one hundred second story
「いちっ!にっ!さん!し!・・・」
グラウンドから聞こえる運動部の声に耳を傾ける。
もう・・、部活始まったんだ・・・。
5.6時間目をサボってまで、私はここで龍崎が下りてくるのを待っていた。
それでも、一向に下りてくる気配は無い。
私はしつこいんだから・・・。
――オワリニシヨウ――
龍崎の冷たい声が頭から離れない。
嫌いになったのかな?
確かに、私は気持ち悪いだろうけど・・・、龍崎気にしてなかったじゃん。
視界がぼやける。
私は涙がこぼれぬよう、上を向いて目をつぶった。
何かあったんだ。
だって、あの時、悲しそうだったもん・・・・。
何かあったんだ・・・。
なにか・・・、
「奈緒!?」
ガチャンとドアが開いて、恵里と優香が入ってきた。
「何してんの?」
優香が私の冷たくなった体に、カーディガンをかけながら言う。
「・・・・、龍崎・・・、待ってるの・・・。」
上を眺めながら言う。
龍崎?と、恵里と優香は顔を見合わせた。
「奈緒・・・、馨君、もう教室に帰ってきてるよ?」
「え?」
帰ってきてる?
何で?待ってたのに・・・。
私は立ち上がって、裏側に走った。
あ〜あ・・・。
もう一つの校舎へつながるドアが、開いたまま風にゆられていた。
「・・・、気がつかなかったや・・・。」
ぺシャリと床に座り込む。
体中から力が抜けた。
今まで、何してたんだろう。
涙が出てきた。
今度は上を向いても止まらなかった。
「・・・、奈緒・・・、龍崎君と何があったの?」
優香がしゃがみこんだ。
何があったんだろう?
分かんない。
ただ、
分かるのは
振られたんだろうってことだけ。
「ははっ・・・、わかんないや。」
乾いた笑いがこぼれる。
「馨君・・・、帰ってきたとき・・、冷たい目してた。何かあったんでしょ?」
恵里が悲しそうな顔を浮かべた。
そんな顔しないでよ・・・。
「わかんないよ。」
「話・・・、聞いてあげた?」
「ううん・・・。言ってくれなかった。」
「・・・、もう一度、聞いてみたら?」
もう・・・いちど?
私は立っている恵里の顔を見上げた。
「無理だよ・・。」
そう・・、無理なんだ・・・。
そういって顔を下に向ける私に、恵里はイラだったような声を出す。
「なんで?」
振られたから。
口に出すのがつらかった。
声が、中々思うようにでなかった。
「ふっ・・・振られたから。」
改めて、自分の口から言うと、飲み込めてきた気がした。今の状況が。
―本当に、振られたということが。
―もう、どうしようもないってことが。
今までの龍崎との思い出が走馬灯のように頭を駆け巡る。
「・・、人の中に踏み込むのはウザインだって・・・。付き合いきれないって・・・。」
私は何を言ってるのか分からなくなった。
ただ、頭をめぐる、終わりの無い思い出に引き込まれるようだった。
『俺、重症かもな。・・・・・・・・お前のことが好きすぎてるかもしんねぇ・・・。』
――好きすぎてるのは、私のほうだったよ。
何でかなぁ?
何でコンナになったんだろ?
ねぇ、龍崎・・・、聞こえてる?