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プロローグ

COSMIC STARの続編です。全く違う話なので大丈夫だと思いますが、前作のキャラが登場します。少しでも詳しく読みたい方はチラッとでもいいので前作を読んで頂ければより楽しめると思います。

 バージルーズとの戦いから2年。二人の英雄が救った6つの惑星は日々、平和な日常を送っていた。

 バージルーズの研究所は全て崩壊し、そこで働かされていた人達も日に当たる場所へと戻っていった。ヴァイラの街も人々の協力を経て僅か半年で復興する事が出来た。そして今では一番の観光名所にまでなっている。

 バージルーズの爪痕は今や一つも残っていない。しかし、人々の心の片隅には多くの人が犠牲になった事実は消え去る事は無かった。それを忘れることが出来ないまま生きていくしかなかったのだ。

 失ったものは多かった。だが、得るものが無かった訳ではない。この2年間でジェルラードを含め、五大惑星は変わっていった。その一番の証は技術レベルだった。宇宙船の無限エネルギーの開発に成功し、様々な可能性を見出すことが出来るようになった。

 そして、ジェルラード部隊、警備部隊もバージルーズ事件から変わっていくことが出来たのだ。


 ――エルリール――

 とある森の中。

「ふう…。モンスターがこんなに集まる事なんて今までなかったんだけどな」

 一人の男がそう呟いて額の汗を拭った。その男に、武器を持った男が近寄ってくる。

「スティーブ隊長。東側のモンスター、全て退治しました」

「そうか」

 この森にモンスターが異常発生した、との連絡を受け、スティーブ率いる第五部隊とテトランスの警備部隊はその鎮圧の為、この森を訪れていた。

 朝日が照りつける中、一人も怪我人を出すことなく着々と作業は進んでいった。以前ならばこの程度のモンスターにさえ苦戦していた警備部隊も、今や余裕で倒せる程に成長していた。

 スティーブは警備部隊に任せた西側も何事も無く終わった、という報告を聞き、笑みを浮かべ再び汗を拭った。

「よし!これで任務終了だ。皆を集めてくれ」

「了解」

 一人の男が通信を始めた。

「それにしても、警備部隊、勿論我々も…強くなりましたね」

「そうだな…。2年前、俺達は何も出来なかった。…もう、そんな事はないようにしないと」

 そう言ってスティーブは空を見上げた。

「何してるのかな…?あの二人は…」


 ――エルリール――

「ミラベル!もう少し力を込めろ!そんなんじゃ良い武器は作れねぇぞ!!」

「は、はい!!」

 ここエルリールも大きく変わっていた。極寒の惑星ということで足を運ぶ人も少なかったエルリールは、今ではかなりの数の武器屋が並び、警備部隊、ジェルラード部隊でさえここで調達するようになっていた。

 荒れ果てたスラム街も無くなり、ゴロツキ共もそれぞれ職に就いた。その進展に欠かせなかった人物が、全ての武器屋を仕切るグリンであった。

「グリンさん!グザリスから剣四本、槍八本の発注が来ました!」

「何!?急いで仕上げろ!それからミスリルを発掘部隊に発注しろ。残りが少ない!」

「了解!」

「グリンさん!エルリールの武器屋が銃の在庫が無くなったらしいです!」

「直ぐに10個送っとけ!」

「はい!!」

 グリンのいる武器製造工場は行ったり来たりの人で溢れかえっていた。その毎日が慌ただしい生活にも、グリンにとって苦にはならなかった。

「忙しそうですね。グリンさん」

 グリンの側にやって来た一人の男が、慌ただしく動いていたグリンに声をかけた。グリンは苛立つように振り返るが、その男を見ると笑顔に変わった。

「よう、テイラス。そろそろ来る頃だと思ったぜ!」

「すみません。こんな忙しい時に…」

 テイラスはすまなそうに頭を下げた。

「いいってことよ!そんな改まるな。ほら、頼まれてた武器だ」

「有り難うございます」

「それより、いいのか?王女をほったらかしにしといて。わざわざ来なくても、送ってやったのに」

 テイラスは笑みを浮かべた。

「大丈夫です。いつも暇そうにしてますから」

 グリンには自然とその光景が頭に浮かび、大声で笑い出した。


 ――オアランド――

「あ〜、暇ねぇ」

「ジェシカ様!暇ならこの書類に目を通して下さい!!」

 王室で暇そうに足を伸ばすジェシカの前に、大量の書類が置かれた。それをどうでもいいかのように目線を切り、書類を置いた女性に顔を向けた。

「もう、堅いわねぇシーラは。」

「あなたが軽すぎるだけです!」

 シーラはそう言った後、心からため息を出した。

「ところで、テイラスは何処へ行ったの?」

 シーラは呆れ顔に変わった。

「聞いてなかったんですか!?テイラスさんはエルリールへ武器を受け取りに行きましたよ。」

「そういえば……そんな事言っていたような」

「ジェシカ様からも何か言って下さい!大変なんですよ!毎日訓練、訓練で。」

 真剣な顔を向けるシーラとは対照的に穏やかな表情を見せるジェシカ。

「それはしょうがないわよ。あれほどの人物と出会ったんだもの。影響を受けない方が難しいわよ」

 ジェシカは席を立ち、窓際へ移動した。そこからはオアランドの街並みが一望出来た。ジェシカが考え事をする時はいつもこの場所だった。

「まあ、それはそうですけど……」

 シーラもジェシカの隣へと移動した。シーラには今ジェシカが誰を思い浮かべているのか想像出来た。

「通信、入れちゃおうかな」

「……駄目です」


 ――ヴァイラ――

 第二部隊長、アレンは任務帰りに仲間と共に新しくなったヴァイラの街を訪れていた。テトランスと引けを取らないその街にはかなりの人で溢れ返っていた。高層ビルも並び、緑も多い。とても、一度壊滅したとは思えない街並みだった。

 その街をぶらぶら歩いていたアレンは、ある店の前で話をしている親子が視界に入り立ち止まった。

「ねぇ、おとうさん。この二人、誰?」

 まだ七歳ぐらいの男の子が父親に尋ねていた。その少年の前にあるモニターには、2年前の二人の男女の映像が映っていた。

「この人達はな、五大惑星を救った英雄だ。今のヴァイラが在るのもこの二人のお陰だ。」

「じゃあ、すごい人なんだね!」

「そうだよ。お前もこんなふうになるんだぞ!」

「うん!!」

 その光景を見ていたアレンは自然と笑みがこぼれた。決して自分が何をしたわけでもない。でも、自分の事のように嬉しい気持ちになった。

 そして空を眺め、

「お前達のことは、あんな小さな少年にも伝わってるぞ」

 そう呟いた。


 ――グザリス――

「ファーニ!ご飯よ」

 部屋の外から母親の声が飛んできた。一枚の写真を眺めていたファーニは元気よく返事をすると、写真を持ったまま部屋を出て行った。食卓についた後もその写真を眺める。

「フフ。また見てるのね」

 料理を手に持ち机に並べる母親は、笑顔で声をかけた。

「うん!また遊びに来てくれるのかなぁ?」

「来てくれるわよ、きっと。ほら、食べましょ」

 ファーニは写真を机の上に置き、箸を持った。

 その写真に写っていたのは、中央にファーニ、その両サイドにファーニの手を掴み笑っている二人の男女だった。


 五大惑星ではこの二年間、二人の英雄に影響を受けながら、穏やかな時を刻んでいった。


 その頃、宇宙では小型船がテトランスに向け急落下していた事に誰も気付いていなかった。

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