thirty story
―TO 龍崎
やっほ〜。
昨日はごめんよ?龍崎は悪くないよ。
だから、謝るな!!
これ、今日買ったカレーパンと、溜まってたカレーパン。
賞味期限怪しいのあるから・・・。おきおつけて。
明日も、私は屋上にいるよ〜。
PS.恵里も、心配してたよ
FROM 神田 奈緒―
キレイにたたまれた紙を、クシャっとズボンのポケットに入れる。
紙は目の前に無いのに、頭の中では書かれてあった言葉が復唱されていた。
行きたい。
屋上に行ったら、アイツが待っていてくれるかもしれない。
『ああ、来てやろう。』
俺のじゃない、昔聞いた声が聞こえた。
辺りを見回したけど、誰も、何もいなかった。
『ああ、来てやろう。』
どうやら、頭中から聞こえてきてるらしい。
そうだよな。
俺を待ってくれる人なんて・・・。
分かってただろ?
前みたいな思いしたいのか?
心を許すな。
俺は、カレーパンの袋を地面に叩きつけようとした。
でも、無理だった。
腕を振り上げた状態で動かなかった。
情けない。
下駄箱の上に袋をボスッと、置くと外に向かって足を進めた。
軽くなって、行き場の無い手が冷たかった。
ガチョンッ
不気味な音と共に、煙草が出てくる。
それをとり、新しい煙草を一本取ると火をつけた。
少し振りに吸う煙草は、少しまずかった。
「・・・馨君って煙草吸うんだ。」
振り向くと、あの田上が居た。
「あのね、私、馨君が夜の町に居るって聞いて、家飛び出してきちゃった。」
俺は、どうもこの女が嫌だった。
ねっとりするような喋り方。
変な自信に満ち溢れている眼。
「最近、馨君学校に来てないから・・・心配になちゃって・・・。どうしたの?相談にだったらいつでも乗るよ?」
「乗ってもらう相談なんてない。」
俺は足早に田上から離れた。
後ろで田上がブツブツ何か言っていたが、俺は気にせず足を進めた。
ポケットの中でカサカサと紙が踊っていた。
指先でちょんっと、その紙をつついてみた。
懐かしい香りがしたような気がした。
『心を許してはいけない』
『神田に会いたい』
靴が地面を踏みつける音がむなしく響いた。
*続きます*
読んでいただき、ありがとうございます!!
今回、久しぶりに恵里が登場しました!!
雰囲気暗くなりますねぇ・・・・。
これからも、よろしくお願い致します!!