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one hundred forteenth story すれ違い

「龍崎・・・・、ごめんね・・っ!ひっ・・・。」


何も出来なくて。


病院の隣の公園のベンチでうずくまって泣く。

泣いたって、どうにもならない。

そんなこと、とっくの昔に知っている。

でも、止まらないんだ。



あ〜・・、情けないな・・・。



「・・・・・大丈夫かい?」


ポンと、肩に手を置かれたと思ったら、低い、やさしげな男の声が聞こえた。

どこか懐かしい、穏やかな声。


「ほぅぇ?」


涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を上げる。


そこには40代前半のスーツを着たおじさんが居た。

どこかで、みたことのある顔だった。



「どうしたの?まだ、学校の時間じゃないのかい?」


そのおじさんは、私の隣に座った。

不思議と、怪しい雰囲気は無かった。


「何かあったのかな?僕でよければ相談によるよ?」


何も喋れない私に、おじさんは優しく笑いかけた。

でも、なんだか、悲しそうだった。



「おじさんこそ・・・、泣きそうな顔してますよ?」


嗚咽で詰まりながら、問いかける。

おじさんは、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに苦笑した。


「ははっ、やっぱ、顔に出てるのかな?ちょっと・・・、ね・・・。」


スッと、表情が曇る。


「何があったんですか?」


私が問いかけると、おじさんの目からは涙が流れ出てきた。


「いや、私が悪いんですよ。誤解されても仕方の無い状況を作っていたのは、私ですからね・・・。」


下唇を軽くかみながら言うその姿からは、強い悲しみや悔しさが感じられた。



「聞いてくれますか?」


涙を止めるかのように、無理やり笑うおじさん。

そんな姿に、私はうなずくことしか出来なかった。



「私にはちょうど、君ぐらいの息子がいてね・・・。その子が小さい時から、奥さんと喧嘩になってしまって・・・。いや、仕事でおろそかにしていたんだろう・・・、家庭を・・・。」


いとおしげに、まるで、私をその息子と重ね合わせるかのように見つめる。


「その喧嘩は、日に日に激しくなってしまってね・・・。息子には悪いことしたよ・・・。そして、僕は一度過ちをしてしまったんだよ。取引先の娘さんと・・・・、まぁ・・・・、本当に、悪いことをな・・・。」


太もも辺りでぎゅっとこぶしを握るおじさん。

自分をとても責めていた。


「うかつだったよ。奥さんのことも気にかけないでさ・・・。で、息子から電話がかかってきたころにはジ・エンド。奥さんは病院で入院。・・・・・情けないよな。挙句の果てに、その電話にも、まともに出なかったんだから。」


ハッと、おじさんは軽く笑った。


・・・、何かが引っかかった。



浮気。病院。入院。電話。


何かが繋がった。


もしかしたら、この人は・・・。

一つの可能性が浮かび上がる。

というより、これしか考えられない。


「おじさんは、その後、何をしてたんですか?」


いきなり口を出した私に驚いたのか、一瞬ビクッと体を震わせた。


「あっ、あぁ・・・、その娘さんと付き合っていたんだが・・・、罪悪感が胸を覆って行ってな・・。その関係を終わらせようとしたんだ。難しかったけどな・・・。分かれるんだったら、首にしてやるって言われたよ。」


「まぁ、結局会社辞めて、関係も終わらせたけど・・・。大変だったなぁ〜。それからが・・。家に一度戻ったんだが、近所の人に聞いたら、まだ病院だって聞いてさ・・・。一気に自分が情けなく感じたよ。奥さんのこと思い出してみても、頭に浮かぶのは泣き叫ぶ姿だけ。このまま迎えに行く資格が無いって感じたよ。」



一度止んでいた涙が、またおじさんの目から流れ出す。


「だからさ、生まれ変わろうって思ったよ。仕事も見つけて、さ・・・。」



おじさんは目頭を押さえながら続けた。


「で、仕事も順調に行きだして、迎えに着たんだよ。息子と奥さんを・・・。」



「駄目だった。信じてもらえなかった。奥さんは僕の姿を見ておびえていたよ。息子も、もう来るなって・・・。僕は駄目な人間だ。全て失ってしまったよ・・。」



おじさんの体は小刻みに震えていた。

大の大人の背中が、こんなに小さく見えることがあることを知った。



「おじさん・・・、失礼ですけど・・・、お名前は?」


私はそっと、震える背中に手を添えて聞いた。


「僕の名前?聞いても何もないよ・・。・・・龍崎 浩平。」


龍崎・・・。

やっぱり・・・。


誤解してるよ。

この親子も、すれ違ってるんだ。



「おじさん、大丈夫だよ。諦めないで。何とかなるから!」



私と、お母さんがすれ違ってる時は龍崎が助けてくれた。

今度は私が助ける番。


ちょっと難しいけど、頑張ろう。


私はおじさんの手にハンカチを置いて、頑張って、とだけ言って走り出した。





まずは、直哉さんに知らせに行こう。

あの人も、私達の一人なんだから。

他人なんかじゃないんだから。













「直哉さんっっ!!」


バンッとドアを勢いよく開けて、家に入る。

中はシンと静まり返っていた。


「直哉さん?」


私は家の中へと足を踏み入れる。

音が無い。






どこにも直哉さんはいなかった。




身震いがした。



どこに行ったの?






すみません・・・。学校行事が重なりまして・・・、運動会に、文化祭・・・、私、一応会長なんでござんますよ・・・。


すみません、言い訳ばっかで・・・。


受験モードに入らないと駄目なんで、更新、めっちゃ不規則になるかと思いますが、御了承下さい・・・。


本当にすみません。

これからも、完結までの間、宜しくお願いします!!

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