第一話
今日は晴れていた
雨の降る気配もないいい天気
その日差しの割に肌寒いので、オレ、有明 帆立は歯をガタガタ言わせながらあるいてた。今日は暖かくなるといっていた天気予報士と変な名前を付けた母を呪いながら
今日は高校の入学式だった
オレの名前は字面は格好いいが
読み方はホタテだ
あのホタテ貝だ。
クラス自己紹介で
「ぼく、ホタテです」
とかいったら
「…え?」みたいなちょっとびっくりされた
「ああ、あの貝の人?」といわれるのが目に見えるようだ
義務教育の九年間
ホタテ貝が給食に出なかったのは救いだった
共食いとか騒がれるからな
まぁとにかくオレはなにも知らないで新しい通学路カバンやら買ったばっかのジャージ、
シューズが入ったエナメルやらの大荷物でルンルン帰り道だったんだ。
交通ルールにやたら厳しいおばちゃんで有名なラーメン屋の角で頭が痛くなるまではな。
突然痛くなったんだ。なんか巨人に手で左右から頭挟まれて粉々にされそうな感じだ
ちょっと大げさに言った。
風邪で高熱出てるくらいのレベルですごめんなさい
あでも、そんとき痛すぎて道端にうずくまってたんだぜオレ、そしてまぁよくあることだが
頭の中で声が聞こえるんだよ
よくあることじゃない?
ファンタジーものとかラノベとか中二病の友達に聞け!
で話戻すけど声が訳わかんない呪文みたいなこといった後こういったんだよ
「アダムの息子、極東の地、火遠理命の子孫が臣、双黒の人鬼よ、我は魂と引き換えに契約を望む者也。汝我を救い給へ」
はいいぃ?
これはあれだ異世界人が日本人を召還したがってたんだ
その時オレはサッパリ何がなんだかわからなかったがな。
てかなんで日本人なんだ?そしてなんで一般高校生のオレ?
もっとプロレスラーとかマッチョの外国人とかのほうがいいよな?
で、ここからオレ馬鹿だけど、
オレはいって答えちゃったんだぜ…
「はい」って…
オレは自分でも気がつかないうちにこう言ってた
「うん、いいよ」
バカだろ
でもな、そいつ救ってくれって言ってるんだぜ
募金箱に500玉いれちゃう少しいい人だからなオレは。
文面でみると単調な呼び出し呪文かもしれないけど
声に割と迫るものがあった気がして何か俺に出来るんなら
とか思ったわけだ!深く考えもせずにな!
あとなんか非日常ぽくてノリたくなった。
で、okしてみた瞬間俺が立ってた地面が光りやがった
魔法陣みたいな奴だ、そのままぱーって光ってそのままひかりが収まって真っ暗になったんだ
で、そんな感じでいま俺は何故か牢屋の中にいまーす。
……なんで?
俺おばちゃんのラーメン屋の前にいたぞ?!
いま牢屋だぞ?
俺がパニックになりかけていると
牢屋奥の方から声がした
「おい、お前。」
あの呪文の声だ
少し高めなので少年だろうと推測。
声がしたほうを見ると
あんまり暗くてよく見えないが人が居るらしかった。それで俺はそっちに向かって挨拶してみた。
「あのーこんにちはー」
会釈する
「…。」
返事がない。
「すみません、俺何でここにいるのか分かんなくて。俺がどうなっちゃったのか分かりませんかー?」
丁寧に俺は聞いてみた。こういう時は人に聞くのが一番だ。
すると暗闇の方からガサっと音がした。「ああ、俺が呼び出したんだ…魔法で。」
少し高めの少年の声
さっきの呪文の声だ!
姿は見えないが
こいつが俺をこっちによんだのか…魔法で。
「魔法?!」
「そうだ。」
あ〜これはあれだ。
異世界パターンだ。
ちょっとワクワク
魔法すげー
「お前、名前は?」
少年が聞いた。
俺は魔が差してしまった。
「マルクス・アウレリウス・アントニヌスだ…」
どうだかっこいい名前…
「…いっ!?」
その瞬間息が苦しくなった。
頭もいたい。体中熱い。
「嘘ついたな。」
「ごめんなさい…嘘で…す…本当は有明帆立っていうんです!」
「許す。」少年が許すといった途端に治った。
「死ぬかと思った…」
「俺に嘘をついたからだ。」
「はい?」
「お前が俺と契約した時点で俺はお前の主だから嘘をつくと死ぬ。今は運良く助かったがな。」
まじかよ…
「ちなみにお前は俺の命令に絶対服従だ。逆らいたくても逆らえない。悪いな。」
まじか…
大変なことになったな…
これからどうなるんだ俺。
とりあえず笑おう!
困った時は笑えという母親の教えに従って
俺は笑みを浮かべたが、たぶん引きつり放題。
「さっきの魔法ってどういうのだったんでございましょうかー?」
よし、下手にでたぞ!
「そのしゃべり方気持ち悪いぞ」
「ガーン( ̄□ ̄;)!!」
少年はため息をついた
「まぁいい、教えてやるよ。」
「俺はレーゲンハイム。レーゲンでいい。」
少年…レーゲンは話し始めた。
レーゲンの話をまとめるとこうだ
1、レーゲンも俺もお互い嘘はつけない
2、3キロ以上離れるとなんか大変なことになる
3、魔力だか魂だか知らないがなんか繋がりが出来て痛覚などの感覚が共通される
こんなの最悪だ!
