fifteenth story
『・・・・お・・かぁ・・・さ・・ん・・』
龍崎は確かにそう、言った。
龍崎からその言葉が出るのは、とてもとても意外なことで・・・。
もう一度、確認しようとしたところ、あっさりはぐらかされた。
龍崎は、何を抱えてるんだろう?
私に、彼を助けることは出来ないのだろうか?
と、けなげな私が、色々なことを考えている時、龍崎は袋を掴み、「もう行け。」と、言ってきた。
・・・ちょっと待て。
「そのパン、龍崎へのお土産と、私の昼ごはんなんだけど・・・。」
「・・・はっ?」
龍崎が信じられないという目で見てくる。
「なに、その目・・。てゆーか、今、昼休憩だから、まだ授業始まらないんだよ〜」
その目に少し むっ ときた私は、ちょっと嫌味な顔をして返してやった。
「・・・・。」
龍崎は、眉間にしわを寄せながらも、パンの袋を私と龍崎の間に置いた。
きっと、食べていいということだろう。
そして、私と龍崎のランチタイムが始まった。
ポカポカと11月なのに温かい光の中、龍崎は何だか子供のようにカレーパンにむさぼりついていた。
その様子を見ながら、私はさっき龍崎がいった言葉について少し考えてみた。
『おかぁさん』
この年の男なら、おかぁさんではなく、お袋と言うのが多い。
特に、龍崎みたいな人はそう呼ぶだろうと、思ってた。
なのに、まるで呟くように龍崎は「おかぁさん」といった。
なぜだろう?
《龍崎は、実は・・・マザコンだった。》・・・。私の頭では、これぐらいしか思いつかない。
でも・・・、これはさすがに・・・ねぇ?
頭がもじゃもじゃしてきた私は、ついに決心した。
龍崎本人に聞いてみることに!!
「ねぇ・・・。龍崎のおかぁさんって、どんな人?」
「・・・。」
龍崎の手と口と目・・・とにかく全てが止まった。
動揺している。
ぞわっ
私の背中に悪寒が走った。
龍崎とはじめてあった時に感じた、悲しいような、憎いような、そんな感情が龍崎から出ていた。
私は、とんでもない事をしてしまったのかもしれない。
そんな想いが頭をよぎる。
「お前が・・俺の質問に答えたら・・・教えてやる。」
『ごめん』と、謝ろうとしてた時龍崎の声が聞こえた。
その姿からは、さっき感じた感情は出ていなかった。
・・・。それ、私が行ったことじゃん。
「・・・。どーせ、なぜ夜ぶらついてるんだ?でしょ。聞き飽きたぁ〜。それ。」
「分かってんじゃん。」
鼻で笑う龍崎は、いつもの龍崎だった。
「良かった。」
私は、龍崎に聞こえないように、ボソッと呟いた。
そして、また龍崎はカレーパンを食べだした。
「えっ・・・・。奈緒?・・・・。」
私は、屋上のドアの裏から声がしたのに気づかなかった。
*続きます*
はい。まだまだつづきますよぉ〜。
引き続き、よろしくお願いします。
今回、奈緒ちゃんちょっと踏み込んじゃいました。
・・・、龍崎は何をかんがえていたんでしょうねぇ・・?
呼んでいただきありがとうございました。