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one hundred sixteenth story

「・・・ねぇ、なんで。」


必死に言葉を探している私に龍崎はもう一度冷たく言う。


その冷たい目、声、表情。

その全てが私を捕らえて、締め付けるんだよ。


分かってるのかなぁ・・・。もう。



「あ・・・直哉さんが・・・居なく・・な・ッたんだよ?」


ほら、ちゃんと喋れない。

そんな顔、やめてよ。



「それ?」


「え?」


龍崎は私の言葉にそっけなく返す。

それ。って・・・どれ?


「手紙がポストの中に入ってた。鍵も一緒に。」


龍崎は制服のポケットからくしゃくしゃになった白い便箋を取り出して、私に放り投げた。


「それよんだら、さっさと帰って。もう、来なくていいよ。」




刺さるような言葉だった。

泣きそうになったけど、瞬きをしないようにして必死にこらえた。



ぎこちない動作で便箋を開けている私を尻目に龍崎は部屋の奥へと消えて行った。



《馨へ  

   

  やほやほ★直哉ですよ★☆

  突然の手紙に驚いたかな?って、馨はそんなキャラじゃないか。

  と、本題に入ります。

    ごめん。俺、ここでるわ。って、ここはもともとお前の家なんだけどな(笑)

  あれだよ。あれ。ちょっと仕事の関係で上司に戻って来いって言われちまった。

   だから。うん。でるよ。


  覚えてるか?あの公園。そう、俺とお前が運命の出会いをした場所だ☆

  あん時のお前は、本当に自分を見てるようだった。

  実は、お前が怖かったんだ。何でって?色々思い出すからだよ。

  冷めた生活。ミチルとの幸せな日々。見ることのできなかった子どもの顔。

  忘れようとしていたものが次々と浮かんできて。怖かった。

  なのに、何でだろうな?ほっとけなかったんだ。お前のこと。

  今となっちゃぁ、俺の人生の七不思議の一つだぜ★

  でも、よかったよ、お前と知り合えて。幸せだった。

  奈緒ちゃんにも会えたしな。



   お前には奈緒ちゃんが必要だろ。

  分かってるんだろ?お前も。

  何があったのかは知らないけど、お前は何も考えるな。

  ただ、自分の気持ちに素直になれよ。ほしいものには必死で手を伸ばせよ。

  できるだろ?

  てか、やれ。


  もう、あえないかもしれないけど。

  元気でやれよ。

  お前がこんな状態で出て行くのは後ろ髪どころか眉毛までしかれる思いダケド・・・。

  俺は、うん。




       じゃぁな。





                             直也》








ポタ


フローリングの床に水が落ちる。

私の目から溢れた水が。



駄目だよ。

直也さんが遠くに行っちゃう。

何でカワからないけど、そんな不安が胸を覆う。



「龍崎ぃぃぃ!」


私は龍崎が消えて行ったほうへ走った。

暗い廊下。

冷たい床。

窓から差されるつきの光。


そして浮かぶシルエット。


私はそのシルエットに、手紙を押し付ける。


「龍崎は・・読んだの?これ。」


「・・・・ああ。」


「じゃぁ、何でここに居るの?」


「・・・・・・・・」


「直也さん、どっかに行っちゃうよ!」


「・・・・みたいだな」


「・・・・・・・っ!?」



パシンと、乾いた音が響く。

私の手はジンジンと痛んだ。


「なにっ。それ・・・。龍崎は・・・何を考えてるんだよぉ!!直也さんは家族じゃなかったの?直也さんは、龍崎の大切な人じゃなかったの?!」


龍崎の肩をつかんで私は叫ぶように聞いた。


「なんだよ、それ。意味わかんねぇし。あいつと俺が兄弟?大切な人?そんなこと「違う!!」」


龍崎は冷めたように笑ってた。

でも、もう、無理なんだよ。

どんなに、龍崎自身が自分の気持ちを抑えても。

もう、バレバレなんだから。


嫌われようが関係ない。

私は、暴走しだした。



「ほんとは、そんなこと思ってないくせに。今にも寂しくて泣き出しそうなくせに。町中走り回って直也さんを探し出したいくせに。分かってるよ!もう、隠そうとしたって無駄なんだから!」



私にはわかるんだから。



自分にも聞こえるか聞こえないかの声で最後にそう呟いた。





「・・・・・・・」



龍崎は何も言わない。

沈黙が辺りを包んだ。



「ねぇ、何を考えてるの?何がそんなに不安なの?何におびえてるの?」


私は龍崎に向かって手を伸ばす。



その手が触れる瞬間、龍崎は小さな子どもがお父さんに怒られた時のように体を小さく震わした。



龍崎の目からは冷たいものはなくなっていて、代わりに不安が渦巻いていた。



「龍崎、ごめんね?」


私はゆっくり龍崎を抱きしめた。

懐かしい匂いが鼻をかすめる。


「話さなくてもいい。龍崎が私と居ない方が楽なら、私は龍崎の近くにはもう、二度と行かない。でもね、直也さんは違うんだよ。」




私はゆっくり龍崎から体を離し、目を合わせた。



「直也さんは龍崎の大切な人なんだよ。」



龍崎は泣き出した。

ボロボロに泣くのではなく、目から一粒の水が流れ出していた。



抱きしめたい衝動に駆られた。




でも、駄目なんだ。

けじめをつけなきゃ。



わたしは 自分の腕をぎゅっと掴んで、必死に笑った。



「じゃぁね。」


それだけ言って、玄関へと向かう。





「あとね、龍崎のお父さんに会ったよ。」


玄関のノブに手をかけながら言う。

決して後ろを振り向かないように。



「話、聞いて上げて。絶対に。最初は憎しみが収まらないかもしれない。でも、いつかは消えていくから。」


「チャンスをあげてよ。」


最後の言葉は私になのか、龍崎のお父さんになのか、分からない。




「うん。最後の頼みだよ。お父さんの話を聞いて上げて。」




わたしは、手をひらひらと振って、外に出た。



涙が止まらなかった。


私は思いっきり空を見た。

月がにじんで見えるのは、涙のせいか?


私は深呼吸を一つして、涙を拭いた。





さぁ、直也さんを探しに行かなきゃ。










はい〜。

これが、一月、最後の更新になるかと思います・・・。

今度は2月4日に選1、つまり、推薦がありそれに向けて・・・。


それで受かったらいいのですが、駄目だったら3月まで更新は無理層です・・・。


はい。すみません〜


読んでくださり、ありがとうございました!

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