fourty fourth story ほすぴたる
「っ・・・・。」
声を出さずに龍崎が泣く。
男の子は、声を出して泣いちゃいけないのかな・・・?
龍崎の姿を見ながら、そう思う。
握っている大きいはずの手は、小さく震えていて強く握り締めたら崩れてしまいそうだった。
「龍崎。大丈夫。お母さんは大丈夫だよ・・・。」
私は、あんまり龍崎の顔を見ずに言った。
返事の代わりに、少し強く手を握ってきた。
「ストレスによる過労ですね・・・。」
病院へ着いて、医者から言われた言葉。
「・・・・過労・・・?」
龍崎は理解しきれないという顔でたずねていた。
「ええ。最近ストレスたまってたような感じはありませんでしたか?それで、胃に穴が開いてしまってました。吐血はそのためでしょう。」
何も言い返さない龍崎に医者は続けた。
「ですが、だいぶ衰弱してしまってますよ。ご飯は食べてましたか?その点ではもう少し遅ければ危ない状態でした。」
ビクッっと、龍崎の体が反応する。
私は直哉から聞いた話を思い出した。
「・・・お父さんは何処に居ますか?」
医者は、龍崎の状態を見て話せないと感じたのか、辺りをきょろきょろする。
「・・・・あの人は・・・・・・・・ココには居ません。」
龍崎から悲しみが伝わってきた。
「・・・・。話してもらえるかな・・・。」
医者は何かを感じ取ったのか、腕を組み、じっと龍崎を見つめる。
「・・・・私・・・そろそろ帰るね。」
私はココに居てはいけない気がして、帰ろうとした。
でも・・・・。
「居てくれ。」
龍崎は私の手を掴んでいった。
いいのかな・・・。と、思いながらも、私はココにいることにした。
「あの人・・・・父と母は、昔から仲が悪いんです。・・・ここ2,3年は特に・・・。で、父は、浮気をしていて・・・。それを母は知って、ずっと泣いてました。」
龍崎は、一つ一つ、言葉をかみ締めるように言った。
握っている手に力がこもっていた。
さらに龍崎は詳しく話した。
「・・・・。一度、お父さんと連絡取ってくれるかな・・・?」
話し終わった後、医者はトントンと、ペンの先を机に当てながら難しそうな顔をしながら言う。
「・・・・・やってみます。」
龍崎は立ち上がり、外へとでた。
「ねぇ・・・。お父さん・・・、連絡取れるの・・?」
「わかんねぇ・・・。掛けて見るだけ掛けて見る・・・。」
龍崎は手馴れた手つきで公衆電話のボタンを押す。
今でこそないだろうけど、その電話番号を何回かけたんだろう?
突然だけど、そう思った。
「わりぃ・・・。あそこに座っててくれないか?」
受話器を耳に当てながら、龍崎は少し離れたいすを指差した。
「うん。」
私は素直に従った。
そのいすの横には窓があった。
もう、空は明るくなっていて、私は携帯を取り出し、優香にメールを送った。
「っ・・・ざけんな!!」
しばらくして龍崎は、受話器を床に投げつけた。
受話器がガコンッと、音をたてた。
「・・・・龍崎・・・。」
「結局そうなんだ・・・。俺がどうにかしようとしても・・・・ッッ。」
龍崎は私が声をかけたのも気づかない様子だった。
「・・ねぇ・・・、龍崎。」
「何やっても・・・あの人たちは・・・毎日・・・。」
私は、龍崎をそっと抱きしめた。
「・・・。わるい・・・。」
龍崎は静かに涙を流していた。
「さっきから、そればっかりだよ。」
私は龍崎の頭をそっとなぜた。
読んでいただき、ありがとうございました!
少しは恋愛っぽくなりましたでしょうか・・・?
以前、友達に。。。「あれって、恋愛じゃよね?」と、聞かれてしまいましたぁぁ・・・。
これからも、よろしくお願いします!