one hundred fifth story
学校から出て家につく頃。
肩にはうっすらと雪が積もっていた。
ガチャっと玄関のドアを開けると、エプロン姿でフライパン返しをもった直哉がリビングのドアから顔を出した。
「おっ!どうした?早退なんて・・・。調子悪いのか?今、昼飯作ってるから食ってけ!」
直哉が手招きをする。
俺が朝したことを忘れているのだろうか?
「いい。いらね。」
俺は、そういって部屋に上がった。
ガチャっと部屋の鍵を閉めて、ベットに横たわった。
人一人、近くに居ないだけでこんなに疲れるのか・・・。
それが神田だから特になのか・・・?
「くそっ。」
ボスッと、枕を壁に投げつける。
これでいいはずなのに・・・。
これでいいはずなのに・・・・・。
これで・・・・。
つらい。
苦しい。
悲しい。
心が悲鳴を上げた。
「なぁ・・・。何があったんだよ・・・?」
とんと、ドアに寄りかかる音と、部屋のドアの外側から直哉の声がした。
「・・・・・。」
「シカトすんな。馨。」
「・・・・。」
「・・・・、もぉいい!奈緒ちゃんから聞いてやる!!」
「!!」
バンッ!!
ドアを勢いよく開ける。
そこに直哉の姿は居なかった。
「いへぇぇぇ・・・。」
直哉は、勢いよく開けたドアと壁の間に挟まっていた。
ギィィとドアが動き、鼻を真っ赤にした直哉がでてきた。
少しばかり、潰れた気さえした。
「・・・わりぃ・・。とにかく、なんでもねぇから。へんな検索入れんな。」
俺は、直哉から眼をそらして、再び部屋に戻った。
鍵を閉めて、ベットに足を運ぶ。
「何でもないって顔して無いだろ。」
「・・・・・・なっ!!」
ベットに直哉が座っていた。
さっきまで、廊下で鼻を押さえていたはず・・・・・。
俺は廊下に顔を出した。
直哉がいたはずの場所には、葉っぱが落ちていた。
もしかして・・・
「直哉・・・お前・・・たぬ・・・・って、あるかぁぁぁ!!」
「おぉ〜。乗りツッコミとは!やるねぇ・・・、馨!俺と一緒にM-1めざさっっって・・・え〜」
足を組み替え始めた直哉の首根っこを捕まえて、廊下へ放り投げた。
「次、入ってきたら・・・殺す。」
そうとだけ言って、鍵を閉めた。
しばらくドアをバンバン叩いて泣いていた直哉も、1時間ほどすると一回へ下りていった。
俺は、一つため息をついて、寝た。
窓から、赤く淡い光が差し込んでくる頃。
俺はリビングで泣きつかれて寝ていた直哉に気づかれないよう家をでた。
お袋を迎えに病院へと足を進めた。
病室では、お袋が鼻歌を歌いながら荷物を整理していた。
「準備できた?」
「あっ!馨!!あと、もう少しよ?家には、直哉君がいるのよねぇ・・。しばらく、家事任せられるわvv」
嬉しそうに言う母。
病院へ運ばれてきた時の、疲労さは微塵も残っていなかった。
「今日は奈緒ちゃん来てないの?」
手をぽんと叩いて、お袋は言った。
《奈緒ちゃん》
チクリ。
「アイツは・・・、来ないよ。」
永遠に・・・。
「え〜・・・。そうなの?せっかく、一緒に食べようと思ってお菓子取ってたのに・・・。」
言葉の意味を正しく受け取っていないであろうお袋は、ぷぅっと顔を膨らませる。
ぎゅっと、自分の腕を掴んだ。
「・・・・・・・・カオル・・・。」
荷物を持ったとき、ドアの影から声が聞こえた。
逆光で、顔が中々見えない。
この声・・・、どこかで・・・。
「あっ・・・・、あなた・・・。」
お袋が、静かに言った。
えっ?
ドアの影に居たのは
あの人だった。