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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛九回目

 朝日が窓から差し込んでくる。俺は痛む頭を軽く振りながら起き上がると、窓からの見慣れた景色――――路地の隙間にあるような家なのでそこまで景色はよくない――――を確認すると、自分が今自宅にいることが分かる。昨日は確かそれなりに酒を飲んだため、今朝は二日酔いの症状が出ている。これさえなかったら、酒をもっと飲むんだけどな。


 今日はちゃんとした時間に起きられたみたいでよかったよかった。俺は軽く朝食を取ると、愛用の武器【ヴォルカニック+30】を背中に背負うように装備する。ここまで上げるのはホントに大変だった。他にもいくつか武器は持っているが、やはりこれが一番使いやすい。


 準備を終えた俺は、早速アリシアの店に向かう。理由は、昨日町長の言っていたゴブリン系の討伐をしようと思っているからだ。報酬があるほうが、モチベーション上がるしな。まあ、やっても無駄なことはすでに分かっちゃいるけど、もしかしたらという思いがあるから止められない。


「じゃあ、お願いね」

『討伐クエスト【ファルフラムの森に巣くう司令官】を受理しました』

「任せとけよ、サクッと行って来るからよ」

「怪我だけはしちゃだめよ」

「そんなへまはしねえよ」


 アリシアからの頼みごとを受けて、今日もファルフラムの森に行くことになった。あそこの敵ってそんなにLV上げには向かないんだよな。弱すぎて話しにならない。唯一、運がよければ強化素材が手に入るぐらいだ。手に入る可能性のほうが少ないんだけどな。


 俺は花屋を出ると、とりあえず森に行く前に、弁当屋に行くことにした。森でゴブリンを半日は狩り続ける予定だからだ。そんな長い間外に出るのだったら、やはり弁当が欲しくなるからな。

 広場から裏路地を通って弁当屋に行こうと、弁当屋までの道筋をあたまの中で描き、最短距離を行こうとする。しかし、裏路地に入ろうとしたら、

「あ、てめえは」

「ダグロ急に止まるなよ、危ないだろ」


 裏路地から昨日の黒髪と灰髪の二人組みが飛び出して来た。


「ここであったが百年目、昨日の俺の成果を見せてやるぜ」

「ああ、昨日のナンパ師か。何か用か?」

「誰がナンパ師だ、俺だって変な称号いくつか付いてる中に、不快指数の高まりそうなものがたくさんあんだからよ」

「それはダグロの日ごろの態度「うるせえぞフォックス」はいはい」


 何でコイツらの馬鹿みたいなコントにつき合わされなきゃいけないんだ?これは無視していってもいいパターンだよな。俺はそう判断すると二人の横をすり抜けて、そのまま立ち去ろうとするが、

「おいコラ待ちやがれ」

 肩を掴まれて無理やり足を止めさせられた。


「なんだよ、こっちは急いでるんだよ」

「そう手間は取らせねえって、ちょっと話を聞いてくれるだけでいいんだからよ」

「じゃあ早く話せ、面倒だ」

「どこまでも上から目線なんですね」


 フォックスが何か言っているが関係ない。俺は暇じゃないんだ。


「実はな、今日『ヘイストリム』って町にMOBが攻めてくるらしいんだよ」

「MOB?」

「そういやNPCだったな、あまりに自然に話せすぎて違和感なかったわ。モンスターが攻めてくるらしい」


 なんだと?


「それは何時だ!!」

「急に食いつくなよ。確か今日の昼間ぐらいからだったぞ」

 くそ、普段から町と町を渡り歩いておけばよかった。ヘイストリムなんて行ったことねえぞ。


「まあ、お前はこの町を守るんだろ?じゃあ俺達冒険者に任せてどっしり構えてやがれよ」

「俺は昼間に冒険者を見かけたことは、片手で数えられる程度しか見たことねえぞ」

「ああ、それなら大丈夫だ。この時期だったら冒険者はこの時間帯にもそれなりにいるはずだ」

「そうなのか?」

「ああ。だから冒険者に任せておけ」


 俺は引き下がることにした。昼ごろに来るというのならどの道俺は参戦できない。まずはそのヘイストリムという町がどこにあるのかが分からない。探しながら行ったら間違いなく時間切れだ。着いた頃には終わってしまっているだろう。

 他にも町の広場の一角にある転移石を使って行く手段もあるが、転移石はもう使えないはずだ。なぜなら町の防衛が破られ、攻め込まれたときに、攻めてきたモンスターが転移石から他の町に攻め込むかもしれないからだ。まあ、どの道、転移石は一度行ったことのある町にしか、行けない仕組みになっているから無駄だろう。


「そういえばお前らは広場に何か用なのか?」

「おうよ、俺たちは一回ヘイストリムに行ったことあるからな。転移石から移動するんだよ」


 あれ?こいつらは知らないのか?

「今は転移石の使用はできないはずだぞ」

「は?」

「え?」


 二人とも面白いぐらいの表情の変化を観測できた。どうやら知らなかったみたいだ。


「何でだよ!!」

「転移石使ってモンスターが来るかもしれないだろ」

「そりゃそうッスよね。ダグロ、走って行きますか」

「クソ、向こうで色々準備する予定だったのに!予定変更だ、MOBは全部無視して駆け抜けるぞ」

「了解。じゃあ、ウェイルズさんまた今度会うときに」


 ダグロが先に走り出し、フォックスは俺に一度会釈すると、ダグロを追って走り出した。俺はそれを見届けると、頭の奥底では間に合わないから行く必要はないと考え、頭の表面ではどうにかして行けないかと考えてしまう。

