fourty fifth story
「もしもし・・・俺。・・・馨だけど・・・。」
『ああ。どうした。かけてくるなんて、珍しいな・・・。』
「今、本村病院に居るんだ・・。」
『・・・・。』
「あの人・・・お袋が倒れた。」
『・・・・。』
「過労で、胃に穴が開いたって。だいぶ衰弱してるらしい。」
『・・・・。』
「・・・・来れない?」
『・・・・。』
「なんか言えよ。」
『・・・ねぇ、誰と話してるの?』
「!!」
『・・・。悪い。今、忙しいんだ。』
「・・・何処に居るんだよ!」
『・・・・・・・・・・・・・会社だ。』
「っ!嘘つけ!!今、何処なんだよ!!』
ツーツーツー
神田に抱きついているあいだ、頭の中ではさっきの会話がグルグル回っていた。
何でだよ。
何でなんだよ!!
俺は何をすれば・・・・どうすればいいんだ?
小さい頃から、あの人たちを仲直りさせようと色々やってきた。
でも、その結果はいつも同じだった。
何も・・・一つも変わっていなかった。
俺は何も出来ない。
あの人たちと笑い会えるようにすることさえ、楽しかった昔を取り戻すことさえ出来ない。
出来損ないなんだ。
なんて無力なんだ。
こんな自分がとても、とても憎かった。
泣いている俺と、俺の背中をまるで小さい子をなだめるように叩く神田。
・・・・・・かっこワリィな・・・。
情けなくって、自分が無力すぎて・・・。
俺は死にたいほど、恥ずかしかった。
「龍崎、私ね、あの時、龍崎と会わなかったら大変なことになってたと思う。」
「はっ・・・?」
いきなり神田は喋り始めた。
神田の顔は俺の見えない位置にあって、何を考えてるのか全くわからなかった。
「それだけじゃないんだよ。龍崎に会うまで、夜の闇・・・少し怖かったんだ。ずっと、居たのにね・・・。でも、龍崎が居るって思ったら、楽しくなったんだよ。」
「・・・・何が言いたいのか、分からないんだけど。」
神田の意味不明な言葉で涙が止まってきた俺は、張り付いている神田の肩を掴み、顔を見てみた。
「・・・・・なんで・・。なんで、お前が・・・?」
「うるさ・・・ぃ」
神田は泣いていた。
「・・・とにかく、龍崎は無力じゃないから。私は龍崎が居て。本当に助かったんだから。・・・・・自分ひとりでそんなこと悩むなよぉ〜・・・。」
神田はそれだけ言って、俺の胸に顔を埋めた。
服がぬれていってるから、きっと・・・絶対泣いているんだろう。
俺は胸の中で小さく震えている肩をゆっくり抱きしめる。
何でこいつは、こんなに安心出来る言葉をくれるんだろう。
何で、俺のために泣けるんだろう・・・。
せっかく止まった涙がまた出てきた。
こいつが居て、本当に良かった。
俺は、神田の肩に顔を埋めた。
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