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one hundred nineth story

ドアノブが回り、龍崎が家から出てきた。

私はすぐに近くのごみ置き場の陰に隠れる。


「お前は他人だろ!?首突っ込んでくんなっ!」


龍崎の怒鳴り声が聞こえて、それと同時に乱暴にドアを閉める音が響いた。





そして、私が隠れているごみ置き場の反対側にもたれた。


「・・・・・・・・・・、やだよ・・・。もう・・・。」


龍崎からは、今までに感じたこと無いほどの悲しみと戸惑い、罪悪感が渦巻いていた。


・・・・、龍崎・・・・。



ここで龍崎に抱きつけたら、どんなに楽だろうか?

でも、動かない。

こんな龍崎を前にして、私は指一本も動かすことができないんだ。




そっと、龍崎のほうを見てみる。







龍崎は泣いていた。


声を出さずに、ただ、涙だけを流していた。




「くそっ・・・。」


がしゃんとごみ置き場を叩くと、龍崎はどこかへ行ってしまった。

方向からして学校ではないのは確かだ。


また、戻ってしまった。

会ったばかりの龍崎に。



龍崎の気配が無くなって数分後、ようやく私は立てるようになった。

ゆっくりと、龍崎の家に向かう。



ドアの前に立つと、中からすすり泣く声が聞こえた。


―――――えっ?


私は急いでドアを開けた。





そこには壁にもたれてうずくまってる直哉さんがいた。



「・・・・、なお・・・や・・さん?」


初めて見る弱々しい直哉さんの姿に、私は上手く話しかけれなかった。




「・・・・・・・他人・・・、だってさ。」


私の声に気づいたのだろう、でも、弱々しい、今にも消えてしまいそうな声だった。


直哉さんのしているエプロンには、いくつものしみができていた。




「・・・・・・っ・・・」


私は何もいえなかった。

なんていえばいいのか分からなかった。

何か言えば、直哉さんが崩れてしまいそうだった。



「俺・・・、ここに居ないほうが良いのかなぁ・・・。」


しばらくして、直哉さんが顔を上げる。

その目はうつろで、ただ、天井を見つめるだけだった。


「えっ・・・。」


駄目だよ。


そう思っているのに、うまく言葉にならない。



龍崎は直哉さんを必要としてる。

それは絶対だって、分かってるのに・・・・・・。



自分がもどかしい。








「ごめんな、奈緒ちゃん・・・、今日は帰ってくんね?俺・・・、今日はダメだ。」



数十分後、直哉さんはゆっくりと立ち上がって奥へと行ってしまった。

いつも話すときは相手の目を見る直哉さんが、一度も私を見なかった。


直哉さんはとても悲しんでいた。

傷ついていた。



龍崎も。





私は・・・・・、どうすればいいんだろう。


















ぽてっと、床に座り込む。

壁に体を預ける。


何をすればいいんだろう。

どうすればいいんだろう。



答えは出てるはずなのに、どこかでそれを否定してる。

それ以外のことを探している。


私も所詮・・・、自分のみを守りたがる醜い人間なんだ。






カシャッ


だらんとたらしていた手に、何かが当たる。



「なに・・?これ・・・。」


手にとって見てみると、それは金のペンダントだった。



中の写真を見てみる。



直哉さんが写っていた。

じゃぁ・・、これは・・・、龍崎のもの?

・・・・、そういうキャラじゃないか・・。

そしたら・・、直哉さんのもの?


自分の写真を・・、自分で?



「あれ?」


なんとなくペンダントをひっくり返せば、もう一つ開くところがあった。


私はそこに手をかける。





とてもとてもきれいな人が、幸せそうに笑っていた。






その内側には




《NAOYA MITIRU AIWOTIKAU》



確かに、そうほられていた。



直哉 ミチル 愛を誓う













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