8話「なんとか目撃者をさがしたい」
「これまでの被害者は5人、みんな未成年の子供で、一か月ほど家に帰っていないそうです」
「で、いなくなった子供たちに共通点はない...めんどくさいわね」
ブリーフィングが終わり、ロンたちはさっそく聞き込みに来ていた。愚痴を言いつつも、エリスは仕事をする気はあるらしく、先ほどから書類を熱心に読み込んでいる。対照的に、啖呵を切っていたヒナはまた黙り込んでしまっていた。
「っていうか。さっきあんなこと言ったんだから、ヒナちゃんも聞き込み頑張ってよね?」
「...知りません」
「は?」
エリスは立ち止り、ヒナを睨みつける。ロンはエリスを落ち着かせようとしたが、遅かった。
「知らないってどういうこと?ヒナちゃん、原因を突き止めるって言ってたじゃん」
「知りません...私そんなこと言ってないし、ブリーフィングにも出てないです...」
ヒナは俯きながら小さな声で言う。あの大きな声を出した時とはまるで別人だ。
「あなた何言って...」
「まあまあ、落ち着いてください」
ロンは二人の間に割って入り、何とかエリスをいさめる。ヒナ・グイース、よくわからない人物だとは思っていたが、まさかここまでとは...
「あ、あの騎士団の人達....ですよね?」
気づくと、三人の隣には一人の少年が立っていた。茶色の髪に、同じく薄茶色の服を着ており、いかにも善良な市民といった感じだ。
「えっと...どうかしたのかな?」
「その...僕、お兄さんたちに話したいことがあるの。あのね、僕の友達が消えちゃったの」
少年は泣くのを我慢しているのだろう。みるみるうちに目の周りが赤くなっていく。
「友達が連れていかれるところを見たの?」
「うん、あっちの路地裏に...」
三人は顔を見合わす。まさかこんなに早く目撃者が見つかるなんて。
「大丈夫よ。その友達はお姉ちゃんたちが絶対に見つけるから。それで...その場所まで案内してくれるかしら」
エリスは、先ほどまで切れていたのが嘘のように優しい声で少年に頼む。ヒナはその声色の変わりように少しひいていた。
「うん!こっちだよ!」
少年はパッと顔が笑顔になり、三人を先導し始めた。
エリスは、かなり人に当たる性格だと思っていたが、子供に対してはそんなことないのだろうか。ロンは隣を歩くエリスを見ながら、そんなことを考えるのだった。
(このままあのガキについていくつもりか?そんなに簡単に見つかるとは思えないが...)
ザインは歩いていくロン達について行く。もちろんすでに”変装”をした状態でだ。
(それにロンという男。魔法を使うこともなければ、自我を出すこともない。つまらない奴だな。あんな奴が”救世主”になりうるのか?)
ザインはまだロンの力を信じていない。いくら、ギルバーツやグリルが”見た”といっても、それがザインもロンの力を信じる理由にはならないのだ。
(まあ、このまま観察し続ければ分かることか)
「この先です」
「暗いですね...」
ロンたちは少年に連れられ、路地裏に来ていた。街のメインストリートからは離れており、幽霊でも出そうな雰囲気である。
「この先で君の友達が消えたんだね?」
ロンからの問いかけに少年はこくりとうなずく。
「じゃあお兄さんたちが見てくるから、君はここで待って...」
「ロン、ステイ」
エリスは犬に言うようにロンを止める。そして、懐からナイフを取り出すと、少年に向けた。
「エリスさん何を...」
「あなた何者?あの魔方陣、あなたが仕掛けたものでしょ」
魔方陣?ロンが暗闇に目を凝らすと、確かに文様のようなものが地面に書かれていた。
エリスからの指摘を受け、少年は先ほどと打って変わり、にやにやとし始める。
「やっぱり大人を騙すのはうまくいかないか...」
「二人とも戦闘態勢!」
エリスの掛け声で、ロンは少年に手を向け、ヒナは人形で自分の顔を隠した。
「おっと。俺を攻撃すると、ガキたちの場所がわかんなくなるぜ?」
少年...いや少年の顔をした男がロンたちを脅す。
「....目的は?」
「まあまあ、まずは落ち着けよ...やれ」
突然、上から煙が降ってくる。
「これ...は...」
意識が遠のいていく。煙を吸い込み、エリスたちは気を失ってしまった。




