的に傷つくよ…。
ログインする前に、前回の防衛戦の結果が出ていたため、葵さんのパソコンで確認すると、僕達は中間ぐらいの順位だった。きっと最後のクエストが、大きな加算となったに違いない。それに伴って、報酬が手元に送られているみたいだ。ログインしたら確認しよう。
そして、僕は一足先にログインすることとなった。理由は簡単である。葵さんはシャワーを浴びてからログインすると言ったのだ。
……の、覗かないよ?こんなところで好感度を、友達から知り合いに落としたくない。それに報酬がすごい気になるし。い、言い訳じゃないやい。
僕はまた眠るように意識を失って、ゲーム世界へとログインをする。




