ninety fifth story
「馨君って、何のクラブに入ってたの?」
「・・・、ん〜、何も入ってなかったよ。」
「え〜vv勿体無い!かおる君なら何でも似合うのにvあっ!出来るし似合うって事v」
「はは、ありがとう。」
「ねぇ、本当にサッカー部はいらない?結構、強いんだよ〜vv」
「あ〜・・・、考えとくよ。」
沙織たちが、屋上に来て、龍崎の隣をハイジャックして約、数十分。
沙織たちの、言葉にやけにハートが多いのが気になる。
何がしたいの。
なに、あんたら、「神田と龍崎の幸せぶち壊そう会」かよ!!!
・・・・・ほんと、イラツク。
何ナノ?このイラツキは。
「でねぇ・・・、一つ、聞きたいことあるんだけどさぁ・・。」
沙織は、一度チラッと私を見た。
ゾクッ
一瞬、何もかもが凍りついたように見えた。
沙織から、嫌悪感、憎しみ、怒り、嫉妬、全てが吐き出されていた。
あの時の、恵里よりずっと・・・。
「馨君って、本当に奈緒と付き合ってるの?」
少し龍崎に寄り添いながら言葉を発する沙織。
「・・・そうだけど?」
少し、タイギそうに、それでもあの優しい笑顔で答える龍崎。
なんで、そんな、顔をするの・・・・。
沙織が少し笑って、さらに龍崎に近づく。
「あの子より・・・・」
そこまで言った時、突然屋上のドアが開いた。
沙織たちの目が一斉に向けられる。
そこに居たのは、優香だった。
「ねぇ、沙織たち。生活指導科の番崎先生がカンカンになって呼んでたよ?早く行った方がいいんじゃない?」
優香は、そこで天使の微笑を浮かべた。
でも、私は見逃さなかった。というか、見逃せなかった。
優香のその笑みの裏にどす黒いものが渦巻いていたことを・・・。
「えーっ、やっば、うちら何かしたっけ?」
「番崎、遅れたら怒るんだよなぁ・・・。」
「・・・たいぎぃ。」
「「「「「ばいばぁぁいvv馨君。」」」」」」
そうして、あの猫かぶり軍団は、校舎の中へと消えていった。
「あぁぁぁぁ、香水臭かった。」
そのとたん、龍崎はばたっと、仰向けに倒れこんだ。
「ありがとう。結構、助かった。」
「どー致しまして。」
そして、龍崎と優香は一言二言交わしてから、優香は私に手を振って帰っていった。
どうやら、アレは嘘らしい。
ん?
龍崎は私に向かって、ちょいちょいっと手招きをする。
「・・・・・・なに?」
私は、まだイライラが抜けなかった。
ハイハイで龍崎の近くまで行くと、いきなり抱きしめられた。
「ふぅっっっ!!!」
驚く私に対し、龍崎は私をきつく抱きしめ、深呼吸をした。
「やっぱ、お前の傍がいい。」
そして、そうささやいた。
「!なに・・・泣いてんだよ・・。」
私はいつの間にか泣いていた。
龍崎はそれに少し驚きつつも、親指でそっと私の涙をふき取ってくれる。
「・・・、なんでっ、なんで・・・、そんなに優しいの?」
嗚咽で詰まりながらも何とか聞く。
龍崎は少し顔を赤くして、
「そんなん・・・、お前が・・・好きだからだろ・・・。」
という。
それは、とても嬉しい言葉だったけど、私が聞きたいのはそれじゃなかった。
「私じゃない!・・・・・沙織たちに・・・、なんで、そんな優しい顔すんの!」
「その顔見るたび・・・、悲しくなるの!怖くなるの!イライラするの!優しくなんてしないでよ!!」
涙で、全てがぐちゃぐちゃだった。
何も見えない中、必死で龍崎の服を探して、それを掴む。
「・・・・・ぶっ!!」
そんな私を、龍崎は笑った。
なんで?
一瞬浮かんでくるのは悪いことばかり。
私は、泣くのも忘れて、龍崎を見つめる。
龍崎は笑って、その手を私の腰に回した。
そして、さっきよりぐいっと引き寄せた。
龍崎の顔は、間近に迫り、その唇はそっと私のおでこに触れた。
「おまえさ・・、それ、なんていうか分かる?」
そうして、意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ヤキモチって、言うんだよ。」
そういって、私にキスをした。
「や・・・きも・・・ち?」
「そ!てか、お前がたのんだんじゃん。仲良くしてくれって。」
龍崎は私の頭をぐしゃぐしゃなぜる。
ヤキモチ・・・って、嫉妬だよね。
人からは感じたこと数えられないぐらいあんのに・・・、自分がそうなってたなんて気づきもしなかった。
・・・・はうぅ〜・・・・恥ずかしい。
私は顔を両手で隠した。
ぷぷっっと、龍崎は笑って、私の手を顔からゆっくり離した。
「じゃぁ、もうそろそろ、顔つくんのやめっか。俺も疲れてきたし、・・・また、泣きそうだしな。」
龍崎はそう笑って、私のおでこを弾く。
私は予鈴がなるのもほっいて、龍崎の胸の中で、もう一度泣いた。