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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛十二回目

少し長くなったかもしれません。

 ササの要望に、うなずくことで了承したマドイさんは、スレッドを指でなぞり、始めの方へ持っていき、みんなが見れるようにゆっくりと進めていく。そこには


『防衛戦始まるぞー、他の町に居てこれなかったギルドの人間は居るかい?』『用事がある奴以外全員居る筈だぜ』『よっしゃ間に合った』『群れが来たぞ』『ゴブリンか』『全滅させる?それとも時間いっぱい食い止める?そ・れ・と・も…オ・レ?』『今すぐお帰りください』『帰れ』『ちょっとふざけただけじゃないか。イッツ・ア・ジョークだよ』

『とりあえず今回は全滅させる方向で行きましょう』『『『了解』』』『統率個体は分かりますか?』『ちょっと待っててくれ』『将軍が10体。後は通常個体』『分かった。じゃあ僕達の拠点を守り抜きますよ!!』『『『応!!』』』『ギルド員は私の指示に従い、敵の殲滅をします。それ以外の方は各自で判断。我々の邪魔だけはしないでください』

『おっしゃ一番槍は俺が行くぜ、ついでに将軍一体は潰してやんよ』『付き合わされるこっちの身にもなれよ!!』『骨は拾ってやる(予定)安心していって来い』

『くそ、遅れてなるものか』『行くぞ!!星の速さでえぇぇぇぇ!!』『『『ガンバwww』』』『止めろ、全力で言った俺が恥ずかしい』『そんな君に最適な言葉を送って進ぜよう』『慰めてくれるのか!?』『みんな、合わせろよ』『ハイよ』『分かった』『了解』『あ、スゲーいやな予感』『せーの』『『『m9(^д^)プギャー』』』『(;_;)ブワッ』『ほれ、早く行けよ』『ちょっと心が痛え、いつの間にダメージ!?』『錯覚だ』『だから安心して逝け』『字が違くない!?』

『一番やりゲットぉぉぉ!!』『一人で飛び出すなよ』『あ、ちょ、ま、囲まれHPが』『自業自得だな』『巻き込まれてる隣の彼がかわいそうね』


 なんだろう、知り合いみたいな人がいたんだが?きっと気のせいなんだろうな。マドイさんを盗み見るけど、何やら複雑そうな顔をしている。

「何だか知らないが馬鹿な奴もいるんだな。単騎で突っ込むなんて度胸あるな。こんな奴にだったら武器を作ってやりたくなるな。知り合いだったら連れてきてくれよ」

「まだ確証がない」

「そうかい」


 再び読み進めていくと、


『NPCほんと役に立たねえ』『囮か?』『いやいや、一緒に戦ってるNPCも守ろうよ!!』『生・還』『おかげで僕の装備もボロボロだよ』『囮はやめとけ。重要なNPCが紛れていることあるんだから』

『援護しま~す』『おいやめろ、俺たちを巻き込むな』『伏せろぉぉぉぉ!!』『反応できるかバカがぁぁぁぁ!!』『意外と順調みたいですね』『大体殲滅しましたよ』『こっちもそれなりに被害出ましたけどね!!』『カリカリすんなや』『『『お前のせいだよ!!』』』

『残りは将軍が3体取り巻きは計10体かな』『なんかNPCがこっちに走ってくる』『なんだと?男か?女か?』『男だ』『じゃあ、適当に用件聞いちゃって』『…女だったら?』『俺が行く、お前は前線にでも逝って来い』『よく見たら女性だった』『今いくぞぉぉぉぉ』『じゃあ任せた』『用件はちゃんと聞いてくださいよ?』

『残り1体、取り巻き全滅。いけます』『最後はギルドのほうで処理しますよ。アタッカー全員でアタック!!』『HP削り切りました』


『急報、西門突破、別働隊にボス発見』


『こちらにもゴブリンとホブゴブリンが大量に湧きました』『援軍は出せるか?』『ギルドの一部を向かわせます』『狩りの時間じゃぁぁぁぁ!!』『おいバカ先走るな』『あれのどこが女性じゃゴラァァァ!!』『気にするな』『気にするわ!』