 そんなことを考えてしまうのは、きっとその町に行ってしまった、俺の剣を鍛えてくれた鍛冶師がいるせいだろう。冒険者が町を守りきっても、彼女が死なない保障はどこにもない。いや、彼女だったら飄々としてまた俺の前に現れるに決まっている。そもそも、彼女も一応そこそこ戦えたはずだ。だから心配する必要なんてない。

 俺は無理やり考えを襲撃を受ける町のことから外すと、どのような弁当を買うかを考え始めた。



 森が目の前に広がっている。昨日も来たファルフラムの森だ。まだそれなりの距離はあるが、目を凝らして見て見ると、ゴブリンが森付近の草原まで出てきている。昨日の今日で、ずいぶんとたくさん出てきたな。まあ、出来るだけ狩りますか。

 ちなみに買ってきた弁当は、弁当屋の主人特性のパンが四つほどだ。これがまた実にうまい。そういえば、俺は冒険者が飯を食べているところを見たことないが。これに関してアリシアは、「冒険者は送還されるじゃない。きっと送還された先でご飯食べているのよ」と言っていた。

 それだと、冒険者は異世界人ということになる。


 …考えるのをやめよう。そんなことより今は目の前のゴブリン共だ。いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げると、ちょうどゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)が、ゴブリン以外を取り巻きとして出てきた。


 連れているのは紫色の毒々しい色をした【ポイズンスライム】に、遠くの敵を発見すると大声で泣き喚き周囲の敵を呼び寄せて対象に襲い掛からせる、小型で胴体が黒、翼が黄色の【エコーバード】。さらに、人間の腰ぐらいの高さまでの身長しかないが、獰猛で、集団で突っ込んできたら、逃げたほうが圧倒的によい、茶色い体毛が特徴的な【ハウンドボア】。元々この森に住んでいたモンスターたちだ。ハウンドボアに至ってはゴブリンが騎乗することもある。


「なんだよ、もう攻め込む気満々じゃねえか。これじゃああと一週間じゃなくて、三日ぐらいで来ちまうぞこれ。まあ、狩りつくすとしますか」


 俺は背中の大剣を抜くと、剣を引きずるように構えながら走って接近する。走ってくる俺を発見したのか、エコーバードの甲高い鳴き声が響き渡る。すると、ゴブリンが次々とハウンドボアに騎乗していく。その奥では、堂々とゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)が待機している。


 俺は特技の射程範囲まで来ると、

「『飛燕(ひえん)三乃太刀(さんのたち)真紅線(しんくせん)』!!」

 構えていた剣を振りぬくと、赤い斬線が走り、その斬線が刃となって先行してくるゴブリンの騎乗部隊に襲い掛かる。

 直撃したゴブリンは、レベル差もあり、大半が一撃で沈んでいった。しかし、ハウンドボアのほとんどには当たらなかったみたいで、そのまま 突っ込んでくる。


「いいぜ、かかってこいよ。一匹残らず切り伏せてやるよ。俺の大剣の錆になれえぇぇぇ!!」



 俺は夕焼けで染まる町を見ている。ここからでも噴水から水が噴出し、それが太陽の光を反射してキラキラ光、幻想的な風景を作り上げている。

 ようやくここまで帰ってきたという安堵感で、俺は少し気が抜けてしまう。あの後俺はゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)を倒すと、そのまま森の奥まで入っていき、ゴブリンを大量に切りまくった。その中にはゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)が数体まぎれていた。おかげで持っていった回復薬が全部なくなってしまった。しかし、装備の強化に使える素材が十分集まったのも事実。それ考えると、意外と差し引きプラスなのかもしれないな。



「アリシア、依頼これでいいか?」

 アリシアの店に来た俺は、クエストの表示に自動で書かれていた、討伐モンスターのリストと数をアリシアに見せると、アリシアは少し驚いた表情を見せた後、呆れた表情をして、


「いいか?どころか狩りすぎって言われてもしょうがない数ね。あんまり関係ないモンスターも狩ってるし。まあいいわ、この報酬の引換券を…」

 アリシアは引換券を差し出そうとしたが、少し考え込むそぶりを見せると、

「やっぱり私も一緒に行くわ、町長がどんな顔をするか見てみたいもの」

 ニッコリと笑ってそんなことを言う。俺はその提案を受け入れた。拒む理由が見当たらないしな。



 町長宅に到着したが、なにやら少し空気が騒がしい感じがする。

「何かあったのかしら?」

 アリシアも何かを感じ取ったみたいだ。

「さあな、あの町長のことだ、また馬鹿なことをして、奥さんにどやされてるんだろ」

「そうだといいけど…」


 うだうだここで考えていても何かが進展するわけじゃない。俺は家の扉に手をかけると、思いっきり開いた。


「町長は居るか?報酬を受け取りたいんだが?」

 俺がそう声を上げると、少し奥にいた町長がこちらに駆け寄ってくる。


「た、大変なことが起きたんじゃ。落ち着けよ、落ち着いてよく聞くんじゃぞ?いいな?落ち着いてよく聞けよ?いいな?」

「まずは町長が落ち着け」

「ほら町長さん、深呼吸ですよ」


 町長は深呼吸をゆっくり行うと、少し落ち着いたみたいだ。


「で?何があったんだ?」

「そうじゃ、これを聞いても取り乱すでないぞ」

「だからなんだよ」

「先ほど緊急用の(ふみ)が届けられたんじゃ。それでそこには…」


 町長が急に口を閉ざして、少しうつむき加減になってしまった。


「あの、そこにはなんて書いてあったんですか?」

 アリシアが聞くと、何かを決意したような表情をして、俺の考えていた、でも考えないようにして絶対大丈夫。そんなことは絶対起きない。と考えていたことが起きてしまったみたいだ。



「ヘイストリムの町がモンスター共に滅ぼされ、ヘイストリムの町長は殺されたんじゃ」

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