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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛十回目

 僕は今日は早めにログインして、マドイさんがログインするまでスライムでレベル上げをしようと思ってログインをしたら、草原に行く前にマドイさんがログインしてきた。すぐに連絡するかどうか悩んでいると、マドイさんのほうからフレンド通信が入り、昨日の場所で待ち合わせをすることになった。


 僕が広場に着くと、マドイさんはすでに昨日の場所で佇んでいた。近づく僕に気がつくと、小走りに僕の方へと駆け寄ってくる。マドイさんは僕に近づいてくると、

「すぐに町を移動する」

「え?なんで?」

「公式サイト見てないの?」

「公式サイトに何が書かれてたの?」


 マドイさんは少し呆れたような空気を出すと、

「今日ヘイストリムの町で防衛戦が行われるの。12時からで私達はまだその町に行った事ないから早めに町に到着しておかなきゃいけないの」

「あ、そうなんだ。じゃあ早速行こう。場所は分かるの?」

「地図はもう買ってある」


 そう言うと、地図をアイテム欄から物質化させると、先導して歩き始めた。時間以内に無事たどり着くためには、MOBにやられることは絶対に避けなければならない。僕は気持ちを引き締めると、マドイさんに付いて行った。



「ねえマドイさん、あそこにある町がヘイストリムだよね?」

「そう」

「町の付近って確かアクティブMOBってほとんどいないんだよね?」

「きっと今は防衛戦まじかだから、MOBが興奮しているに違いない」

「やっぱりそれのせいか!!」


 僕たちは今、複数のアクティブMOBに囲まれてしまっていた。中にはゴブリンもまぎれている。しかも、僕のMPは、さっきまで敵を牽制するのに使っちゃって、もう残っていない。まさに絶体絶命というやつだ。

 メニューを開いて時間を確認してみると、すでに時刻は十一時になるところである。戦い始めてから三十分は経過していると思う。ここまで来ておいて間に合わないというのは絶対に嫌だ。かくなるうえは、マドイさんだけでも町に届けておきたい。

 そう考えていると、後ろに控えていた弓を持つゴブリンがマドイさんに向けて矢を放った。きっと強いほうから倒してしまおう。といった魂胆なのだろう。


「ヤマト君!?」


 僕はマドイさんに飛んで行った矢を、自分の体を使って止めた。僕のHPが一割以上削れる。いくらレベルが上がったからって、まだまだ僕のレベルは低い。そのうえ防御力の低い初心者用装備だ。


「マドイさん!!僕があっちに突っ込むから、反対側のMOBを蹴散らして町に行って!!後で転移石を使って迎えに来てくれれば、僕も行けるかもしれないから」

「ダメ、今は転移石使えない」

「じゃあ、次の防衛戦をすればいいだけだよ」

「雰囲気に慣れておかなきゃ、すぐにやられるだけ」

「だからってここで全滅するわけにはいかないでしょ?」


 僕らが揉めているのをみて、チャンスとばかりにゴブリン達が飛び掛ってくる。僕は何体か杖で殴って飛び掛ってきたのを叩き落したけど、残りのゴブリンに手ひどくやられた。おかげでのこりHPは、もうわずかだ。

 視界の隅に表示されているHPバーを確認している間に、先ほど叩き落したゴブリンが激昂して、飛び掛ってきていた。これはもう防御は間に合わない。ゴブリンの手にした、刃こぼれをした汚い剣が振り下ろされるのがスローモーションで見えたが、僕は顔を逸らして目を閉じた。


 …いくら待てども、体に衝撃は来ないし、町の喧騒も聞こえてこないから死に戻り(バックレヴィバル)をしたわけでもなさそうだ。

 目を開くとそこには、ゴブリンを片手剣で切り裂く黒髪の男と、別のところで灰色の髪の男が別のMOBを殴りつけている。


「ピンチそうだったから思わず手が出ちまったけど、勘弁しろよ」

「また何も言わずに飛び出す。それをフォローするこっちの身にもなってくれよ」

「お前は優柔不断気味なんだから、俺が突っ込んで色々決めたほうがいいだろ?」


 会話をしながらMOBを次々と(ほうむ)っていく。二人が加勢してから、五分と経たずにMOBは全滅した。


「助けていただいてありがとうございます」

「お礼はいいよ、こっちもドロップが旨かったからな」

「それより、ほら時間ないけどいいの?」

「おっと、そうだったな」


 フォックスが時間について指摘すると、ダグロが慌てて町に向かって走り始めた。僕とマドイさんも、それを追って走る。するとフォックスが、「ちょっと聞いてもいいですか?」と聞いてきた。マドイさんがそれに頷いた。


「じゃあ、お二方はこの時間にここを走っているということは、防衛戦に参加するってことでいいんですよね?」

 マドイさんは無言で頷くことで、その問いに対する応答をする。


「じゃあ、提案なんですけど、防衛戦の間だけ僕たちとパーティーを組みませんか?」

「それはできない」

「なんででしょうか?」

「今回私たちは様子見と、彼を防衛戦の空気に慣れさせることが目的だから」

「そうですか、それは残念です」


 フォックスは素直に引き下がった。きっとダグロの方だったら、またごねていたことだろう。現にフォックスにお前は押しが弱い。とか、だから彼女できねえんだよ。とか言っている。まあ、フォックスの返す言葉の刃で、メッタ刺しにされてたけど。

