ninety eighth story
俺は佐々木たちと、たわいもない話をしながら掃除場所へと向かっていた。
「お前って、ほんとにすごいよなぁ〜。あの長谷川にあんな事したのお前が初めてだって。」
「そうか?でも、ウザイじゃん。」
俺がそう笑いかけたら、佐々木は一瞬悲しそうな顔をした。
「どした?」
俺が問いかけると、佐々木はうつむいて口を開く。
「・・・・、ごめんな。俺たちさ・・・、龍崎のこと誤解しまくってたんだ・・。怖い奴だって。ほんとは良い奴なのに・・・。」
佐々木がそういうと、周りに居た奴も続けて謝ってくる。
その言葉は、少し悲しかったけど、自業自得なんだろうと思う。
「いや、実際怖い奴かもよ?」
雰囲気を明るくしたくて、おどけたように言ってみた。
佐々木たちの顔に笑顔が戻る。
今まではダチなんかいらないって思ってた。
でも、ほんとは欲しかったのかもしれない。
とにかく、今は楽しくやりたいって思った。
「おい・・・、ちょっといいか?」
前から声がしいた。柄の悪い男が立っていた。
え〜・・・と・・・、誰だっけ?
「・・・山田・・・。」
山田?聞き覚えないな。
まぁ、誘われてんだから行くしかないか。おしゃべりしようって雰囲気じゃないけど。
「ああ。いいよ。」
俺が笑って答えると、佐々木が俺の服を掴む。
「龍崎!行かない方がいいって。あいつを中心とするグループ?は、神田さんのこと好きだったんだって。行ったら・・・、やばいことになるぞ!」
真剣な顔で俺を引き止める佐々木。
でも、売られた喧嘩は買わなくちゃ・・・・・失礼だろ?
「だ〜いじょぶだって。俺にまつわる噂、嘘じゃない部分も多いしさ。聞いたことあるだろ?めっちゃ喧嘩強いって。」
佐々木が少し固まる。
そりゃそうだろ。今の俺、結構めがきついだろうからさ。
「で、どこについてきて欲しいんだ?」
心配そうに見る佐々木をよそに、俺は山田に笑いかける。
山田もにやっと笑った。
「こいよ。」
山田は歩き出した。
俺は佐々木を俺の服から離した。
「絶対、見にくんなよ。・・・・・まさかとは思うけど、神田に知らせんなよ?」
また、止めようとする佐々木の手をよけて、俺は山田を追いかけた。
「龍崎・・・。」
着いた場所は、校舎裏だった。
・・・・べただな。
すでに何人かの男がいて、そのなかには峯元も居た。
「で?何のようだ?友達待たせてるから・・・早めに。」
山田たちは笑い出す。
「友達だぁ?今まで、てか昨日まで怖がられてた奴が何言ってんだ?」
耳ピアス男が喋りだす。声が必要以上にでかいんだよ。
「・・・、もったえぶらなくていいからさ・・、早く話せよ。用件を。」
おもいっきし睨んだ。男達は、それだけで少しひるんだ。
「・・・沙織は、良い女だろ?」
すっと、山田が前に出てくる。
「お前には、奈緒ちゃんより、沙織のほうが似合ってるぞ。」
やけに奈緒ちゃんという言葉が耳についた。
「・・・だから?別れろって?」
「物分りいいじゃねーか。お前のような不良男に奈緒ちゃんはにあわねぇんだよ!」
そこまで言って、山田は胸倉を掴んでくる。
殴り飛ばそうか・・。そう思ったけど、そうすればやつらの思う壺だ。
長谷川が出てきて、下手すりゃぁ退学になるかもしれない。
学校はどうでもいいけど、神田や佐々木たちと離れるのはなんだか嫌だ。
俺は理性を保つことにした。
「だから?俺より、お前らの方が似合わないと思うけど。もっと美形になりやがれ。この」
ガツッ!
――いって
いきなり山田が殴ってくる。
喋ってる途中だったからか、口を切ってしまった。
「ちょっと顔がいいからって・・・ちょーしこいてんじゃねぇぞ!こら!!」
そう言いながら、山田は何度も殴ってくる。
ちょっと有利だからって・・・、ふざけんじゃねぇ!
ガッと、まだ殴ろうとする山田の手を掴む。
「ナッ!?」
山田は驚いたように見てきた。
「お前・・・、聞いたことあるんだろ?俺の噂。それ全部本当だ。」
どんな噂が流れてるのか、詳しくは知らないけど。
山田が青い顔をする。
後ろの男達が、ざわざわと騒ぎ出す。
「本当って・・・、ヤクザを返り討ちにしたとか?」
「肩がぶつかった相手を、病院送りにしたとか・・・。」
「喧嘩したら最後、殺されるとか・・・。」
「毎日、金属バット振り回して走り回ってるとか・・・。」
「マフィラ相手にかつ上げしてるとか?」
「どッかの組織と手を組んでるとか・・・?」
後ろで騒いでいた男達は、あっという間に逃げて行った。
・・・、ドンだけ流れてんだよ。噂。
変なのとかあるし・・・。
「うっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
誰も居なくなったことにパニックになったのか、山田は俺に腕をつかまれたまま気絶した。
・・・なんだよ。よわっちぃ。
「てか、ほんとな訳ねぇじゃん。」
俺は、山田を地面に落としてプッと笑った。
「で?・・・・、まだ、残ってたのか。峯元」
物陰から峯元が出てきた。