fourty eight story
「あ・・・れ?」
いつの間にココに来たんだろう?
目の前に広がるのは、青い空。
さえぎるものが何も無い、あの屋上だった。
「何が、狂ったんだろう?」
私は、ぺシャリと座り込んだ。
眼から流れる雫が頬から落ちて、コンクリートの床に黒いしみをつくる。
そのしみはどんどん大きくなっていった。
「私が今までした事は・・・何だったんだろう?」
床を引っかくように手を握る。
床は固くて、手が痛くなった。
床にいくつもしみが出来る。
「・・・恵里・・・。ここに居た。」
まただ。
また後ろを振り返れば優香が居る。
「・・・・何しに来たのよ!!」
私は精一杯睨むのに、優香は平気そうな顔をして、
「あんなやり方じゃ、無理だったのよ。」
「え・・・?」
優香は少しずつ近づいてくる。
「奈緒、今、龍崎君と居るんだって。」
あの映像がフラッシュバックする。
「・・・ぇるわよ。」
「え?」
「知ってるわよ!そんなこと!!」
ふ〜んと、優香は言う。
「これでいいんでしょ!あなたが望んでたことって、これじゃないの?」
「・・・優香・・・あなたがこの作戦・・むちゃくちゃにしたのね。」
「許さない。許さない。」
私は、優香に近づく。
それでも、平気な顔で私を見る。
その眼はますます私を怒らせるのに充分だった。
ドン
っと、優香の肩を押す。
優香は何の抵抗もなしにその場に倒れこんだ。
「っ・・・。」
一瞬痛そうな顔をしたが、優香は再び私を見る。
私は優香の頬を叩く。
優香の白い肌に赤い手形がついた。
それでも優香は私を見てくる。
私は、叩き続けた。
「なんで・・・やり返さないのよ・・・。」
私は、もう叩けなくなった。
涙で、何も分からなくなった。
優香は何を考えてるの?
何で、怒らないの?
「馬鹿じゃないの?友達を叩くわけないじゃない。」
優香は、ゆっくり立ち上がる。
口の中が切れたのか、少し血がにじんでいる。
「と・・・もだ・・・ち?」
私は、言葉の意味が分からなくなった。
優香の親友の奈緒に、酷いことしたのに。
優香にも、いっぱい酷いことしたのに。
何で、友達なの?
「そうよ。確かに、恵里にはムカついたけど、友達でしょ。奈緒もそう思ってるよ。」
優香の手が私の頬をなぜる。
その手がとても優しくて、温かくて私は声を出して泣いた。
「確かに、好きな人が他の人と仲が良くてムカつくのは分かる。でも、ぶつけるだけじゃ駄目なんじゃない?相手が自分の事を見る状況を作るんじゃなくて、見てもらえるようにするんだよ。」
見てもらえるようにする・・・?
「やり方、間違えたね。恵里のやり方は奈緒にも、龍崎君にも良くないよ。」
優香は、私の頭をなぜる。
私は、抱きついて泣いた。