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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛十四回目

 俺たちは小屋の主の手伝いを済ますと、俺とササにとっては故郷。ヤマトとマドイ――――畑の手伝いをしているときに、改めて自己紹介をした――――にとっては拠点である、ファルフラムの町へと帰ってきた。

 その道中に聞いた話の内容をまとめると、


 モンスターの思考パターンが、今までとは別物になっており、過去には一度もしてこなかった、姿を隠しての別働隊がいたことが、とんでもない脅威になっている。俺の記憶にある限りは、モンスターがこんな行動をしたことはない。もちろんリセット以前もだ。

 そして、そのせいで町の中にモンスターが進入。その後、元々攻めてきていたほうから、モンスターの大群が来て、西と東の門を壊された結果、逃げ道が少なくなり、パニックになった町民のいる避難所に攻め込まれ、町民の対処に当たっていた冒険者が残らずやられ、町民の大半は殺された。その中には町長も含まれていたというわけだ。


 ササも襲われたが、マドイとヤマトがその場にいたため、何とか生き残ることに成功。逃げ道である、無事な門に向かうが、そこはすでに、モンスターに占領されており、突破の出来ない状態だった。

 そこで、ヤマトが、マドイの持つ矢に、ササの持ち出していたロープを括り付け、マドイが壁に向けて放ち、そこから脱出しようとしたが、そんなことしたら、もちろん目立つ。


 モンスターが群がってきたが、装備がボロボロになっている二人組みの前衛職が、その群がっているところに突っ込んで行き、かく乱。おかげで三人は脱出できたが、二人はやられてしまう。


 モンスターの追撃をけん制しながら逃げるが、さすがにしんどくなったので、先ほどの小屋を発見し、そこに駆け込んで一晩明かした。一応あの小屋は、距離が離れているはずなのに、ウッドロックの一部ということになっていた。そのため、弱いモンスターは入ってこないんだとか。


 まあ、何はともあれ、無事でよかった。それと、かく乱してくれた二人組みには、会えたらササが何かお礼をするみたいだ。


 と、まあこんなとこだろう。


 俺はまとめたものを文章に直す。理由は簡単だ。故郷の町長に見せ、相談するためだ。もしかしたらこの情報が役に立つかもしれないしな。

 そう思って町長宅に足を運んだんだが、なぜか町長は、ブリッジをして唸っていた。


「…何……してる…んだ?」

「おお、ウェイルズよ、戻ったか。実はのう、ゴブリン共の動きが活発になってきているとの報告があってのう。それで対策を考えておったんじゃよ」

「…そうか。それでその格好の意味は?」

「特にあるわけないじゃろうが!!」


 急に声を荒げた理由が分からん。つらいなら止めればいいのに。


「町長久しぶり~」

「ホグゥッ」


 町長の死角から近づいたササが、挨拶と共に町長の突き出されていた腹に、かかと落しを決め、そのまま足を乗せ続ける。

 町長は不意打ちを受け、痛む腹を押さえて転がりまわろうとしているみたいだが、ササの足がそれを押さえ込んでいて出来ない。


「「・・・・・」」


 入り口のところで、その光景を呆然と見ている冒険者二名。


「ササ、一緒に来てる冒険者の方が困っているでしょ」

「ああ、スマンスマン。どうも、町長の奇行を見ると、踏み潰したくなる」

「ゴホッ。ワシそんなゲホッゲホッ。そんなに悪いことしたのかね?」

「ごめんなさい町長。庇える要素がどこにもなかったです」

「冒険者が来るかもしれないのに、あの体勢でい続けるのはちょっとまずいだろ」

「安心せい、お主らが門を潜ったという報告が来てから、あの体勢をし続けたんじゃからな。むしろ、ワシの体力がありふれているところを褒めてもらいたいものじゃ」

「はいはい。すごいすごい」

「心がまったくこもっておらんじゃと!?」


 なんだろうな。俺としては早く本題に入って寝たいんだけどな。ササと町長、アリシアが会うのが、久しぶりなのもあり、おとなしく見ていたが、そろそろ俺も冒険者二名も限界だ。割り込ませてもらおう。


