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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛十五回目

「おう、来たか」

 そう言って工房の中から顔を出したのはササだ。


 一晩明けて、俺が最初にした行動は、ササのところに装備の強化を頼むことだった。そして、なぜかこの場にはヤマトとマドイもいる。どうやら俺よりも先に来ていたみたいだ。

 ヤマトはマドイの装備の受け渡しと、試作品の試し撃ちの見学だそうだ。試作品がどんなものなのか気になるので、俺も見学させてもらうことにした。回りを見てみれば、作業をしていた奴らも、興味があるとばかりに作業の手を休め、弓を持つマドイを注視している。


 マドイは緊張するでもなく、普段と同じような自然体で試し撃ちの出来るスペースへと行くと、矢を番え、次々と放っていく。

 マドイの弓を構え、矢を放つ姿に、、試作品の性能を見るために注視していた奴等が、マドイ本人に見惚れる。そして、誰かがボソッと戦乙女(ヴァルキリア)?と呟くと、瞬く間にそれが工房内に伝わっていった。


 試し撃ちを終えたマドイが、珍しく顔を赤くして、戻ってきた。やはり恥ずかしかったみたいだ。

「で?どうだった?」

「まだちょっと耐久の減り方が激しい。それと、命中率にも難あり」

「まだ改良の余地ありか」


 ササは考え込むそぶりを見せると、マドイにお礼と、次は新しい素材を盛ってきたらと言った、連絡事項を伝えると、奥に引っ込んでいった。

 そのササの服の襟を掴む事で、俺はササが奥に行くのを阻止する。


「何するんだよ」

「お前に頼みたいことがあるんだよ」

「私に用って事は、装備の強化か?それとも装備の耐久の回復か?」

「両方だよ、材料もそろったし、耐久もだいぶなくなってきたからな」


 なぜかマドイとヤマトも、立ち去らずに、こちらに聞き耳を立てている。俺はそんな二人組みを軽く睨むと、ヤマトは露骨に目を逸らし、マドイはなぜか見つめ返してきた。

 …こっちが根負けして目を逸らしてしまった。目を逸らした俺を見て、マドイ手元で小さくガッツポーズをして、工房内の職人たちの視線を感じ、赤くなって俯いてしまった。


 俺はとりあえずササに材料と、自身の武器である【ヴォルカニック+30】を渡すと、ササは、仕事がまったく減る気配がねえ。とかブツブツ言いながら奥に引っ込んでいく。


「で?なんでお前らはまだいるの」

「えっと、その」

「なんだよ。はっきり言ってくれ。何がしたいのか分かんねえだろうが。冒険者は相手の目を見て話さないのが多い気がするんだが?」

「布専門の防具店で、どこかいいところがないか教えてほしいんです」


 そう言って頭を下げてくるヤマト。そんなヤマトの頭を、よくできましたと言いながら、マドイが撫で、ヤマトがそれを躱そうとしている。


「…で?俺に防具店を紹介してほしいと言うことか?」

「はい、そうです」

「…そういうのは自分で見つけてくれ」

「なんで?」

「そういうのは自分で探すもんじゃないか?まあ、悪徳商人に捕まらないように、付添ぐらいはしてやるよ」

「ツンデレごちそう様」


 ツンデレってなんだ?でも不愉快な気分になる。

 俺は二人に声をかけずに工房を後にしようとすると、二人は慌てて追いかけてくる。追いかけてきた二人に前を歩かせると、俺はゆっくりとその跡を付いていく。


 二人はとりあえず広場に出ると、あたりを見回す。

 普段の広場なら、町長に許可を取った露天が、少しある程度だが、これを商売のチャンスと取ったのか、冒険者、商人問わずに、所狭しと出店や露店を開いている。

 その中の一つの店舗にヤマトが視線を向けると、そこの店主であろう男が、ヤマトに対してか、片手を軽く上げる。ヤマトは一瞬硬直したが、すぐにその露店へと駆け寄る。


「よう、久しぶりだな。これにも慣れたか?」

「えっと、まあ、それなりに」

「知り合い?」

「うん。少しお世話になったんだ」

「なんだよ、お前隣に彼女とかリア充かよ!!たっぷりふんだくってやるよこんチクショウ」

「違う。ただのクラスメイトの友達」

 なんか急にヤマトがニヤニヤし始めたかと思えば、マドイの言葉の後に、急にうなだれて落ち込み始めた。

 それを哀れに思ったのか、露天の冒険者はヤマトに安くしておくよと言っている。その言葉を聞いて、マドイの目が心なしか光った気がする。


「魔法職系の装備ってある?」

「魔法職系?ああ、一応置いてあるよ。でも、譲ちゃんは弓使いだよね?」

「あ、魔法は僕です」


 ヤマトが復活したみたいだ。目の端にある水滴は、きっと、暑いから汗が目に入ったのだろう。決して涙じゃないはずだ。


「と、言うことは、次の防衛戦に合わせて装備の更新をしようということか?」

「そんなところです」

「まだ初心者装備って事は、装備をそろえるための金でも貯めてたんか?」

「変える機会がなかったんです」

「じゃあ、それなりに金は貯まっているということか」


 男はそう呟くと、手を振り、虚空を集中するように見始めた。ある程度品を定めると、次々と物質化させていく。

 最終的に、防具が合計15ほど、魔法職専用の武器が計4つほど、出てきた。


「こんなかから選んでくれ。値段も、そこまで極端に高くなるものは入ってないからな」

 店主がそう言うと、二人は早速物色を始める。

 この人は多分自分がもぐったダンジョンなどで、モンスターの落とした装備を売る人間なのだろう。もしかしたらアクセサリーで、面白い効果を持った掘り出し物があるかもしれないと思い、俺も店主と交渉をするが、パッとしたものはなかった。代わりに、効果はそんなに高くないが、いい物を見つけたので、少し色をつけて買い取る。