『町に被害が出始めています』『どんなボスだ?』『確認します』『クソ、NPCを下がらせろ』『引いてくれねえんだよ』『あ、目の前で一人散っていった』『確認できました。トリックゴブリンが取り巻きとして20体、ボスはゴブリンキング1体です』『送り込んだ方達だけでは足りませんね、私が出ます。他にも何人か来てください』『『了解』』



 ここまで読んだところでこのスレッドは切れていた。新しいことを書き込む余裕がないみたいだ。

「なんと言うか、私達町民のことをバカにしている割には、こいつらも馬鹿なんじゃないか?」

「否定できない」

「でも、これって戦闘中のはずなのに、どうやって書き込んでるの?」

「それはまた今度教えるから。それより今は…」

「しょうがねえな、ちょっと商売道具まとめるから待ってくれねえか?」

「え?でも、それだと店が」


 僕の言葉を聞いたササは、鼻で笑うと、

「この店は借りもんだ。本命の店は、ある程度金を稼いだら、地元の町に開こうと思ってたんだよ。だからここは通過点。通過点でクヨクヨして、後ろばかり振り返るなんて出来るか。なら、たとえ何を失っても、最終目標に向かって、あきらめずに食らい付くだけだ」


 ササは僕達と会ってからは、初めてと思われる真剣な表情をしている。

 ササのその表情を見ていると、どこか遠くで、何かが壊れていくような音が、僕たちのところまで届く。音の方角を見ると、西側のとある地点で粉塵(ふんじん)が上がっている。西門と思しき所よりも中心側、僕たちのほうへと近づいている。


「急いで準備してくる、10分が目安だな。マドイ、こいつを預かっておいてくれ」


 ササはそういうと、試作の弓をマドイさんに手渡し、店の奥へと引っ込んだ。僕たちは店の入り口から大通りに移動し、スレッドを確認することにした。


『思っていた以上に西門側の敵厄介だぞ』『西門周辺の建物は全滅しました』

『物量作戦って怖いね(死んだ魚の目)』『おい、東側の門も破られそうだぞ!』『大きい木を持ってきてますね』『ああいうのってなんていうんだっけ?』『破城鎚じゃなかったけ?』『ホブさん30体がかりの破城鎚ですか。止めるの無理じゃね?』『やばい、門に突っ込まれるぞ!』『アッーーーーーーーーーー!!』『くだらないネタやるなよww』『門が破られましたぁぁぁ!!』『後続のゴブリンの侵入だけは最低限防いでください』『ごめん無理、もう進入されちゃった』


 ここまで読み進めたところで、東側を見ると、そちらに黒煙が吹き上がっている。もう完全に町の中まで進入されており、そこから駆除するのが大変そうだ。もしかしたら時間いっぱい持たないかもしれない。


「杖出して」

 マドイさんが突如、弓に矢を番えながら僕にそう声をかける。マドイさんの見ている方向を見ると、醜悪な顔のゴブリンが、(ハウンドボア)にまたがって接近してくる。あの中に弓を持つゴブリンはいないみたいで、全員接近系の武器を構えて突っ込んでくる。


 僕は慌てて杖を取り出すと、先制攻撃として、『アイス』の魔法を先頭のゴブリンに叩き込む。叩き込まれたゴブリンは、(ハウンドボア)から落馬――――この場合は落猪?――――した。そして、そのまま後ろから追随してきていたゴブリンの乗る(ハウンドボア)に撥ねられ、光を振りまきながら消滅していった。


 マドイさんも矢を何回か打ち込み、ゴブリンを自分の群れに跳ねさせていく。こんなときに範囲魔法を媒体に入れておかなかった自分に憤りすら感じる。しかし、所詮はないものねだりである。

 気持ちを切り替えて、ゴブリンを乗せている(ハウンドボア)を狙って魔法を放つ。

 僕の狙った結果は起きなかったが、それでも何体かを巻き込んで数を減らすことには成功した。それでも、それなりの量のゴブリンが残っている。


 そして、僕達の一方的に攻撃できる距離から、近距離装備のMOBが、遠距離装備のプレイヤーを蹂躙できる距離になってしまった。この距離まで接近されると、僕達後衛職は弱い。MOBに一方的に殴られてやられてしまう。