「まぁそんなところだ」
「まぁ大ざっぱな。」
とりあえず俺は敬語はやめようと決めた。なんかこいつのせいで大変なことになってるし、声からして俺より年上ってことはないだろう。
「実はこの魔法についてあまり知らないからな。なんか他に条件とかあるかも」
「はぁ!?よくわかんないで召還したのかよ!!」
「仕方ないだろ!緊急事態なんだ!こっそり父上…親父の本に書いてあるの見ただけだし!」
レーゲンが声を荒げるの
ちょっとびっくり
俺は黙ってしまう
「はぁ…」
牢の奥からため息が聞こえる
少年の姿を見てみたい気もするが
少し怖かった
牢の中の暗い陰鬱とした雰囲気も相まってで牢の格子から離れられないでいた
なんだか気まずくなって俺は体の向きをかえて格子越しに廊下を見る。
(ここは随分静かだな…)
俺はこの牢に入れられた自分を想像して身震いした。
(ってか、牢にはいってんじゃん俺)
そんなことを思ってるうちに
俺は手首足首がちりちりしてきた。
なんかかゆいたいな…
「おい、名前、有明…だったか?」
「そっちは名字、帆立のほうが名前。」
「そうか、異世界では名前と名字が反対なのか東方とおなじだな。」
(東方…この世界はある程度元の世界と対応してるのか…)
俺はあんまりフラグとかテンプレには詳しくないが
ファンタジーが好きで友達から借りた小説やらラノベやらを読んである程度異世界設定の知識がある…こんなところで役に立つとは…
「じゃあ、帆立。お前に頼みたいことがある。」
「だっ…脱獄?」
「違う…」
少し間を開けてレーゲンは続ける
「俺にはやりのこしたことがある。代わりにお前にやってもらう」
(なるほど……)
「でもどうやってでるんだ?」
「帆立、こっちに来い。」
「…。」
俺は勇気を振り絞って牢の奥に一歩踏み出した
目がすこしなれてきたものの
暗くてよく見えないが
レーゲンは俺が思っていたより小柄だった
牢屋生活は短くないらしく髪は長く絡まってしまっているらしかった。
「この首輪が見えるか」
レーゲンが手を動かそうとすると俺の手首に痛みが走った
「「痛…っ」」
なるほどこういうことか…
面倒だ…
「分かったから動かないでくれよ、俺も痛い…」
手首をさすりながら俺は抗議する
「これは対魔法の拘束具だ。このせいで俺はここから出られない。」
(だから俺がかわりにやるのか…まあてよ?)
「それって魔力封じるの?」
「そうだ。」
「じゃあどうやって俺を召還したんだよ!」
「ああ、この拘束具は人間用だから俺には完璧にはきかないから」
そういった瞬間髪の隙間からレーゲンの赤い目が光った。
その綺麗な色に俺は少々どきっとした
人間用…?
いろいろ突っ込みたかったが
とりあえず最後まで聞く事にした
「少しの魔力なら出せるんだ、その魔力でお前と接触して、その後はお前の魔力を使わせてもらった。」
「俺の?」
「ああ、お前、多分結構才能あるぞ。それで呼び出したんだ。」
才能あるという言葉に小躍りする俺の心
「あ!そうだ、さっき人間用っていったけど…それって…。」
「あっ…」
レーゲンはついうっかり言っちゃったみたいな反応をした
「ああ、そうだお前にうそつけないんだよな…俺、実は竜族なんだ。」
「ド…ドラゴンすか。」
「そうだ。」
「飛べんの?」
「飛べるな。」
「スゲー!!」
俺が思わず身を乗り出したのでレーゲンは少し引き気味で話を続ける。
「そんな反応をした奴は初めてだ…異世界人はみんなそんななのか…?それともお前が変人なのか…?」
「知らないけど凄いって!俺の世界には竜とかいないし、」
「いないのか?」
「うん。」
「へえ…」
レーゲンは興味深そうに頷くと咳払いをする。
「で、俺は出れないし、出るつもりもない。だからお前変わりに俺の用事を済ます。」
「で…用事って?」
竜を発見したことに興奮覚めやらないまま俺はいきなり用事が何か不安になった。
「人を探して欲しい。で見つけたら様子を見てこれを渡せ。」
レーゲンは俺に何か差し出した
手首はまた痛んだけど我慢することにした
それを受け取るとイヤリングの片方らしかった。
「イヤリング…?」
「そうだ、お前書くものあるか?ペンと紙。」
「え?…ああ、あるよ。」
俺は格子のちかくにおきっぱなしだったエナメルたちから急いで筆箱とルーズリーフを取ってくる。
渡すとレーゲンは何かを書いてルーズリーフを四つ折りにして返した
「これもついでに渡してくれ。」
そのあとレーゲンが魔法を教えてくれた
レーゲンが唱える魔法を復唱すると、
「ネズミを思い浮かべろ。」
言われたとおりにする。
すると、次の瞬間目線が著しく低くなった
「成功だ。なかなかわいいぞ。」俺はネズミになってしまったらしい。
レーゲンが俺をつまみ上げてテーブルの上にのせると
レーゲンは筆箱の中に入っていたらしいテープで
ルーズリーフとイヤリングを固定し始めた
(おぃっ!くるしいぞ!)
あんまりぐるぐる巻くのでもんくをいおうと思ったらきゅいきゅいした声しかでない。
「ちょっと我慢しろよ…」
「よし!出来た!いいか、言った通りに届けて来いよ!」
そういってネズミさんを軽くはたくレーゲン…
「きゅいっ!(暴力反対!)」
と抗議した俺だが
なんだか逆らえず(これが魔法の威力か…恐ろしいな。)俺は牢の小さな通気口に入っていった
外を目指して。