 買い取ったアクセサリーは【ヤモリリング】と呼ばれるもので、効果は、一度だけなら、必ずモンスターを撒いて逃げることが出来るというものだった。

 外見は、普通の宝石つきの指輪と大して差はないが、なぜか宝石を収める台座の部分が、生物的な装飾となっている。これを作った奴は、何がしたかったんだろう。


 手に入れたアクセサリーについての考察をしながら二人を見やると、まだ物色しているみたいだ。まだまだ時間のかかる雰囲気のため、俺はこの辺にある露店や、出店を回ってみることにした。





 あらかた店を回り、必要と思ったものを購入して、元の露店に戻ると、取引がちょうど終わったみたいで、ヤマトの装備が大幅に変わっている。が、なぜか懐を触れては、虚しい表情をする。


「なあ、コイツ何があったんだ?」

「お金使い切った」

「ああ、それであの情けない顔か」

「僕の貯めたお金…」

「代わりに、装備の大幅な更新できた」

「それは分かってるんだけどね…はぁ」

「それで、お前は何を買ったんだ?」


 武器はしまったみたいで、見当たらないが、ヤマトの格好を見ると、先ほどの初心者丸出しの、安っぽい装備から、黒い布地に赤い魔方陣の織り込まれたローブに、ふさふさした毛を貼り付けたようなズボン。手には指貫のグローブを装備している。


「ちょっとはマシになった」

「マシって何さ!?」

「顔と装備がまったくをもって調和してなかったんだよ。それはもう目も当てられないくらい」

「僕ってそんなに酷かったの!?」


 ヤマトはガックリと肩を落とすと、俺たちを怨めしそうな顔で見てくる。


「それで、お前らはこの後どうするつもりなんだ?」

「あ、僕は用事があるので…」

「狩りも出来ないから、少し家でのんびりする」

「そうか。じゃあな」


 俺は二人に背を向けると、そのまま広場を後にした。あいつらといたら、それなりに時間を潰せたから、そろそろササに預けた装備も耐久とかの回復が終わっているはずだ。


 工房へと向かっていると、冒険者の姿をチラホラ見るようになってきた。多分この辺にいるのは耐久の回復をしようとしている奴等だろう。

 俺は絡まれる可能性があるかもしれないので、顔をなるべく見られないように伏せて歩く。


 工房に着くと、中から何か言い争うような声が聞こえてくる。俺は気にせずに中に入り、ササから修復の終わった装備を受け取る。


「ありがとな」

「そんなことより聞いてくれよ、さっきからあそこで言い合ってる奴らのせいで、作業に集中できねえ職人どもがいるんだよ。職人どもに一括入れるか、言い合ってる奴らをどっか他の所に引っ張っていってくれないか?今回の修理の代金を安くするぜ?」

「分かったよ、とりあえずあそこにいるや…あれ?片方は【ブルードラッグ】のリーダーじゃないか?」


 ギルド、【ブルードラッグ】は、この町を拠点としているギルドで、俺たち町民とは一応良好な関係を築いている。

「言われてみりゃ確かにそうだな」

 三人が向かい合っているが、その中の一人が確かに、ギルドリーダーのテーリアだ。

 テーリアは、ほかの二人と何か言い合っているみたいだ。


「だ~か~ら~、こっちは、一回やられてるんだよ!!だからクソMOB共を処分するために指揮を、こっちのギルドの【烈風騎士団】にやらせろって言ってんだよ!!」

「うちの団長が本当にスイマセン。でも、指揮をやらせて欲しいというのは本当ですよ?なんせこっちは経験があるんですから」

 ああ、あっちの二人は話に上がった、【烈風騎士団】の奴らか。…団長失格じゃねえのあれ。


「君達の言いたいことは分かりました。が、何度も言っているように、この町の自警団と協力して守ってきたのは、我々【ブルードラッグ】なんです。町を滅ぼされた経験のあるギルドになんか、指揮を任せることは出来ません。なので、あなた達の話は参考程度に聞いておきます」

「NPCがどうしたってんだよ!!俺たちが満ぞ「はい、そこまでだ」」


 俺は言い争いの中に、無理やり入っていった。ぶっちゃけると、【烈風騎士団】の団長の言い分に腹が立ったので、無理やり話を切っただけである。


「誰でしょうか?そちらのギルドの関係者ですか?」

「ギルドなんぞに所属するわけないだろ。自警団の方だ」

「NPCごときがこっちの事情に口挟むんじゃねえよ!!おとなしく俺たちの命令にしたがってればいいんだよ!!」

「なあ、自警団の権限って知ってるか?クソ野郎」

「わぁぁぁ!!スイマセン。うちの団長頭に血が上りやすいだけなんです!!決して悪気があるわけじゃないんですよ」

「とりあえずさあ、これだけは言わせてくれないか?」

「とりあえず私が聞きますね。なんでしょう」

「お前らそういう会話するんだったら、町長のところでして来い。工房でやられると、いろんな人の迷惑になるんだよ」


 その後、なぜか俺も町長宅で、一緒に作戦決めなどの相談ごとに参加させられた。もう、ゆっくりとする予定だったんだけどな。まあ、別にかまわないんだけどな。…別になんとも思っちゃいねえよ、本当だよ?


 町長宅にアリシアがいたのが、俺にとって、唯一の救いだった。

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