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君を想う夜  作者: 水原 凛
It is broken
20/24

7


 定時。

 藤原は、仕事を早めに切り上げて穂乃香の様子を伺う。

 (もう、終わりそうだな…。)

 今日は一世一代の決心の日。

 ずっと、それこそ入社当時からずっと想っていた穂乃香へ思いを告げる。そう決心してもう何ヶ月経っただろう。

 何度となくあった同期会。

 藤原は何度となく思いを告げようとしたのだ。というより、実際さりげなく何度も告げたのだ。だが、本人は気づいていないようで、軽く流され続けたのだ。しかもその当時は、穂乃香には彼氏がおり、それも大きなネックになっていた。

 だが。

 最近、穂乃香が彼氏と別れたとの情報が、社内に密かに流れた。訝しく思った藤原が真紀に確認したところ、それを認めたのだ。

 (―――しばらくは…。)

 そう思って、ここ数ヶ月見守ってきた。

 だが、もう傷も癒えたころだろう。そう思って今日、呼び出すことにした。

 ただ、少し気になっていることがある。

 (―――金曜日・・・。)

 穂乃香が予定があったということだ。

 今から考えても、金曜日に毎週のように定時に帰っているような気がする。しかも、藤原がみていると何やら課長と話していることが多いような気がするのだ。

 特に特別な空気が流れているようには見えなのだが、ここ数ヶ月、課長が穂乃香に声をかける回数が異常に多い。それがすごく気になってしまう。

 

 何か理由があるのか?


 そんな勘ぐりさえしてしまう。

 勘ぐりしてしまうほど、気になって仕方がない。

 (こんな事ならいっそ、俺の気持ちを思い切って!!)

 そう決意して二週間。

 ようやくこの日が来た。―――何度言おうとしたことか…。

 (言おうと思うと、何故か…。)

 邪魔が入るのだ。

 それが仕事だったり、仕事だったり、仕事だったり…。

 わざとか?!と思うほど、課長から仕事が回ってきて、辟易させられるのも度々だった。だが、今回に限っては特に課長からの仕事は回ってこず、定時に終わることが出来た。

 (良かった…。今日は何とか大丈夫そうだ。)

 本当にホッとする。最近特にここ二~三ヶ月は穂乃香とゆっくり喋れなかっただけ、その思いは強く残る。


 「橘、そろそろ行けるか?」

 こそこそと穂乃香に話しかけると、穂乃香のうなづく様子がある。

 大っぴらに二人きりで出るのは少し憚られるので、藤原は玄関で待っていることを告げ、先に行く。しばらくして席を立つ穂乃香に鋭い視線が投げかけられた。

 当然、暁のものだ。

 だが、穂乃香のほうはそんなことに気づくことなく、部屋を出て行く。

 




******

 




 「で、何?話って??」

 穂乃香が居酒屋に入ってメニューを頼むなり、ストレートに問いかける。

 (さすが、天然…。)

 そんな事を思ってしまう藤原だった。真剣に今回こそと、思っていたはずなのに、なかなか言える様な雰囲気にはならない。

 「あ、いや…。」

 「何?相談か何か?―――も、もしかして、恋愛相談、だったりする?」

 ―――ドキッ。

 (な、何で知ってるんだ?)

 気づかれていないと思ったのに、実は天然っていうのは見かけだけなのか?

 

 思わず、そんな事を考えてしまう藤原に、穂乃香は驚いた表情を返す。

 「―――え?!もしかして、そうなの。…で、誰なの?会社の人??」

 「……。」

 「ね、誰?私の知ってる人?!―――あ、もしかして、真紀ちゃん、とか?」

 「………。」

 「う~ん…。真紀ちゃんは、難しいかなぁ。彼氏がいるから…。」

 「―――っと、待て、橘!!」

 藤原の話も聞かず、どんどん勝手に進めていく穂乃香に、藤原は慌てて待ったをかける。

 「え?違うの??そうなんだと思ったんだけどなぁ…。」

 「いや、恋愛相談っていうか、さ…。」

 (本人に、相談するわけにもいかないんだが…。)

 そう心の中で答える藤原。穂乃香のほうは「??」って感じだ。


 「た、例えばさ、」

 「うん?」

 ―――警戒心ゼロ。全く分かっていないようだ。

 「例えば、橘って彼氏は?」

 「―――え、い、居るといえば(居るんだけど…。多分)」

 (やっぱりか。)

 穂乃香の答えを聞いて藤原は内心がっくりする。

 (そうだよな…。橘のやつ、最近一段ときれいだもんな…。)

 自問自答する藤原。

 だが、ここまで来たら、彼としても引いては居られないのだ。

 「た、例えば、仮に俺が橘のこと…。」

 「―――う、うん?」

 「橘のこと、好きだったとするだろ?」

 「え……。」

 「だから、例えばの話だ。そうだったとして、俺みたいなただの同僚ってやつに告白されたら、どうする?」



 藤原は、やや声を震わせながらも、穂乃香の反応を伺うように瞳を、覗き込んだ。


                         







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