「それで、用件はゴブリンについてかのう。伝えたいことがあるんじゃろ?」

 …これだから町長にはかなわないと思ってしまう。こっちの話したい内容と、話すタイミングを心得ているんだから。けど、あの奇行は本当にやめてほしいと思う。初見じゃなくても精神的に疲れる。


「そうだな。今回のヘイストリムの町の防衛で、ゴブリンが今までにない行動を取ったみたいなんだ」

「今までにない行動?」

「ああ、その辺はササと、そこの二人に聞いてくれ」

 俺はササと、ヤマト、マドイを親指で指しながら町長に伝える。


 町長はそちらに向き直ると、話を聞き始める。そうして出した結論が、


「では、この町のギルドリーダーと、出来ればその烈風騎士団の団長殿にも話を聞きたいところじゃのう。あとは、そのお主たちが逃げるための時間を稼いだ、最前線で戦ったと思しき二人組みもじゃな」

 といったものだった。


「その二人組みに当てはあんのか?」

「当てがあるというより…」

「なんだ?歯切れ悪いな」

「この前ウェイルズと戦った人」

「っと言うと?」

「あのダグロとか言う黒い人達」


 …あいつ等かよ。なんだかんだで、接点あるんだな。


「じゃあ、見かけたら連れて来てくれるかの?話をしたいんじゃ。烈風騎士団の団長の情報はこっちで集めておくからの。それと、おそらくじゃが、早ければ明日。遅くとも明後日までにはゴブリンが襲ってき来るじゃろうから、準備があるのならばしておくとよいぞ」


 町長はそう告げると、書類を取り出してはサインする作業に戻っていった。俺達はとりあえず町長宅を出ることにした。アリシアも用はもうないのか付いて来た。


「まだ時間あるみたいだし、一つ頼みごと聞いてくれないかしら?もちろん、そちらの冒険者の方も一緒に」

 町長宅を出てから、初めて口を開いたアリシアの言葉である。


「頼みごとってなんだ?」

「そんなに難しいことじゃないから安心して。ちょっとね、防衛戦に使う回復薬と矢の量が足りないのよ。だからね、あなた達に材料の調達をお願いしたいの」

「それはね、手のあいてる人がいないのよ。私の知り合いで手が空いてるのが、あなた達ぐらいなのよ。もちろん報酬は弾むわよ」


 冒険者二人組みは悩むそぶりを見せると、

「僕は受けてもいいと思うけど」

「断る理由がない」


 二人は参加を決定したみたいだ。そして、俺の方をチラチラと見てくる。まあ、実際に必要になるものが足りなくなっていると言うし、俺にも断る理由はない。

「じゃあ、俺もやっておくか」

 俺がやる意思を見せると、『採取クエスト【材料の回収】を受理しました』と、目の前に表示が出てきた。

「ありがとうね」

 アリシアはそう言うと、自分の店のある方向へ、走っていった。


「じゃあ、あたしも工房にでも行くか。マドイ、お前の装備の修復請け負うけど、渡してくれるか?」

 ササはマドイから胸当てと、弓、それと試作品とその素材を受け取ると、工房へと足を向ける。


「マドイさん。これから町の外に出るのに、武器渡しちゃってよかったの?」

「採取だけだし大丈夫。耐久値もあんまり残ってなかった。それに、今回は優秀な護衛がいる」

「…護衛って俺のことか?」

「よろしく」

「・・・」


 赤髪のほうは、いまだに納得した空気は出さないが、それでも俺に頭を下げてくる。付き合いがまだ短いのでなんとも言えないが、今までだったらまだ食い下がってくる確率のほうが高かったはずだ。この短期間で何があったのだろうか。


