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sixty story ご挨拶



「お前、香水つけてんの?」


別にこの匂いは嫌いじゃなかったが、どちらかと言えば男らしい匂いの似合う直哉にはあまりマッチしなかった。


「おう。いいにおいだろ。体にはつけてないけどな。俺の大事な女のつけてた香水。」


横目で見る直哉は声とは違うどこかはかなげな顔をしていた。



大事な女・・・・?


俺は一瞬彼女かと思ったけど、3年前のことを思い出して理解した。

それと同時に、香水の話を振ったことを、少し後悔した。


直哉の大事な女。

もう、この世には居ない女。





「なぁに。しけた面してんだよ!」


直哉が、片手で俺の額をこついてきた。


「別に。運転に集中しろ。」


俺はその手を跳ね除け、そっぽを向いた。


そこから病院に着くまで、俺たちは何の言葉も交わさなかった。



















「よし。到着。直哉子ちゃん、緊張しちゃう〜。」


車から降りるなり、顔の前で手を組んで腰を振り振りする直哉を、俺は誰だよ。と呟いて、さっさと歩き出した。





「馨っ!」


病院のロビーに入るなり、俺は名前を呼ばれた。

その声のほうを向くと、車椅子に乗ったあの人が手を振っていた。



「良かった、来てくれた。」


あの人は俺が近づくと心底安心したような顔をした。


「待ってたの?」


俺がそう聞くと、あの人はうなずいた。

きっと、入院生活や、あの男の事で、心細かったんだろう。



「あら?その人は?奈緒ちゃん・・じゃないわよね。」


「ああ、こいつは・・・「お母さん、馨さんを、俺にください!!!」



・・・・・・・は?


俺が言うのを遮って、直哉は土下座しながら叫ぶ。


「えっ?あっ!はい・・・。」


なに、ハイってって答えてるんですか・・・?

どう見ても相手は男だぞ。



周りの視線が痛い。


「ふざけんな。」


俺はそういって、直哉の頭を殴った。


もちろんグーで。
















「あっ!馨のお友達でしたか。」


「友達じゃない。」


誰がこんな奴・・・・。



俺たちは、いったん病室に戻った。



一応、誤解は解けたが、俺はイライラしていた。



「ただの居候だ。」


俺がそういうと、あの人は少し考えて、


「あっ、家で、馨が寂しくないようにしてくれてるんですか!」


なんでそうなる・・・。」


「そうです!馨君が寂しいと、泣きついてきたもんで・・・。」


「嘘付け!!」


俺がいつ泣きついたんだよ!!







「よし、馨、この花を生けてきてくれ。」


「はっ?花って何処にあるんだよ?」


「ココだ。」


直哉の手には大きな花束が握られていた。

・・・花屋寄ってないぞ。


俺は疑問を持ちながら、その花を持って廊下に出た。












「どうですか?旦那さんとは連絡つきましたか?」










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