one hundred seventeen story
冷たい夜風が、肌を刺す。
止めようにも止まらない涙が頬から落ちて、地面をぬらす。
ここは、どこだろう?
がむしゃらに直也さんを探して、走り回った結果がこれだ。
見覚えのない住宅街の公園。
黒ずんでるベンチに私は力尽きて座った。
空はうっすらと明るくなっていた。
「直也さん・・・。」
頭に浮かぶのは直也さんの笑った顔。
龍崎をからかう時の、楽しそうな声。
満さんを思い出すときの幸せそうで、つらそうな顔。
どこに居るの?
満さんを追いかけて・・・・。
不吉な考えが、頭をよぎる。
やだよ。
行っちゃいやだよ。
「うあぁぁぁぁ・・・」
声を上げて泣いた。
会社へと向かう人が私を怪訝そうに見る。
それでも私は泣き続けた。
直也さんに二度と会えないかもしれない。
あの優しい笑顔に、温かい空間に、もう触れることができなくなるかもしれない。
そんな、考えを振り切ろうとするのに、出来ない。
怖い、怖いよ。
「・・・・っお前、馬鹿だろっ!」
「えっ?」
突然響く声と、私を包み込む温かいもの。
「・・・・龍崎」
「な・・・「どこまで行ってんの?ここら辺は危ない奴が多いって、知らないのかよ!!」
んで、ここに・・・・
って、言う前に龍崎は私の耳元で怒鳴る。
私を抱きしめたまま。
「てか、なにが、私が居ない方が龍崎は楽。だよ・・・。意味ワカンネ。俺はお前と居る方が楽なんだよっっ・・・・。馬鹿。」
最後は涙でかすれて聞こえた。
「嘘だ・・・。だって、あんなに嫌そうだったジャン!!」
龍崎の胸に両手を当てて、必死に押し返そうとする。
それでも、私と龍崎の距離はちっとも変わらない。
「そうだよ!お前を俺から放そうとしてたからな!・・・・・お前が、俺のせいで傷つくのが・・・いやだったんだよ。」
弱々しく、消えそうな声で呟く。
「でも、無理だった。お前が居ないと、どうすればいいのか分からなくなる。自分が押しつぶされそうになる。」
ゆっくりと私から体を離した。
「俺さ、言われたんだよね。峯元に。俺も親父のようになるんじゃないんかって。それから、俺が将来親父のようになって、神田を傷つけるイメージばっか浮かんだんだ。」
だから・・・・・
龍崎はもう、続けなかった。
・・・続けれなかった。
下を向いて、必死に涙を見せないようにしてる。
後悔の思いが痛いほど伝わった。
「龍崎」
龍崎の冷たい頬に手を当てて、額と額をくっつける。
「私。龍崎が好き。大好きなんだよ。それで、もし、万が一、龍崎が心配するようなことが起きても私はずっと、龍崎を好きで居られる。絶対。」
視界が、ゆがむ。
私はいま、きっと大変な顔だろう。
鼻水と涙でぐちゃぐちゃの。
龍崎はすっと、笑った。
温かく。優しく。
そして、キスをした。
「なんか、ドラマチックだし・・・。」
長い間触れ合っていた唇が離れ、私はテレながら言った。
龍崎の顔をまともに見ることができない。
「だな。クサイな」
ククッと、龍崎は笑った。
おでこはマダ引っ付いたままで、私たちは、また笑い合った。
「もう一回する?」
いたずらに龍崎が笑う。
顔が燃え上がりそうだった。
「やっ・・・。恥ずかしい・・・。」
すっと、目をそらした。
「馬鹿」
龍崎は軽くキスをした。
「ちょっと。俺、居るんですけど。」
っっ!!
突然聞こえた声に顔を上げる。
「直也さん!!!」
そこには少し顔を赤くした直也さんが立っていた。
チッ
邪魔すんなよ
前から舌打ちとボヤキが聞こえた気がした。
私は、ぐっと龍崎から離れて、直也さんに抱きついた。
優しい、甘い香りがした。
「どこに居たの・・・。もう、あえないかと思った・・・。」
嗚咽で、上手く喋れない。
「ごめんね。さがしてくれたんでしょ?ありがとう・・・。」
直也さんはふっと優しく笑って、私を抱きしめた。
「お前さ、携帯に連絡するとか考えなかったの?」
ぐいっと、腕を引かれて、直也さんから引き剥がされる。
少しイラついた声で、龍崎は私を抱き寄せて、直也さんを少し睨んだ。
あっ・・・携帯・・・・。
それを思いつかなかった自分が恥ずかしくて少し下を向く。
「馨、お前、がきかよ!」
直也さんは龍崎を見ながら愉快そうに笑う。
「うっせ。」
龍崎は私を抱きしめる力を緩めないまま言った。
「はいはい。ほら、のれよ。帰るんだろ?」
直也さんは見慣れた赤いスポーツカーのドアを開けた。
「龍崎の家に戻ってくるの!?」
私は龍崎の腕から身を乗り出して聞いた。
「おう。どうも俺の家はあそこらしいからな♪」
ニヤニヤと笑いながら龍崎をていた。
龍崎は少し顔を赤くしていた。
「あはは♪」
私は笑った。
おかしくてたまらなかった。
幸せすぎてたまらなかった。
よかった・・・・
ほんとに。
お久しぶりです♪
第一志望校、だめでしたぁぁぁ・・・。
まぁ、私立で、頑張ってカッコイイ彼氏でもみつけちゃりまっす★☆
これから再開です♪
って、ありきたりっぽい話ですみません・・・。
あとちょっとかもしれませんが、よろしくお願いします♪