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eighty eighth story

どす どす

と、荒々しい足音を立てて階段を上る。



あ〜・・・、イラツク。

何さ。昨日からじゃ悪いか!この野郎。





でも、なんだろ?

この不安感。


確かに、沙織たちは結構可愛い。


狙ってる男子の前では。

おもいっきし上目遣いして、猫なで声で話しかける。

服もいつもきわどいし。



それだけならまだしも、あの人たちからはほとんど毎日、どす黒い感情が渦巻いてる。



あまり近づきたくないタイプだ。




やっとのことで、教室のある3階に着く。

教室のドアも同じように荒々しく開けると、優香と恵里が小走りで近づいてきた。

うわっ!恵里・・・、上手く話せるかな?


「おはよ〜奈緒」


自分の変な誤解のせいで、少し避け気味だった恵里が、何にもなかった風に挨拶してくる。

それは、なんだかとても嬉しかった。



「おはよ〜、恵里・優香」


「おはよ〜じゃないっつの!!」


優香が少しあせった顔で詰め寄ってくる。

何かしたっけ?私?


「奈緒、やっと上手く行ったんだね!!」


恵里が満面の笑顔で言った。

そこからは、純粋な思いしか伝わってこなくて、以前の恵里を避けていた自分に無償に腹が立った。



てか・・・何で知ってんの?



そう聞くと、優香は少しあきれた顔をした。



「馬鹿じゃないの?今日・・・てか、さっき、玄関で叫んだんでしょ?今、そのうわさで持ちきりよ?」


えっ?マジで?


「それより、くっつくの遅いって〜!私が振られてから何日経ったのよ!!」


誤解してたんだって・・。



「奈緒ちゃん?」


優香と恵里に責められてたら、後ろから名前を呼ばれた。


振り返った先には、山田君を初めとする男達が立っていた。



「本当に、龍崎と付き合ってんの?」



少し、詰め寄ってきながら言う。


「うっ、うん。」


「なんで?アイツ、怖いって言ってたじゃん。」


何ヶ月前の話だよ!!

心の中で突っ込みを入れる。


「だけど、龍崎にはいいところたっくさんあるんだよ。」


「はっ!?いいところ?」


「ヤクザと喧嘩して、煙草吹かしてるところか?」


男子の龍崎を軽蔑したような笑い声。

確かに、皆にはそんなイメージしかないだろうケドさ・・・、そこまで言う必要ある?



「そんなんじゃない。誤解してるんだよ、皆は。・・・・・私もだったけど。」


スカートのすそを握る手に力がこもる。

悔しい。


朝から、イラつくことばかり。



まだ、笑っている男子達を私は無視する。




「神田っ!」


後ろの方にいた峯元みねもと 隆志たかしが叫ぶ。

私は少し睨みながら振り向いた。



「おれじゃ、駄目なのかよ!!」


・・・・ハイ?


隆志がそう叫んだ瞬間、辺りは急激な静けさに見舞われた。

本日2回目の静けさでーす。

そう思ったけど、私の頭はそれを深く考えるほどの空き量はなかった。


「お前のこと、好きなんだけど。」



これって、告白?




ちょっと待って、確かに、何十回かは告られたことあるよ。

でも、こんなところで、こんな風に告られたことはない。


私の頭は、軽いパニックに襲われた。



返事は決まってるのに、言葉が出ない。

アタフタしていると、両側から優香と恵里が手をつないで来てくれた。


「無理だよ。奈緒は今、やっとラブラブなんだから。」

恵里がウィンクを飛ばしながら言う。


「そう、かわいそうだけど、諦めんさい。」


優香もため息をつきながらいう。


「ごめん、ありがとう、でも、駄目です。」


私も、何とか区切れ区切れに言うことができた。



「でもさ、沙織達が、神田とアイツを別れさせたら、俺にもチャンスは来るんだろ?」


少し、にやける。

隆志からは、悪いことをたくらんでいる時の様な物が来る。



何処からそんな事を導き出したわけ?

朝のことやら、今のことで、私は完全に切れていた。

手が小刻みに震える。


昨日はすっごく幸せだったのに・・・。


なんだか、急に悲しくなった。



私は、優香たちに休んでくると伝え、教室を出た。



こんな腹立つ告白をされたのは初めてだ。


まだイラツキが収まらない。

早く、龍崎に会いたいよ・・・。



私は屋上へと走る。




≪付き合いが短ければ簡単に別れる。≫



そんなことないよね?



不安の残る胸に手を当てて、少し目をつぶる。

屋上にいるよね。

待っててくれてるよね?



今日、手紙書いたんだよ?お母さんって。


頑張ったねって、優しくいつも見たくなぜてくれるよね?




龍崎が信じられないわけじゃない。

それでも、この不安は私の胸に巣を作っていた。






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