fifty eighth story
あんな奴、父親なんかじゃない。
俺はそのバラバラになった紙を燃やしたくて堪らなかった。
「・・・・っくそっ」
舌打ちをして、直哉のほうを振り返った。
でも、そこに直哉は居なかった。
がさがさと、物をあさる音がして、俺は廊下のほうへと出た。
直哉は、自分が持ってきていたバックを物を放り出しながらあさっていた。
ハンガー お菓子 コップ 帽子 漫画本 ペン ・・・・
直哉の周りに、あまり理解できないようなものが多々散らばっていた。
「おぉ!あった!!」
それから、2,3分後、やっと直哉が声を発した。
その手には、トランプが握られていて、直哉の周りには足の踏み場も無いほど物が散らばっていた。
「よし!馨ッ!!俺とジジ抜きしようぜ!」
足元に散らばるごみ?を、足で掻き分けながら近寄ってきた。
「片付けてからにしろ。」
俺はそういったのに、直哉は軽々俺を担いで教えてないはずの俺の部屋に直行した。
「何でだよ!!何で、こんなキレイで、男の聖書が無いんだよ!!」
勝手に人の部屋に入って、人の本棚や、ベットのした、引き出しの中を30分ほどあさった男は、最後にそう叫んで撃沈した。
トランプしに来たんじゃねぇのかよ・・・。
俺は、心でそう突っ込んで、近くにあった漫画の本を手にベットに横になった。
「お〜い、馨、やらないのか?」
表紙をめくろうとした時、目の前に直哉が現れた。
お前が言うか?
俺は寝転んでる状態から座って、トランプをくった。
さっき、切った傷口にトランプの端が少し当たって、痛かった。
目が覚めると、朝だった。
目の前には直哉が寝ていて、俺のベットによだれの海を作っていた。
確か、昨日はジジ抜きの後、大富豪して、豚のシッポして、スピードして・・・、後何したっけ?
眠くて、覚えてなかった。
時計を見ると、午前10時だった。
そういえば、土曜日の朝8時からの番組を見逃してしまっていた。
「まぁ、いいか。」
ベットの上に広がるトランプを見ながらそう呟いた。
あんなふうに遊んだのは、本当に久しぶりだった。
無意識のうちに、笑みがこぼれていた。
俺は、朝ごはんを作りに下に下りた。
そのついでに、新聞を取りに行くと、広告と新聞の間にいかにも女の子らしい封筒が入っていた。
後ろには、『田上 恵里』と、書いてあった。
「田上・・・?」
確か、田上と最後に話したのはあの時だった。
カレーパンのとき。
そういえば、あの時田上が言ったことは本当だったのだろうか?
あの人たちのことで、忘れていた。
でも、今、冷静に考えれば、田上と神田、どっちを信じればいいのかはっきり分かる。
田上は、嘘をついた。
多分、俺と神田を離すため。
でも、何でだ?
俺はその理由を知りたくて、封筒を開けた。
『龍崎 馨 君へ
お久しぶりです。
先日は、すみませんでした。
もう、知ってると思いますが、私は嘘をつきました。
奈緒のことも憎んでいました。
でも、昨日仲直りすることが出来ました。
それで、月曜日はなしたいことがあるので、屋上に来て下さい。
待ってます。
田上 奈緒』
行っていいのか?
何を伝えたいんだ?
何で嘘をついたんだ?
俺はそれをポケットの中に突っ込んで、家へと戻った。