fourty second story
―――神田だ。
俺の家の前にいるのは・・・神田だ!
なんで、気がつかなかったんだ?
あの服、あの髪、あの姿。
どっから、どう見たって神田なのに。
俺はカーテンに手をかけたまま、動けなかった。
出来ることなら、階段を駆け下りて、神田に会いに行きたい。
でも、俺の何かがそれを制止する。
なんだか、自分の中に二人の人がいるような気がする。
俺は動こうとしない脚と、駆け出したい衝動を抑えきれない思いを抱きながら、もどかしい思いでいっぱいだった。
自分が二人いればいいのに・・・。
しばらくして、神田は立ち上がろうとしていた。
その足は、寒さかとてもおぼつかなかった。
そして・・・・・・やっぱりこけた。
俺は窓を思いっきり開けた。
・・・つもりだったけれど、窓の鍵はしまっていて、外に出そうとしていた頭は窓にぶつかり、ガンと、言う音だけがむなしく響いた。
「・・・・つっぅ・・・。」
俺は痛みのあまり、しゃがみこんだ。
こんな痛み、久しぶりだった。
喧嘩では、やられる前にやるし、こけたりなどしないし・・・。
だからか、いつもより痛く感じた。
痛みがようやく治まって、窓の外を見てみると、すでに神田はいなくなっていた。
なんだか、とても悔しかった。
「あ〜・・・。クソ。」
意味もなく、そう呟いた。
神田はあの日からも毎日、家の前でうろちょろしていた。
何がしたいのか、全く意味不明だったが、その姿はとても可愛かった。
飛び出せたら、どんなに楽だろう。
俺はジーパンを握り締めながら何度も思った。
田上の言っていたことは本当だったのだろうか?
もし、本当だったのなら、神田はなぜ、いまさらここに来るのだろうか?
もし、嘘だったのなら、俺は信じてもいいんじゃないか?
「・・・・。」
考えれば、考えるほど、俺の頭はぐちゃぐちゃになって行く。
俺は頭をかきむしった。
ドサッ
静かな家に、何かが倒れたような音が聞こえた。
音は一階からでてきたようだ。
「・・・・。」
確かに、一階にはあの人がいるのだから、音がするのは当たり前だった。
でも、俺は恐怖感でいっぱいになった。
何が起こった?
あの人は何をしたんだ?
俺は一段一段ゆっくり階段を下りていった。
階段を下りていくにつれ、俺の部屋の明かりはさえぎられていった。
闇に包まれていくことに、さらに恐怖感がつのった。
暗いところなら、数え切れないぐらい行ってるのにな・・・。
廊下はいつもと変わりなく、暗かった。
俺はまだ慣れてない眼を必死に開いて、リビングのドアノブに手をかける。
「・・・・っ!」
リビングの床に、あの人がぐったりと倒れていた。
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