fourtyth story 手紙
パンが来なくなった。
もし、俺があの時神田に会おうなんて、馬鹿なこと考えなかったら、今もパンと一緒に手紙が読めたんだろうか?
俺はじっと、机に積んであるクシャットした手紙を見た。
パンが届くたび、俺はそれを探していた。
そして、その手紙を見つけた時、柄にもなく喜んでしまっていた。
俺が本当に楽しみにしていたのはパンではなく、手紙ではないのだろうか?
モスッっと、ベットに倒れこんだ。
少し眼を閉じれば、あいつの顔が浮かんでくる。
俺はそこで眼を開けた。
寝てしまったら、夢を見るから。
パンが届かなくなった頃から、悪夢はさらに酷くなった。
あの人たちの喧嘩の夢。
俺が置いていかれる夢。
神田がすすり泣く夢。
神田が俺のそばから消えてゆく夢。
夢を見ない日なんかなくなった。
毎日眠れば、うなされる。
汗をかき、シャワーに行く途中あの魂が抜けたように泣いている母の姿を見る。
もう何日、こんな状態なんだろう?
こういうのを、家庭崩壊ってゆうんだよな。
そんな事実にいまさら気づかされた。
「・・・・・・・まただ。」
また、外に誰かがいる。
最近毎日そうだ。
少しのぞいてみると、誰かが家の前を右往左往している。
今日も、降り始めた雪の中、同じ人が行ったりきたりしている。
「誰だよ。」
気味が悪い。
いったん起こしかけた体をまたベットに預けた。
ベットがきしむ音が聞こえた。
「いつもいつも・・・」
「何なんだよ・・・」
「嫌だ。嫌だ。嫌だ。」
また、小さい時の俺があの人たちの声に追われる。
夢だとわかっているのに、目が開けられない。
「もう・・・・・・走れないよぉ・・・」
俺の脚が止まりかけた時、目の前に人影が現れた。
「龍崎」
「神田・・・・・。」
俺は今の姿に戻り、目の前には神田が現れた。
「近付かないでよ。」
少しづつ神田に近づいていた俺に、神田は睨みながら静かに言う。
・・・・・また、同じ夢か・・・・。
もう言うなよ。
俺はその続きを知っている。
「もう、あなたなんて・・・・嫌いだよ。」
その言葉と共に、俺は真っ暗なところに落ちる。
もがいて、もがいて、もがくけれど、どうにもならなかった。
やっと、眼を開けることができるようになると、決まってシーツはぐしょぐしょだ。
もう、寝るの止めてしまおうか・・・。
もう一度窓から外を見てみると、雪がうっすら積もっていた。
さっきまで、右往左往していた人はいない。
・・・・・向かいの壁にもたれかかって、座っていた。
あの服・・・・どこかで・・・。
少し冷静になった俺は、じっとそいつを見てみた。
*続きます*
読んでいただき、ありがとうございました!!
これからも、応援よろしくお願いします!