表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/121

ninety nine story

「ああ。」


峯元が影の方から俺のほうに向かって歩いてきた。


「なに?まだ文句あんの?」


俺がそういうと、峯元はズボンの端をぎゅっと握って俺を睨み返した。


「・・・俺は・・・、神田が好きだ。」


そう、力強く言ってくる峯元に少し驚いた。

でも・・・、俺だって・・・。



「だから・・・・・?」







「きっと・・、

      絶対俺のほうが好きなんだ・・・。だから・・・、別れろ。」



峯元はそういって、俺を睨んでくる。

その姿に、無性に腹が立った。



「誰が、俺より神田がすきだって?そんなの、何でお前が分かるんだよ。」


俺のほうが・・・・。


コブシに力を入れて、何とか理性を保つ。


「俺は、中学校の時から神田が好きだった!!だから、すっげ、勉強して、同じ高校に入ったんだよ!!」


俺の胸元を掴む。

俺はそれを軽くはずして峯元を押し、距離をとった。


なんだよ。それ・・・、


「時間かよ。んなん、そいつとであった時が違うんだからカンケーねーだろ!!」


峯元が詰まる。


「それに、なんだよ。そんなに好きだったんなら、さっさと告白しとけばよかったんじゃねぇの!?恥ずかしいからって、告白せずにいたお前が、人のことグチグチ言えんのかよ!!」


殴りかかりそうになった手を止めて、俺は怒鳴った。


図星なのだろう。

峯元の顔は赤くなっていった。


「・・・・・・、うるさい・・・。お前だって・・・






   お袋と親父の喧嘩で拗ねてグレテタガキのくせに!!」



―――――はっ?



「お前のお袋、それで精神病になって入院してんだろ!で、親父は不倫中!親がそんなんだから、お前も将来そうなるんじゃねぇの!?」


俺の中で何かが音をたてて切れた。


「不倫して・・・、精神病にかかって・・・ッ!!」


気がついたら、峯元は地面に倒れていた。

頬が、赤くなっていた。



イッテッと、もがく峯元の上に俺が乗りかかる。


自分で自分の制御が効かなくなった。


殴ろうと腕を上げた。



「リュウザキィィィ!!」



俺の手がぴたっと止まる。



・・・・・・・、何してんだ・・・、俺は。


自分が自分に戻った気がした。




「ヒィッ!!」


峯元が俺のしたから逃げて、壁にぶつかる。



「ごめん。」


声の主、神田は俺の隣へ来て手を握り、そう一言謝った。



そして峯元に近寄った。


「かっ・・・、神田・・・。あいつ・・・、やばいぞ・・・。」


峯元は神田の手を掴んで必死に訴えた。


・・・、でも・・・、本当に俺ヤバイな・・・。

神田も、愛想尽かしたかもしんねぇ・・・。



パシンッ


周りに乾いた音が響く。



「ありえないよ。」


神田が峯元に向かって呟く。

助けられると思ってたのだろう。峯元は目を丸くして神田を見ていた。


「意味分かんない。親とかで好きな人とか制限されなきゃなんないの?」


「龍崎がつらい思いしてたら、私は龍崎を好きになっちゃいけないの?」


「龍崎のお母さんだって、あんたが言うような弱い人じゃない。自分がどんな状況になったって、息子を心配する優しい人なんだよ!お父さんだって・・・、きっと・・・。だから、あんたがけなしていい人じゃない!!」



峯元が涙をこぼす。

それが、悲しみからなのか、神田の言葉が響いたからなのかは分からない。



「・・・・・、でも、峯元が私を好きでいてくれてたのは嬉しい。・・・・ありがとう。でも、私は龍崎が好きなんだ。ごめん。」



そういって神田は峯元に背を向け、俺のほうに歩いてくる。


神田は泣いていた。

峯元は神田の背中を少し見つめ、涙をふき取ってどこかへ行った。




まだ立ち尽くす俺を、神田が抱きしめた。



「ごめんね。ごめんね。」


俺の胸に顔を埋めて、神田は何度もそう呟いた。

俺も、いつからなのか、涙が出ていた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