fourty nineth story
何でかな?
何で、人生って思った通りに行かないのかな?
あの後、龍崎は何回も電話をかけたが、決まって電源は切れていた。
私が、ごめんと言うと、龍崎は私のでこをぺチンと叩いて、バーカと言った。
その顔はなんだか優しくて、少し嬉しかったりした。
私達は、龍崎のお母さんが眠る病室へと入った。
龍崎に何処となく似ている、その人はとてもキレイで、眠れる森の美女を連想してしまった。
でも、その顔には色が無かった。
「きれいな人だね・・・。」
「・・・そうか?」
私と龍崎は、ベットの近くにおいてあるソファに座る。
私達は黙って、眠るその人をじっと見た。
「龍崎はお母さん大好きなんだね。」
「・・・・・はっ!?」
私の呟きに、龍崎は目を真ん丸くした。
次第に意味を理解したのか、一気に顔が赤くなった。
「ちっ、違う!」
あたふたしながら言う龍崎がとても可愛かった。
「何で否定すんのさぁ?いい事じゃん。そーゆーのって。」
私は龍崎のほっぺをぐりぐりしながら言う。
龍崎は私の手を払いのけた。
「・・・・どうでもいいって、思ってたんだけどな。情けないんだよ。昔のことをずるずる引きずって。」
さっきまで、感じられなかった悔しさが伝わってくる。
「べっ・・・、別にいいじゃん。情けなくなんて無い。家族を大切の思うのは、いいことだよ。」
何で、こんなことしかいえないのかな?
こんな自分にもどかしさを感じた。
「・・・ありがとう。」
「っ!!」
龍崎は消えてしまいそうな声でそう言って、微笑みながら私の頭をなぜてきた。
そのとたん、私の顔の温度が急上昇し穴と言う穴から何かが出てきそうだった。
この部屋が薄暗くてよかった。そう、思った。
「あれ・・・?」
私はいつの間にか寝ていた様だった。
窓からもれる光はもう明るくて、時計は10時を指していた。
・・・だいぶ寝たなぁ・・・。
私はガラスのテーブルに残るよだれをティッシュで拭き、ゴミ箱に捨てた。
部屋を見回したが、龍崎のお母さんが安らかな寝息を立てているだけだった。
「・・・・龍崎〜?」
何処に行ったんだぁ〜、私は控えめに誰も居ない空間に声をかけてみた。
「ぁなたは・・・?」
ビクッ!
突然の声に肩が上がる。
ゆっくり振り向いてみると、さっきまで寝息を立てていたあの人がまだ完全に開いてない目で私の姿を見ていた。
「え〜っと・・・。クラスメイト?の・・・神田 奈緒と、申します?」
使い慣れない敬語を使用したためか、語尾が上がってしまった。
「馨の友達?」
ゆっくり、消えそうな声で必死にたずねるその人。
「はい。多分そんな関係だと・・・?」
「あの子、学校では・・・・笑ってますか?」
「・・・・ハイ?」
質問の意味が分からなかった。
でも、必死に聞いてくるその人に、分かりませんとは、言えなかった。