「じゃあ、早速行こう。報酬を受け取ったらヤマト君の装備も更新したいし」

「あ、確かにそろそろ新しい装備が欲しいし、戦略に幅を持たせるために新しい魔法媒体が欲しいところだね」

「よし、行くか。この周辺に何があるかは大体頭の中に入っているから、案内できるぞ」

「お願いします」

「そうだ、パーティー組まなくてもいいの?」


 ヤマトからこの発言が飛び出したことに、俺は驚きを隠せない。マドイも同様のようで、同じく驚いた表情をしている。


「なんで僕はこんなに驚かれなくちゃいけないの?」

「そりゃ…なあ」

「散々噛み付いてたから」

「僕にだって意地を張るべき場所と、折れるべき場所を心得てるよ」

 そ、そうか。コイツもこいつなりに色々考えているのか。


「採取行かないの?」

 マドイが首をかしげながら聞いてきた。意外とここで時間食ってたみたいだ。俺たちはパーティーを組むと、急ぎ足で町の門へと向かう。



 途中二度ほどゴブリンの襲撃を受けた以外は、順調に必要なものを集めていく。その過程で、魔法触媒の元となる素材を発見することが出来た。

 これを魔法触媒を取り扱っている店に持ち込むと、いくらかの金と引き換えに、触媒を作ってくれる。しかし、この近辺で集めることのできる素材だけじゃ、せいぜいDランクの物がいい所だ。

 しかし、それでもヤマトは嬉しそうな表情で素材を回収していく。訳を尋ねると、


「だって、使える魔法の種類とかが増えるだけで、戦略の幅が鼠算的に増えるんですよ?ありすぎて損するといったことはないはずですよ」

 だそうだ。…鼠算って何?


 とりあえず必要なものは全部回収できたので、アリシアの元へ急ぐ。急ぐ理由は簡単だ。いつゴブリンが攻めてくるのか分からないため、いつも開いている門が閉じられるのだ。

 俺たちは今まさに閉めようとしている門の中に駆け込んだ。門が閉まると同時に、きっと転移石も使用できなくなるはずである。


「アリシア、持って来たぞ」

「ありがとう。じゃあ、早速受け取るね」


 アリシアがそう言うと、集めた素材の数々が、なくなっていく。きっとアリシアの元へと移動しているのだろう。全部移動が終わると、

『採取クエスト【材料の回収】を達成しました』

 このテキストと共に、採取系にしては大目の報酬額が、俺の所持金に追加されていく。マドイとヤマトにもちゃんと渡されたみたいで、ヤマトが小躍りしている。


「んじゃ、ここからは防衛戦まで別行動でいいだろ?」

「ん。大丈夫」


 マドイは、いまだに踊っているヤマトの首筋を掴み、無理やり引きずるように出て行く。

 マドイたちを見送った俺の頭部に衝撃が走る。俺は頭を抑え、見上げると、アリシアがなぜか少し怒った顔で俺を見下ろしてくる。なんで?


「せっかく、初めての冒険者友達が出来るチャンスだったのに」

「いや、頼んでない上に余計なお世話なんだが…」

「こっちとしては余計な軋轢を生み出さないか心配なのよ」

「心配されても…俺には冒険者の友達なんて不要だよ」

「何でそこまで頑なに拒むのかしら?ぜひとも理由を教えてもらいたいものね」

「・・・」


 やっぱりこれは教えられないな。こうなるに至った理由も説明しなくなったら、間違いなくリセットのことも話さなければならなくなる。


「急に黙っちゃってどうしたの?」

「やっぱり、こればっかりは大好きなアリシアに対しても言えないな」

「このタイミングで大好きって言われても、ごまかしているようにしか聞こえないわよ」

「まあ、そんなことより飯でも食いに行かないか?」

「またそうやってごまかす。しょうがないわね、あなたのおごりで付き合ってあげるわよ」


 アリシアはため息を吐いたが、俺の触れて欲しくないという空気を感じ取ったのか、普通に付いて来てくれた。


 ちなみに、店の選局を任せたら、先ほどの報酬が全部無くなりました。あんな高額のところに行くなんて、俺聞いてないよチクショウ。

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