 僕とマドイさんは、二人の漫才のようなやり取りを見ながら走っているうちに、町に到着した。


 町には風が絶え間なく吹いていて、もうすぐ防衛戦が開始されるからか、町をせわしなく駆け回る住民らしき人たちと、プレイヤーの人が見える。


 そんな彼らをキョロキョロと見ていると、一人の男性プレイヤーが声をかけてきた。

「お前らも防衛戦に参加するのか?」

「はい、その予定ですけど。あなたは?」

「ああ、僕はアルベルトと申します。この町に拠点を置くギルド【烈風騎士団(れっぷうきしだん)】の副団長です。今日の防衛戦の際の配置を決めているのですが、見たところお二人はレベルが低いようにも見えますね」


 僕はアルベルトと名乗ったプレイヤーは洞察力が高いみたいだ。僕の装備しているものだけで、僕のレベルを予想したなんて。隣でマドイさんが思いっきり初心者装備よね。とか言ってるけど僕には聞こえない。

「はい、僕は始めたばかりなのでレベルは低いです」

「じゃあ、お二人にはNPCの避難の誘導と護衛をお願いします。あとは非難し損ねたNPCの護衛ですね」

「わかった」

「了解しました」

「もうすぐ始まるからお互い頑張ろう」


 アルベルトはそう言って、どこかに走って行った。きっと自分の持ち場に戻ったのだろう。しかし、すごくいい装備をしてたなぁ。全身鉄のような鈍い感じの色ではなく、まるで鏡をわずかに曇らせたりした感じの色だった。


「もうすぐ始まるみたいだから、自分の装備とか確認しておこう?」

 マドイさんにそう促されたので、自分のステータスを開いて確かめてみる。マドイさんが僕にも見えるようにしてくれているみたいで、一緒にマドイさんのステータスも見ておく。


ネーム:ヤマト


LV:7


HP:430

MP:570


装備:見習いおもちゃの杖

   見習いのローブ

   ベルト

   見習いのズボン

メイン称号:見習い魔法使い

装備称号:【迷子】・弱者・水の使い手・初心者




ネーム:マドイ


LV:12


HP:1070

MP: 330


装備:鉄の弓+2

   ターゲットピアス+3

   草食獣の小手+1

   鉄の胸当て

   毛皮の腰巻+5

   蝙蝠比翼の臑当て

   風読みのリング+4

メイン称号:弓使い

装備称号:風読み・クール・固定砲台・冒険初級者・【最古の帰還者】



 迷子が外せなくって困ってます。どうしたらよいのでしょうか?


「じゃあ、町民を探そう?」

「うん。そうだね」

 僕とマドイさんは町を歩き始めた。時刻が正午を越えたあたりで、遠くの方から、戦闘の際に発せられる音が、町に吹き続けている風が運んでくる。この風は外から流れ込んできているらしい。

 町を走っていると、大通りに面した一軒の店から、プレイヤーと思しき男が転がり出てきた。装備を見ると、僕よりずっといい装備を使っている。誰かともめてるのかな?待てよ、まさかMOBがすでに進入していたのか!?


「何するんだ!!」

「うるせえ!!私は今手がけている装備達の完成系を見るまで死ぬ気はねえから、安心してお前も前線に行って来やがれ」

 どうやら揉めているだけみたいだ。しかし、店の中から聞こえてくる声は、だいぶ高めだ。


「NPCの幼女のくせに、MOBにやられてしまえ」

「まだ死ぬ気はねえって言ったのが聞こえなかったのか?私を意地でも動かしたければ私の興味を引くものか、顧客、またはその知り合いを連れて来い!!」

「このアマ、いい加減に」

「目障りだ!」


 何か言いかけた男の顔に、店から飛び出してきた何かが命中する。それが当たると男は、もんどりうってひっくり返り、そのままもう二回転ほど転がると、飛び起き、「くそが、絶対にこの恨み晴らしてやるからな!!」という、すばらしい捨て台詞を残して去っていった。


「何だ手前(てめえ)らは、お前らもさっきの奴の同類か?」


 警戒心バリバリで僕達を見てくるのは、赤茶色の髪を背中の中ほどまで伸ばしており、普段は勝気な表情をしているというのが伺える顔の少女。しかし、誰がどこからどう見ようとも、せいぜい十二歳程度にしかみえない。


「いえ、私達はまだ避難していない人の確認と、その護衛。あと誘導もするみたい」

「あ゛あ゛?私に護衛なんざいらねえよ、バカにすんなよ?」

「ということは戦えるの?」

「当たり前だ、私はそこんじょらの自警団より強いからな。無論お前よりもだ小僧」


 僕より明らかに小さな女の子に、小僧といわれるのに違和感がぬぐえない。


「えっと?さっき顧客と言っていましたけど、店でもやっているんですか?」

「なんだ興味あるのか?でもお前らが使いそうな武器はねえぞ、私は金属専門だ」

「それでもちょっと興味あるかな?」

「よし、じゃあ付いて来い。案内してやる」


 マドイさんに肩をつかまれ、耳に口を寄せられ、耳打ちをされた。

「なにを考えてる?」

「ほら、近くにいれば何かあったときに、逃がすことぐらいならできるじゃん」

「意外と考えているのね」

「どうした?早く来い」


 小さな女の子が店から顔を出し、不機嫌そうに僕達をみている。


「そういや自己紹介がまだだったな。私はササ。鍛冶師のササだ」

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