 ハウンドボアに乗ったまま、汚いさびた剣を振り下ろそうとしてくるゴブリンを杖で殴り、その後ろに控えていた奴に魔法を打ち込む。


 それ以上は無理だ、ゴブリンの持つ棍棒が、勢いよく僕の顔に叩き付けられる。

 僕は衝撃で後ろに引っくり返る。

 そこに一体のゴブリンが足を止め、汚く錆びた剣を振り下ろしてくる。視界の隅に写るHPバーがみるみる減っていく。


 僕を剣で切り続けていた――――剣が錆び付きすぎて、この場合は殴るの表現が正しいかもしれない――――ゴブリンが、突如奇声を発していなくなった。


「大丈夫?」

「まだ大丈夫!」

 どうやら助けてくれたのはマドイさんみたいだ。僕がマドイさんを探して視線をめぐらすと、今まさに殴られたのか、倒れこむマドイさんの姿が映った。


「『アイス』!マドイさんの方こそ大丈夫なの!?」

「私はまだ大丈夫だから、先頭に集中して」

「わ、分かった」


 とはいえ、このままじゃジリ貧で負けるのは確実だろう。

 パーティーメンバーのHPを確認すると、もう半分を切っているし、僕なんかもうとっくに危険域までHPが減ってしまっている。たぶん僕たちはこのままやられてしまうかもしれない。


「うちのお客様に手ぇ出すんじゃねえよ!!」


 店の中から飛び出したササが、手近なゴブリンに振り上げ大鉄槌を振り下ろす。ゴブリンはその攻撃を受け、光を振りまきながら消えていった。

 突如現れたササの存在に驚いたのか、浮き足立ったゴブリンの群れの、一番ゴブリンの少ないところに僕は魔法を打ち込む。僕の意図に気がついたマドイさんとササは、僕の攻撃した方向へと、同じように攻撃し始めた。


 そこから1分もかからずにゴブリンの群れの包囲網を突破した。

 包囲網を突破した僕達は、手近な民家に飛び込むと、追撃を仕掛けてきたゴブリンをやり過ごす。ゴブリンたちが行ったのを確認すると、気が抜けて座り込んでしまった。



「街中までゴブリン共が入り込んでるじゃねえか」

「攻城兵器で門を突破したみたいだよ」

「なんだ、あの後スレッドとやらに新しい情報でもあったのか?」

「うん、西側の門だけじゃなくて、東側の門も、さっき言った攻城兵器、えっと、確か破城鎚だったけな?」

「なんだそのロマンあふれる武器は。作ってみてえ」

「いやいや、アレは複数人で担いで門とかに特攻しかけるものだからね!!」

「なんだ」


 ササは少しショボンとしている。そういえば、さっきからマドイさんは何もしゃべってないけどどうしたんだろう。

 そう思ってマドイさんを見ると、虚空を見つめている。視線の先に特に気になるものがないことから、スレッドを確認しているのだろう。


「なあ、マドイは何してるんだ?」

「多分スレッド見てるんじゃない?僕も見ようかな」

「見るんだったら、私も見れるようにしてくれ、二人ともあんな感じになったら、私がすごい困る」


 ササはそう言いながら、いまだに虚空を見つめ続けるマドイさんを指差す。僕は一つうなずくとスレッドを開こうとする。


「町民の避難先が襲われた?」


 ボソッと、しかし、不思議と響く音量でそれは聞こえた。

 急いでスレッドをササと確認すると、確かにそこにはそう書かれていた。それと共に、町民の護衛の全滅。町長はゴブリンに殺されたと書かれていた。

 ササはそれを見て固まってしまっている。そのとき、僕とマドイさんの視界の隅に、テキストが表示された。そこに書いてあった内容は、


『緊急護衛クエスト【唯一の生き残り】が発生しました』

クリア条件:近くの町まで避難させる。その後、知り合いの元へ届ける。

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