表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/121

one hundred second story

「いちっ!にっ!さん!し!・・・」


グラウンドから聞こえる運動部の声に耳を傾ける。


もう・・、部活始まったんだ・・・。




5.6時間目をサボってまで、私はここで龍崎が下りてくるのを待っていた。

それでも、一向に下りてくる気配は無い。


私はしつこいんだから・・・。



――オワリニシヨウ――


龍崎の冷たい声が頭から離れない。


嫌いになったのかな?

確かに、私は気持ち悪いだろうけど・・・、龍崎気にしてなかったじゃん。



視界がぼやける。

私は涙がこぼれぬよう、上を向いて目をつぶった。



何かあったんだ。

だって、あの時、悲しそうだったもん・・・・。

何かあったんだ・・・。


なにか・・・、





「奈緒!?」


ガチャンとドアが開いて、恵里と優香が入ってきた。


「何してんの?」


優香が私の冷たくなった体に、カーディガンをかけながら言う。



「・・・・、龍崎・・・、待ってるの・・・。」


上を眺めながら言う。


龍崎?と、恵里と優香は顔を見合わせた。



「奈緒・・・、馨君、もう教室に帰ってきてるよ?」






「え?」



帰ってきてる?

何で?待ってたのに・・・。


私は立ち上がって、裏側に走った。


あ〜あ・・・。




もう一つの校舎へつながるドアが、開いたまま風にゆられていた。



「・・・、気がつかなかったや・・・。」


ぺシャリと床に座り込む。

体中から力が抜けた。


今まで、何してたんだろう。


涙が出てきた。

今度は上を向いても止まらなかった。




「・・・、奈緒・・・、龍崎君と何があったの?」



優香がしゃがみこんだ。


何があったんだろう?

分かんない。


ただ、

分かるのは


振られたんだろうってことだけ。



「ははっ・・・、わかんないや。」


乾いた笑いがこぼれる。



「馨君・・・、帰ってきたとき・・、冷たい目してた。何かあったんでしょ?」


恵里が悲しそうな顔を浮かべた。

そんな顔しないでよ・・・。


「わかんないよ。」


「話・・・、聞いてあげた?」


「ううん・・・。言ってくれなかった。」


「・・・、もう一度、聞いてみたら?」


もう・・・いちど?


私は立っている恵里の顔を見上げた。


「無理だよ・・。」


そう・・、無理なんだ・・・。



そういって顔を下に向ける私に、恵里はイラだったような声を出す。


「なんで?」


振られたから。


口に出すのがつらかった。

声が、中々思うようにでなかった。



「ふっ・・・振られたから。」


改めて、自分の口から言うと、飲み込めてきた気がした。今の状況が。


―本当に、振られたということが。

―もう、どうしようもないってことが。



今までの龍崎との思い出が走馬灯のように頭を駆け巡る。


「・・、人の中に踏み込むのはウザインだって・・・。付き合いきれないって・・・。」


私は何を言ってるのか分からなくなった。

ただ、頭をめぐる、終わりの無い思い出に引き込まれるようだった。



『俺、重症かもな。・・・・・・・・お前のことが好きすぎてるかもしんねぇ・・・。』


――好きすぎてるのは、私のほうだったよ。



何でかなぁ?

何でコンナになったんだろ?



ねぇ、龍崎・・・、聞こえてる?
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